貧困でサッカーできない子どもたち「お金がかかるスポーツになった」子どもの夢のため“借金”も…SOSは4倍に【news23】

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「ガスが止まった時、子どもがサッカー辞めると言ってきました」「10歳前後で夢を諦めてしまうのはとても辛いです」日本サッカーがレベルアップする一方、「お金がかかるスポーツになった」取り残される子どもが急増しています。助けを求めた家庭4分の3には支援が届かず“夢を諦める”子どもも出ています。
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サッカーの10代の競技人口は213万人以上(2021年総務省発表)で、いわずもがな子どもに人気のスポーツです。一方で、ひとり親世帯の貧困率は44.5%(2021年厚労省発表)。その中には、サッカーをすることすら苦しい家庭があります。
「家でも練習やってます。帰ったら毎日やってます」。こう語るのはサッカー部に所属する高校2年生の海斗さん(仮名)。シングルマザーの母親と暮らしています。
海斗さん(仮名)「みんながスパイクを買う頻度は2か月おきくらい。自分は6か月おき。ヒモも2回買い換えてますが、それもちぎれました。スパイク前側のポイントは全然無いです。芝生や土でやったら滑ってケガするし、早く換えたいなって」
Q.サッカーを続けるためにがんばったことは?
海斗さん(仮名)「バイトして自分の道具は自分で買う。土日は夕方に試合が終わった後、午後6時~午後9時50分までバイト。キツすぎて学校に行きたくない時はたまにありました」
夢は「世界で活躍するプロサッカー選手」だという海斗さん。そんな彼の母親は契約社員として働くシングルマザーで、海斗さんの夢のために努力を惜しみません。
海斗さん(仮名)の母親「チームが強くなればなるほど、お金はすごくかかります。遠征も県外に出るようになる。1回2万から3万円。年間では60万、70万とか、それ以上かもしれない。サッカーを続けるために、昼の仕事プラス飲食店、コンビニ、多い時は3つ掛け持ち」
Q.今後“サッカーを辞めてもらうかも”との不安は?
海斗さん(仮名)の母親「すごくあります。生活もままならないので、夢に向かって頑張ってるので、その夢をかき消したくない」
貧困などでサッカーが続けられない子ども達を支援する団体、「認定NPO ラブフットボールジャパン」。サッカー用具や5~10万円の奨励金を贈っています。団体には、子どもにサッカーを続けさせたいと願う親から、支援を求める声が届きます。
<団体に届いた声>
「子どもが10才前後で夢を諦めてしまうのは、とてもつらいです」「親の食費を削ることしかできません。私がおかずを食べていないと、長男は、わけてくれようとするので、同じ時間に食べるのをやめました。そこまでしても続けさせてあげたいです」「『シングルマザーで収入ないくせに、サッカー習わせるなんて、ぜいたく品だから』と言われたことに、とても傷ついています」
しかし、全ての家庭に支援を届けるのは難しい状況だと言います。
認定NPO ラブフットボールジャパン 加藤遼也 代表「この活動を始めたのは、2021年で1年目は102人。今年初めて400人を超えた。3年間で4倍に増えている。世帯の苦しさと、サッカー自体にお金がかかるようになってしまった。
活動の原資は主に寄付。今年で言うと408人の申請があって、給付できたのは100人ぐらい。残りの300人には希望する支援を届けられなかった」
加藤さんが支援する高校2年生の亮太さん(仮名)。全国レベルのサッカー強豪校から勧誘されるも、そこへの進学は諦め、今はサッカーから離れた生活をしています。
Q.亮太さん(仮名)がサッカーを辞めた理由は?
シングルマザー 亮太さんの母親「中学のサッカー部に入ったんですよ。熱心にやってきたから、サッカーへの温度差がすごくあって、顧問の先生とも部員とも揉めるようになって。本人が『クラブチームに行きたい』って。最初にかかったのは30万円弱。ジャージ上下、練習着のTシャツ、クラブチームに行く時用のポロシャツ、各2枚ずつ。チームへの寄付、入会金が7万円くらい。月謝が7000円、県外へのバス代は1回3000円プラス食費」
Q.1か月、最低でいくら?
シングルマザー 亮太さんの母親「5万円弱ですね」
Q.他には?
