より深刻な感染症には「パンデミック緊急事態」発令可能に…WHO事務局長「世界はより安全に」

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【ジュネーブ=森井雄一】世界保健機関(WHO)は1日の総会で、感染症の拡大を受けた緊急事態宣言の手続きなどを定めた「国際保健規則(IHR)」を全会一致で改正した。
感染症の拡大が「緊急事態」よりも深刻化した場合に「パンデミック緊急事態」を発令することを可能とする規定を盛り込んだ。
パンデミック緊急事態はWHOが宣言する「国際的な公衆衛生上の緊急事態」よりも重大な局面を想定している。新たな規則では、感染症が「複数の国家にまたがって広がる」「重大な社会、経済的混乱を引き起こす」可能性がある状況などと定義し、国際社会により高いレベルの警戒と国際協調を促している。WHOはコロナ禍でも「パンデミック」を表明したが、明確な規定はなかった。
IHR改正が承認されたことを受け、テドロス・アダノム事務局長は「我々は、そして世界は勝利した。世界はより安全になった」と謝意を表明した。議場からは拍手があがった。
今回の改正では、医薬品へのアクセスに公平性を確保することや、規則を効果的に運用するための締約国による委員会設置なども盛り込まれた。新たな規則は各国の手続きを経て実際に適用される。
一方、感染症対策の強化を目指し、2年以上にわたって協議が続けられてきた「パンデミック条約」については総会後も議論を継続し、1年以内の交渉終結を目指すことを決めた。5月下旬に開幕した総会中も議論を続けたが、ワクチンの公平な配分や監視体制の強化などで先進国と途上国の間の溝が埋まらなかった。

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