婚活者なら誰もが、結婚相手について譲れない条件や理想があると思います。それらを掲げることは自由なのですが、その掲げている条件や理想に自分が見合っているのかを冷静に判断できるかどうかも大切です。婚活市場の中で、自分がどんな立ち位置にいるのか、そこを理解していないと婚活は成功しませんし、永遠に結婚できません。
仲人が、お預かりしている会員さんのプロフィルを持ち寄って、お見合いできる相手を見つける「プロフィル交換会」という会合があります。通称“手組み”と呼ばれ、サイト上でのお相手選びが当たり前になっている今の時代に、仲人だからできるアナログなお見合いの組み方です。
手組みで仲人らが持ち寄るのは、サイトに登録していても、なかなかお見合いの組めない人たちです。ことに男性の場合、50代や60代になっても「子どもが欲しい」と思っている人が、手組みにはよく登場します。
「こちら、51歳の会員なんですが、お子さまが欲しくて」
「55歳なのですが、子どもを望んでいます」
「59歳なのですが、お子さんのいる女性でも大丈夫です。ただし、自分の子どもも欲しいと思っているので、産んでくださる女性が希望です」
そうした男性たちのプロフィルを仲人が紹介すると、会場は「あー、またか」という空気になります。そして、ある仲人の番になり、プロフィルを提示しながらの言葉に、会場内ではため息と、どよめきが起こりました。
「68歳の男性ですが、ご自身のお子さんを希望しています」
68歳ですから、仮にすぐ結婚できたとしても、妻が妊娠してお子さんを授かるときは70歳目前、もしくは70代になっていることになります。子どもが10歳のときには80代、成人するときには90歳目前です。
「子どもが成人するまでに、どれだけお金がかかるのか分かっているのかしら」
「資産家でお金があったとしても、生まれてきた子どもは小学生、中学生になったときに、自分の父親の年齢をどう感じるのかしらね」
仲人たちのそんな声もありました。
自分の子どもでもおかしくない年齢の女性との結婚を望み、孫でもおかしくない年齢のわが子を授かりたいと願う――。人生に理想を掲げ、道筋を敷いていくのはご自身ですが、現実離れした理想を掲げても、それを実現するのは難しい。お見合いは、「選ぶこと」と「選ばれること」がイコールにならないと成立しないのです。自分の父親のような年齢の男性からお申し込みが来ても、それを受ける女性は、まずいないでしょう。
恋愛結婚ならいざ知らず、見合い結婚というのは、条件ありきの出会いです。年齢、年収、見た目に、女性たちの目は厳しくなるのが現状です。
また、子どもを授かることは、子どもの命を預かり、責任を持って養育をするということです。「体力には自信がある」「お金は十分にある」というご自身の気持ちだけでは子育てはできないと、冷静に考えてみることも大切です。
先日、横山みつおさん(47歳、仮名)が入会面談にやってきました。面談に来られた人には、どんな相手を希望するかを「面談シート」に書いていただいています。見ると、希望相手の年齢のところで「20代」に丸がついていました。
そこで、私は言いました。
「現在47歳ですよね。20代というと、あなたに女のお子さんがいたとしたら、娘さんと同じ世代になりますが」
すると彼は、平然と言いました。
「僕は、この間まで25歳の女性と付き合っていたんです。ただ、あまりにも金遣いが荒い子だったので、僕から別れを切り出しました」
そのお付き合いは半年程度だったといいます。
結婚には「婚姻届」が存在し、“夫である”“妻である”という立場が法的に認められています。しかし、付き合っている恋人同士には、「恋人届」は存在しません。男性側は女性を恋人だと思っていたかもしれませんが、女性は「何でも買ってくれるお財布代わりの男性」と思っていたかもしれません。それは俗語で、“パパ活”ともいいます。
なぜまたご本人は、47歳なのに、20代の女性と結婚したいのか。同世代の女性ではダメなのかを聞いたところ、みつおさんはこんなことを言いました。
「僕は以前、若者をターゲットにしたゲームソフトと音楽を制作する会社にいたので、感覚が若いんです。10代や20代の人たちとは話が合うのだけれど、同世代の女性とは、話がかみ合わないんですよ」
ご自身がそう感じているなら、まずはお見合いをしてもらうしかないと思いました。サイトに登録し、20代に申し込みをかけたのですが、全て「辞退」の返事で、お見合いは一つも成立しませんでした。
現実を知ったのか、今度は30代にお申し込みをかけるようになりました。30代前半は全滅だったのですが、37歳の女性とはお見合いが成立しました。
そしてお見合いをしたのですが、女性から「お断り」がきました。そのお断りの理由がこうでした。
「何かやたらと、“自分は若い”ということをアピールされていて、そこが受け入れられませんでした。話の内容にもジェネレーションギャップを感じました」
10歳年下の女性に、「自分の感覚がいかに若いか」を主張した時点で、それが違和感となって伝わったのでしょう。
自分が感じている感覚と、相手が受け取る感覚は違います。「年よりも若く見える」「感覚が若い」というのは、自分ではなく相手が判断することなのです。
「また、この74歳の男性からお申し込みが入っています。断っても、断っても毎月お申し込みが来る。この男性の相談室に、『申し込まれても受けることはありません』とお伝えしていただけないでしょうか?」
有田よしみさん(41歳、仮名)から連絡が来ました。そこで私は、よしみさんに言われたように、お相手の相談室に「既に3度お申し込みを頂き、お断りを入れています。申し込まれても受けることはないと申しております」と連絡を入れました。
ところが、翌月にまたよしみさんに、74歳の男性からお申し込みが来ました。
「申し込みをするな」ということは、こちらからは言えません。ですが、33歳も年の離れた女性とお見合いをするのは、現実的に難しいもの。以前、70代の男性が、20代の女性にお申し込みをしてきたことがあります。お申し込みは自由なのですが、自分が婚活市場でどんな立ち位置にいるのか、冷静に判断し、把握して、そこからお見合いできるお相手の年齢層を絞り込んだ方がよいですよね。
サイトでのお見合いは、ご自身が自由にお申し込みできる仕組みです。ダメ元で申し込んでいるのかもしれませんが、そんなことを続けていても、現実にお見合いし、結婚できる可能性を狭めているだけです。
子どものような年齢、孫のような年齢の女性と結婚したいと思っている男性は、ご自身の婚活市場での立ち位置を、今一度冷静に見直してみてください。