シングルマザー 亮太さんの母親「長い休みは必ず遠征に行きます。2泊3日で6万円くらい、年に4回。消費者金融に30万くらい、気づいたら申し込んでました、私。やっぱり応援してあげたかったです」
亮太さんは中学3年の時、全国レベルの強豪高校から誘われたといいます。しかし…
シングルマザー 亮太さんの母親「監督から『自分の所に来てプレーしてくれないか』って。すごく喜んで帰ってきて、行かせてあげたかったけど、金銭的な親の負担がクラブチームの時より、はるかに大変。諦めざるを得ない。
『そこの高校に行けないならサッカーやらない』と息子が言い出して。『やらない。もう絶対にやらないんだ』って。息子が“人間を取り違えた”ってぐらい豹変しました。家出だったり、部屋に閉じこもって顔も見ない。冷静に話せないんですよ」
亮太さん(仮名)は今、サッカー部が無い高校に通っています。
高校2年生 亮太さん(仮名)「自分がクラブチームでお金をたくさん使ってたことは、お母さんには本当に申し訳ないと思っていました。お母さんには本当はサッカーしたい気持ちを伝えてなかったので、反抗っていうか、あまり良くはない友達と絡み始めて、本当にこんな事してていいのかなとか。サッカーをしない自分は、本当に情けないと感じてました。
夢はまだサッカーをしたいことで変わってないので、(サッカーが強い)大学を目指すため勉強を頑張ろうと思ってます。努力も大切と思いましたけど、サッカーができている環境に感謝する事も大事だと思います」
加藤さんは、亮太さん(仮名)がサッカーを再開できる方法を模索しています。
加藤代表「支援する組織・担い手が増えていない。議論して考えて、一緒に支えてくれませんかと思う」
MIFAフットボールパーク豊洲では、毎週土・日曜の朝に、サッカーコートを無料開放しています。地域住民は誰でも利用できます。
MIFAフットボールパーク豊洲 中村惇良さん「サッカーをしたい。色んな方々に寄り添って意見を聞くことで、こういう取り組みを含めたアイデアが生まれる。子どもたちの目線に立って考えるのが大事だと思う」
ボールなども無料で貸し出し、地域の交流にも繋がっています。
参加者「子どもと一緒にボールを蹴るきっかけにもなったし、良い影響はたくさんあった」
参加者「地域の方々とのコミュニケーションが増えた。優しい社会になっていくと思います」
上村彩子キャスター:サッカーは部活の中でもあまりお金がかからないイメージがありました。ですが、価格の高騰、合宿代、遠征費など、いろいろ費用がかさむわけですね。
垣田友也 ディレクター:サッカー部としての練習はもちろん、プラスお金を払って、サッカースクールに通ったり、子どもがプロテインを飲むなど、スタンダードそのものが上がっているという話を聞きました。
上村キャスター:私も小学生のときから、部活でスポーツをやっていて、そこでの成功体験が今の成長にも繋がっていると思います。部活を経済的な理由で諦めざるを得ないというのは、とても心が痛みます。
喜入友浩キャスター:他のスポーツや芸術の分野でも、同じようなことが言えるのかもしれません。お金がある子、才能がある子だけではなく、純粋にそのスポーツが好きな子が存分に打ち込めるようになってほしいと思います。
垣田友也 ディレクター:以前、貧困家庭出身の方に取材した際に、「習い事ができなかったから、自分は何が好き・嫌いなのかがずっとわからなかった」とおっしゃっていました。そういうことに大人の方から気づいて、他の子どもたちが平等に、チャンス・チャレンジができるような環境を、大人たちの方から作っていかないといけないのではないかと思います。
喜入キャスター:こんな方針があります。2023年12月に閣議決定した、子ども施策の基本的な方針を定める「こども大綱」では、「こどもの貧困は家庭の自己責任ではなく、社会全体で受け止めて取り組むべき課題」としています。
垣田友也 ディレクター:子どものときは、見える形や見えない形で、大人や周りの人に助けられて育ってきたと思います。先ほどのサッカーの話でも、例えば施設の無料開放、寄付・補助金など、大人がそれぞれの立場でできることを考えてやっていければいいのかなと思います。
撮影:小林豪太VE:河田正文編集:小川友広AD:柘植大河ディレクター:垣田友也
NEWS DIGアプリでは『貧困家庭におけるスポーツ活動支援』などについて「みんなの声」を募集しました。
Q.貧困家庭におけるスポーツ活動支援で必要なのは?「国や自治体の支援」…63.2%「寄付・クラウドファンディング」…16.0%「スポーツ団体の配慮」…14.6%「その他・わからない」…6.2%
※5月18日午前0時33分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません※動画内で紹介したアンケートは19日午前8時で終了しました。

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