近年、中国人が都心のマンションを投資目的で買い漁る事例があとを絶たないなか、「最高倍率266倍」を記録したアノ大人気マンションでもやっぱり彼らが跋扈していた。当事者を直撃すると“マンション爆買い”の事実を認め、さらに「晴海フラッグが中国人のターゲットになった」理由をあけすけに語った。
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【写真】「中国の街並みっぽい」との声も ド迫力!「晴海フラッグ」圧巻の近影撮 東京五輪・パラリンピックの選手村跡地(東京・中央区)に建つマンション群「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」がふたたび注目を集めている。すでに分譲マンション17棟(2690戸)の販売は終了し、いよいよ6月下旬から「再開発のシンボル」となる2棟のタワーマンション(総戸数1455戸)の販売が始まる予定だ。

「最後の棟」がいよいよ販売開始(公式サイトより)「『SKY DUO(スカイデュオ)』と名付けられたツインタワーは50階建てで、晴海地区の再開発において最後に建つマンション棟になります。販売価格は最上階の3LDKで3億4900万円、最低価格の1LDKで4800万円台になっています」(都内の不動産業者) すでに見学予約が殺到しているというが、このスカイデュオから「申し込みは1人の名義で2戸まで」に制限される新たなルールが設けられた。「今年4月、不動産サイト『SUUMO』に晴海フラッグの部屋が複数、売りに出されていることが発覚。すぐにサイトから消えたものの、いずれも未入居のため転売物件であるのは疑いようがなかった。販売当時の価格5570万円の部屋が9100万円、同6020万円の部屋が1億800万円などといった人気に乗じた大幅な上乗せ価格も問題視され、東京都が販売事業者に対策を求めた経緯があります」(同) その結果、転売対策として「1人2戸まで」の新ルール適用が決まったが、実は転売問題以上に深刻な“疑惑”が、晴海フラッグには以前から囁かれていた。100名超から「名義借り」 晴海フラッグの販売開始は五輪開催前の2019年。販売は時期を分けて行われ、回を追うごとに人気も上昇。最終販売期では平均倍率71.1倍、最も人気が高い部屋に至っては266倍を記録した。 抽選倍率がここまで高騰した理由の一つに、転売目的も含め“大量買い付け”を行った外国人投資家の存在が指摘されている。実際、ベールに包まれた購入者に関する取材を進めると、「複数の部屋を購入した外国人投資家は少なくないが、最高で“一人で20部屋”を買った中国人がいる」と話す関係者が現れた。 さらに取材を続けると、その中国人A氏は在日中国人コミュニティの間でも「かなりの資産家」として知られる存在で、廃材処理などを手掛ける会社を日本と中国で経営していることがわかった。6月某日、そのA氏を直撃すると「私は買っていないが……」と前置きした上で、実態について詳細に語りだした。「私じゃないが、私の友人(中国人)で晴海フラッグを20部屋、買った人間がいるのは事実です。自分の名前でも複数申し込みをしたそうだけど、できるだけ多く買いたかったから、友人や(経営する会社の)社員などの名義を100名分以上借りて、20部屋当選した。でも全部足しても(20部屋の総支払代金は)10数億円程度なので、何の問題もない。彼は資産300億円を超える金持ちですから、支払いはすでに彼一人で終えています」中国人に人気の理由 なぜ、そんなに買ったのかと問うと、こう答えた。「投資対象として“旨味”があるからですよ。晴海フラッグの資産価値は今後もまだ上がるので、ドルや株を買うよりも(投資対象として)今のところ安全で手堅い。何といっても都心の他の物件と比べ、坪単価で100万円程度安くなるケースもあるなど“割安感”が最大の魅力です」(A氏) 晴海フラッグが人気となったのは周辺相場と比べて2~3割程度安い価格帯にあるが、その理由として、都有地だった土地を東京都が民間事業者に安く卸したことが挙げられる。晴海地区の再開発事業が公的な性格を帯びることになった事情でもあるが、中国人には単なる「底値買い」のチャンスと映ったようだ。「もちろん20部屋すべてを自分で使うつもりはなく、抽選に漏れるなどした中国人の仲間に又貸しするそうです。他にも、お世話になった中国在住の知人や仕事関係者にプレゼントする部屋も“幾つかある”と言っていた。