ギャンブルには、「基本的に客は負けて、胴元が儲かる」という鉄則が存在する。これは表向き、大衆娯楽と主張しているパチンコホールとて同じこと。
パチンコホールはあくまでも娯楽施設であってボランティアで運営しているものではないので、運営継続のためには多くの客をコテンパンに負かす必要がある。そうでなければ店がつぶれてしまう。長い目で見れば、パチンコホールで勝ち逃げできる人なんかほぼいない。今は不景気。ホール側ですら倒れる時代なのだから、搾取には必死なのだ。
だが、胴元が儲かるということは、胴元側について甘い汁を吸えば、その恩恵にあずかれるという理屈も、モラルに反することではあるが一応成り立つ。実際に、ホール側と組んで悪だくみをするユーザーってのは、残念ながらいるわけだ。(文:松本ミゾレ)
今月26日、興味深い報道があった。パチンコ店で「当たりやすい台」の情報を外部に漏らしたとして、元店長らに賠償命令がくだされたという。ABCニュースの報道によると、大阪市内に本社を置くパチンコホール運営会社は次のように主張していた。
2019年に店長を務めていた男が、最高設定のパチスロ台の情報を、知人女性2人に漏洩。女らはその情報を元に不正にメダルを入手して、店に損害を与えた。運営会社はこの元店長と女2人に対して342万円の損害賠償を求める訴えを起こしていた。
一方で元店長は「情報漏洩はしていない」と反論し、不当解雇だと反訴していたが、大阪地裁は3月25日、3人に約165万円の支払いを命じる判決をくだした。
運営会社の主張が概ね認められた形だが、こういう設定漏洩をやられちゃうと、何の情報もないままお金だけ手にしてノコノコホールに出向いてしっかり負ける客が本当のバカにしか思えない。設定漏洩はホールの運営そのものを大きく揺るがす、あってはならない不祥事だ。
店長がいくら策を弄しても、本部が「あれれ? なんで朝一からしょっちゅう同じ女がピンポイントで設定6に座って、しかも根拠もないのに粘るんだ?」と思えばすぐに怪しいと思われるだろう。
この店の場合、パチスロは119台と少ない設置数だが、その中の稀少な設定6を毎回同じ女2人がガメてたのであれば、すぐに内部調査が行われることは想像がつく。
僕もかつてパチンコホールの運営会社の社員だったから分かるけど、通常の会社は店長以下社員らの動静にはしっかりと目くばせをし、不正をさせないように徹底している。
ま、僕がいた会社は現場はしっかり回ってたけど、社長が覚せい剤で逮捕されるというあまりにもお粗末な不祥事を起こしたし、最近になって経営破綻したからアレだけど、それでも店舗の不正には敏感だった。
やっぱり設定漏洩なんてやったら悪評はすぐに広まるものだ。少なくとも、僕が在籍していた2000年代の僅かな期間のうち、自店も他の系列でも、遊技者に著しい不公平感を与えるような不正はなかったと記憶する。
たしかあの当時は店長、副店長、主任、副主任といった立場の面々がその日その日の設定状況をお互いに共有していたので、設定漏洩なんてのも発生しようがなかった。同じ奴ばかりが毎日6ツモとかしてたら、一撃で不正だと分かるわけだし。
また、僕がただのお客になってから通うようになったホールもさまざまあるが、幸いなことに設定漏洩が発覚したようなホールは未だにない。裏モノが設置されていたとかには遭遇もしたが、設定の漏洩となると20年遊んできて未だに出会ってない。
それこそネットで「設定漏洩」と検索すれば、たしかに過去、同様の事例があったことは読み取れる。しかしこれも全国のホールを対象に検索した場合の話であって、現在まだ7000店舗近く現存しているホールのことを思えば、本当にごく一部なのだろう。
なので「設定漏洩がまかり通っているような店で打ちたくないな」という方も、そんなに気にせずに楽しく打って、楽しく負ければいい。