神戸児童殺傷記録廃棄 家裁「当時の職員個人の見解」関係者は疑問の声

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児童2人を殺害したとして当時中学3年の少年が殺人容疑で逮捕された神戸連続児童殺傷事件を巡り、神戸家裁が20日、全ての事件記録を廃棄し、その経緯について調査しない方針を明らかにした。「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」の犯行声明に少年法改正――。注目を集めた事件で、非公開だった加害男性(40)の審判の内容などを検証することは将来的に困難となった。関係者からは家裁の対応に疑問の声が噴出した。
神戸連続児童殺傷 少年の全事件記録、家裁が廃棄 20日午前、神戸家裁で報道陣の取材に応じた担当者は「記録が廃棄されたことは事実」と説明しながら、いつ、誰が、どういう経緯で記録を廃棄したかについては「分からない」と繰り返した。経緯の調査や当時の職員からの聞き取りも「する予定はない」とし、その理由について「(廃棄当時の)職員個人の見解にとどまる」と述べた。 事件が起きたのは四半世紀前の1997年のことだ。だが、加害男性は2005年に医療少年院を本退院して社会復帰すると15年になって、遺族の了解を得ることなく「元少年A」として事件に至った詳細な状況や更生の経緯を手記の形で出版。遺族側から強い反発を受けるなど、年月を経ても注目を浴び続けてきた。 事件で小学6年だった土師(はせ)淳さん(当時11歳)を殺害された父守さん(66)は、加害男性の審判の傍聴も事件記録の閲覧もしたことがない。当時は被害者遺族であっても、少年審判などは非公開だったためだ。守さんは他の犯罪被害者遺族らと連携して、被害者側が事件を知る権利の拡充を求めた。そうした声に押される形で法改正が進み、今では被害者遺族らは審判を傍聴したり、事件記録を閲覧したりできるようになった。 守さんは「社会的注目を集めた事件で、後に検証する必要が出てくる可能性もあり、記録は保存しておくべきだった。今後、発生しうる特殊な事件の記録保存を考えても、なぜ廃棄されたのか経緯はしっかり調査すべきだ」と述べた。その上で「今は資料が膨大でもデジタル化して残しておくことができる。今後の少年犯罪の研究にも生かせたのではないか」と指摘した。 小学4年だった山下彩花さん(当時10歳)を殺害された父賢治さん(73)も廃棄について「大変な問題だと思う。当時、私たち遺族は(審判を)傍聴できず、記録さえも見ることができなかった。なのにそんなに簡単に廃棄されていいものか理解に苦しむ」とコメントした。 ジャーナリストの江川紹子さんは「少年事件の厳罰化のきっかけとなり、日本の刑事司法の歴史を変えた重大事件にもかかわらず、記録が廃棄されたのは信じられない」と驚いた。「裁判所には、刑事記録が公文書で国民共有の財産だという認識が欠けていると言わざるを得ない。裁判所の内規や通達に違反しているのは明らかで、記録を残すべきかを検討した形跡がないのも疑問だ。神戸家裁は当時の担当者に聞き取り調査をするなどし、廃棄の経緯や一連の対応の問題点を明らかにすべきだ」と語った。【村田愛、山本康介】
20日午前、神戸家裁で報道陣の取材に応じた担当者は「記録が廃棄されたことは事実」と説明しながら、いつ、誰が、どういう経緯で記録を廃棄したかについては「分からない」と繰り返した。経緯の調査や当時の職員からの聞き取りも「する予定はない」とし、その理由について「(廃棄当時の)職員個人の見解にとどまる」と述べた。
事件が起きたのは四半世紀前の1997年のことだ。だが、加害男性は2005年に医療少年院を本退院して社会復帰すると15年になって、遺族の了解を得ることなく「元少年A」として事件に至った詳細な状況や更生の経緯を手記の形で出版。遺族側から強い反発を受けるなど、年月を経ても注目を浴び続けてきた。
事件で小学6年だった土師(はせ)淳さん(当時11歳)を殺害された父守さん(66)は、加害男性の審判の傍聴も事件記録の閲覧もしたことがない。当時は被害者遺族であっても、少年審判などは非公開だったためだ。守さんは他の犯罪被害者遺族らと連携して、被害者側が事件を知る権利の拡充を求めた。そうした声に押される形で法改正が進み、今では被害者遺族らは審判を傍聴したり、事件記録を閲覧したりできるようになった。
守さんは「社会的注目を集めた事件で、後に検証する必要が出てくる可能性もあり、記録は保存しておくべきだった。今後、発生しうる特殊な事件の記録保存を考えても、なぜ廃棄されたのか経緯はしっかり調査すべきだ」と述べた。その上で「今は資料が膨大でもデジタル化して残しておくことができる。今後の少年犯罪の研究にも生かせたのではないか」と指摘した。
小学4年だった山下彩花さん(当時10歳)を殺害された父賢治さん(73)も廃棄について「大変な問題だと思う。当時、私たち遺族は(審判を)傍聴できず、記録さえも見ることができなかった。なのにそんなに簡単に廃棄されていいものか理解に苦しむ」とコメントした。
ジャーナリストの江川紹子さんは「少年事件の厳罰化のきっかけとなり、日本の刑事司法の歴史を変えた重大事件にもかかわらず、記録が廃棄されたのは信じられない」と驚いた。「裁判所には、刑事記録が公文書で国民共有の財産だという認識が欠けていると言わざるを得ない。裁判所の内規や通達に違反しているのは明らかで、記録を残すべきかを検討した形跡がないのも疑問だ。神戸家裁は当時の担当者に聞き取り調査をするなどし、廃棄の経緯や一連の対応の問題点を明らかにすべきだ」と語った。【村田愛、山本康介】

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