知人らが日本に遊びに来た時、ホテル代わりに使ってもらうのだとか。最上階の部屋だけはセカンドハウスとして自分で利用すると話していた。実は彼以外にも晴海フラッグを買った中国人は多くいて、大抵は上層階を押さえている。割安さに加え、“団地っぽい”ところが中国人には人気で、“集団生活”に郷愁のようなものを抱く同胞は少なくありません」(A氏) 晴海フラッグの完成時の居住者数は約1万2000人。敷地内にはスーパーや大型商業施設のほか、保育施設や小中学校、介護施設などもつくられる予定だ。晴海フラッグから出ることなく「生活が完結」するコンパクトシティ構想が、意外にも中国人にウケているという。「人気はいまがピーク」「でも晴海フラッグの人気も満室になるまでだと思っています。完成して人が住み始めた途端、資産価値は下がっていくと予想する中国人は多い。だから人気の上がっている今の時期に転売するのは、実は賢い選択。理由? だってアソコ、そもそも住むには不便でしょ」(A氏) かねてより晴海フラッグのウィークポイントは「交通の不便さ」だと指摘されてきた。最寄り駅は都営地下鉄大江戸線の勝どき駅だが、徒歩で20分弱かかるため「陸の孤島」と揶揄されることも。すでに通勤通学時の駅周辺の混雑が予想され、対策として完成時には晴海フラッグと新橋や虎ノ門エリアを結ぶBRT(バス高速輸送システム)が運行予定だ。しかし交通アクセスがどこまで改善するかは「未知数」との声も多い。 言うまでもなく、中国人ら外国人投資家の“爆買い”によって、結果的に割を食うのは日本人である。ようやく手の届きそうな念願のマイホームを都心で見つけたと喜んだのも束の間、「抽選で何度も落ち続けている人は珍しくない」(前出・不動産業者)のが現実だ。 晴海フラッグを販売する大手デベロッパー8社のなかでも中心的存在である三井不動産に「一人で20部屋購入した中国人」の存在について訊ねると、「個別のお客様に関することともなるため、回答は差し控えさせていただきます」 と回答。また一人で複数の部屋を購入するのは「ルール違反」ではないかと問うと、「私どもとしては名義人の方にお引渡しするということであって、それ以上の回答は控えさせていただきます」 と答えるのみだった。ただし、他のデベロッパーの1社は「一人2戸までの制限が設けられるまでは事実上、資金の裏付けがあれば申し込みに制限はなかった」と話した。 東京五輪という国家プロジェクトの跡地に建つマンション上層階を中国人が占拠する――。近未来的ではあるが、皮肉というほかない。デイリー新潮編集部
東京五輪・パラリンピックの選手村跡地(東京・中央区)に建つマンション群「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」がふたたび注目を集めている。すでに分譲マンション17棟(2690戸)の販売は終了し、いよいよ6月下旬から「再開発のシンボル」となる2棟のタワーマンション(総戸数1455戸)の販売が始まる予定だ。
「『SKY DUO(スカイデュオ)』と名付けられたツインタワーは50階建てで、晴海地区の再開発において最後に建つマンション棟になります。販売価格は最上階の3LDKで3億4900万円、最低価格の1LDKで4800万円台になっています」(都内の不動産業者)
すでに見学予約が殺到しているというが、このスカイデュオから「申し込みは1人の名義で2戸まで」に制限される新たなルールが設けられた。
「今年4月、不動産サイト『SUUMO』に晴海フラッグの部屋が複数、売りに出されていることが発覚。すぐにサイトから消えたものの、いずれも未入居のため転売物件であるのは疑いようがなかった。販売当時の価格5570万円の部屋が9100万円、同6020万円の部屋が1億800万円などといった人気に乗じた大幅な上乗せ価格も問題視され、東京都が販売事業者に対策を求めた経緯があります」(同)
その結果、転売対策として「1人2戸まで」の新ルール適用が決まったが、実は転売問題以上に深刻な“疑惑”が、晴海フラッグには以前から囁かれていた。
晴海フラッグの販売開始は五輪開催前の2019年。販売は時期を分けて行われ、回を追うごとに人気も上昇。最終販売期では平均倍率71.1倍、最も人気が高い部屋に至っては266倍を記録した。
