海老名子ども3人死亡、12回も児相に行っていた母親の悩み 「本当に良い母親で、お姉ちゃんは面倒見がよかった」

わが子を手にかけた林敦子容疑者(49)は、人には言えぬ懊悩(おうのう)を抱えながら日々を過ごしていた――。
【写真を見る】近隣住民は「いい母親」「面倒見のよい長女」と語ったが… 悲劇が起きた現場
事件が発覚したのは昨年12月29日の夜。現場は、神奈川県海老名市の小田急線海老名駅から1キロほどの住宅街に立つ一軒家である。
社会部デスクによれば、
「午後11時前に帰宅した容疑者の夫が“3人の子どもが頭部から出血してぐったりしている”と119番通報し、救急隊員が駆け付けました。そのとき容疑者はロープで首をつって自殺しようとしており、夫が止めていたそうです」
意識不明の状態で見つかったのは中学3年の長女、莉子(りこ)さん(15)と中1で次女の茉子(まこ)さん(13)、小学4年の長男、怜生(れい)くん(9)で、
「いずれも搬送先の病院で死亡が確認されました。死因は、長女と長男が脳挫傷と窒息、次女は窒息。3人はなんらかの方法で首を絞められ、長女と長男は鈍器のようなもので頭を殴られたとみられます」
海老名署が頭を負傷した林容疑者の回復を待って事情を聴くと、
「29日の午後3時半ごろに長男を殴るなどして死亡させた事実を認めたので、翌30日夜、殺人容疑で逮捕しました。会社員でもある容疑者は“子育てに悩んでいた”と供述。長女と次女の殺害への関与や無理心中の可能性も調べています」
母親が未来あるわが子の命を奪うまでに、なにがあったのか。
林容疑者を含む一家5人は、2世帯住宅の2階部分で暮らしていた。
「あそこは、旦那さんの親族が土地を相続して15年ほど前に建てた家。1階には親族が暮らしています。塗装業を営む旦那さんは寡黙な感じだけど、仲の良い家族だと思っていました。捕まったお母さんも、本当に良い母親でしたから」
と、近くに住む男性は戸惑いを隠さない。
「お母さんはごみ出しのときもちゃんとあいさつしてくれるし、子どもたちと一緒に近くの公園で遊んでいる姿も見ました。お姉ちゃんも面倒見がよくてね。妹と弟を連れて、公園で縄跳びや鉄棒なんかして遊んでた。こんなむごい事件が起きる兆候はまったく感じなかったんですが……」
こうした見方とは異なる視点もあった。別の近隣住民が言う。
「怜生くんが不登校だったことは近所の一部で知られていました。そしてそれをお母さんが気に病んでいたらしいことも。1階の親族には迷惑をかけられないとの考えから、行政などに相談して乗り越えようとしていたのだと思います」
神奈川県内の児童福祉関連施設の職員が明かす。
「林容疑者は怜生くんを伴って厚木児童相談所を訪れていました。怜生くんの不登校とかんしゃくに関する相談です。2023年3月から昨年10月までに計12回、児相の相談員などと面談を行っていました」
昨年12月にも面談予定が入っていたが、
「今年1月に延期されていました。児相側の扱いは継続支援中だったものの、母子が最後に訪れた昨年10月時点で、不登校はだいぶ改善され、通学するようになったと認識していた。そのため、面談予定の延期については特段の注意を払っていませんでした」
このあいだに、林容疑者は相談先を変えていた。
「児相を最後に訪れた翌月の11月、怜生くんが通う小学校の臨床心理士に子育ての相談をしていました。その“効果”がどれほどあったのか、なぜ児相の面談予定を今年1月に延期したのか、いまは分かりません。ですが、林容疑者も児相も怜生くんへの対応を怠ったわけではないのです」
打つ手がないまま、起こるべくして起きてしまった事件ではないという。
母親の深い悩みが臨界点を超え、凶行に突き進んだ理由はいまだ判然としない。
「週刊新潮」2025年1月16日号 掲載