抽選倍率がここまで高騰した理由の一つに、転売目的も含め“大量買い付け”を行った外国人投資家の存在が指摘されている。実際、ベールに包まれた購入者に関する取材を進めると、「複数の部屋を購入した外国人投資家は少なくないが、最高で“一人で20部屋”を買った中国人がいる」と話す関係者が現れた。
さらに取材を続けると、その中国人A氏は在日中国人コミュニティの間でも「かなりの資産家」として知られる存在で、廃材処理などを手掛ける会社を日本と中国で経営していることがわかった。6月某日、そのA氏を直撃すると「私は買っていないが……」と前置きした上で、実態について詳細に語りだした。
「私じゃないが、私の友人(中国人)で晴海フラッグを20部屋、買った人間がいるのは事実です。自分の名前でも複数申し込みをしたそうだけど、できるだけ多く買いたかったから、友人や(経営する会社の)社員などの名義を100名分以上借りて、20部屋当選した。でも全部足しても(20部屋の総支払代金は)10数億円程度なので、何の問題もない。彼は資産300億円を超える金持ちですから、支払いはすでに彼一人で終えています」
なぜ、そんなに買ったのかと問うと、こう答えた。
「投資対象として“旨味”があるからですよ。晴海フラッグの資産価値は今後もまだ上がるので、ドルや株を買うよりも(投資対象として)今のところ安全で手堅い。何といっても都心の他の物件と比べ、坪単価で100万円程度安くなるケースもあるなど“割安感”が最大の魅力です」(A氏)
晴海フラッグが人気となったのは周辺相場と比べて2~3割程度安い価格帯にあるが、その理由として、都有地だった土地を東京都が民間事業者に安く卸したことが挙げられる。晴海地区の再開発事業が公的な性格を帯びることになった事情でもあるが、中国人には単なる「底値買い」のチャンスと映ったようだ。
「もちろん20部屋すべてを自分で使うつもりはなく、抽選に漏れるなどした中国人の仲間に又貸しするそうです。他にも、お世話になった中国在住の知人や仕事関係者にプレゼントする部屋も“幾つかある”と言っていた。知人らが日本に遊びに来た時、ホテル代わりに使ってもらうのだとか。最上階の部屋だけはセカンドハウスとして自分で利用すると話していた。実は彼以外にも晴海フラッグを買った中国人は多くいて、大抵は上層階を押さえている。割安さに加え、“団地っぽい”ところが中国人には人気で、“集団生活”に郷愁のようなものを抱く同胞は少なくありません」(A氏)
晴海フラッグの完成時の居住者数は約1万2000人。敷地内にはスーパーや大型商業施設のほか、保育施設や小中学校、介護施設などもつくられる予定だ。晴海フラッグから出ることなく「生活が完結」するコンパクトシティ構想が、意外にも中国人にウケているという。
「でも晴海フラッグの人気も満室になるまでだと思っています。完成して人が住み始めた途端、資産価値は下がっていくと予想する中国人は多い。だから人気の上がっている今の時期に転売するのは、実は賢い選択。理由? だってアソコ、そもそも住むには不便でしょ」(A氏)
かねてより晴海フラッグのウィークポイントは「交通の不便さ」だと指摘されてきた。最寄り駅は都営地下鉄大江戸線の勝どき駅だが、徒歩で20分弱かかるため「陸の孤島」と揶揄されることも。すでに通勤通学時の駅周辺の混雑が予想され、対策として完成時には晴海フラッグと新橋や虎ノ門エリアを結ぶBRT(バス高速輸送システム)が運行予定だ。しかし交通アクセスがどこまで改善するかは「未知数」との声も多い。
言うまでもなく、中国人ら外国人投資家の“爆買い”によって、結果的に割を食うのは日本人である。ようやく手の届きそうな念願のマイホームを都心で見つけたと喜んだのも束の間、「抽選で何度も落ち続けている人は珍しくない」(前出・不動産業者)のが現実だ。
晴海フラッグを販売する大手デベロッパー8社のなかでも中心的存在である三井不動産に「一人で20部屋購入した中国人」の存在について訊ねると、
「個別のお客様に関することともなるため、回答は差し控えさせていただきます」
と回答。また一人で複数の部屋を購入するのは「ルール違反」ではないかと問うと、
「私どもとしては名義人の方にお引渡しするということであって、それ以上の回答は控えさせていただきます」
と答えるのみだった。ただし、他のデベロッパーの1社は「一人2戸までの制限が設けられるまでは事実上、資金の裏付けがあれば申し込みに制限はなかった」と話した。
東京五輪という国家プロジェクトの跡地に建つマンション上層階を中国人が占拠する――。近未来的ではあるが、皮肉というほかない。
デイリー新潮編集部