難関中学入試の問題と聞くと、とても難しい印象があると思います。事実小学校の勉強だけで受験を突破することは極めて困難でしょう。しかしながら、難関中学の入試問題には柔軟な発想力や視点をもっているかどうかということを試すようなとてもよくできたパズル問題が多く出題されています。そんな問題の中から私が独断で選んだ秀逸なパズル問題を今回はご紹介させていただきます。
大人も楽しめる内容になっていますので、ぜひ挑戦してみてください。
もちろん小学生対象の問題ですので、ルートや三平方の定理などは使ってはいけませんよ。
さあ、皆さんは小学生に勝てますか?
まずは最新の問題から。つい先月行われた東京の難関女子校、女子学院中学校2024年度の問題です。
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大きさの異なる2種類の正方形と円を図のように組み合わせました。
小さい正方形1つの面積は8cm2、大きい正方形1つの面積は25cm2です。
斜線の八角形の面積は□cm2です。
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多くの方はこの斜線部分の八角形を見て、どうすれば面積にたどり着くかといろいろな線で分割して考えてしまいがちです。また、面積が8cm2の正方形と聞くと、1辺の長さはルートになってしまいますので、別の形に等積変形するのでは?という思い込みをしてしまうことも多くあります。
これは、数多くの知識を得てしまったがゆえに、視点が狭くなってしまうという典型的な例です。実はこの問題、小学4年生の知識で解けてしまう問題なのです。
正方形の面積が8cm2ということは、この正方形をひし形と考えてしまえば、対角線×対角線÷2=8となりますので、小さい正方形の対角線の長さは4cmとわかります。その対角線を小さい正方形すべてに書き込んでみると、下の図のようになります。
こうすればお分かりの方も多いかと思います。その対角線の半分の長さ、2cmと大きい正方形の一辺の5cmを考えれば、1辺が9cmの正方形から小さい正方形を4等分した直角二等辺三角形を4枚、すなわち小さい正方形の面積を引けば八角形の面積は求まりますね。
従って答えは9×9-8=73cm2ということになります。
頭を柔らかく使うことで、簡単に解けてしまうという良問でしたね。
続いては少し古い問題からご紹介します。
これは2004年度、兵庫県にある超難関男子校、灘中学校の問題です。
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右の図で, ABとCDは垂直である。
AE, BE, CE, DEの長さは, それぞれ24cm, 6cm, 18cm, 8cmで, 円の面積が785cm2であるとき,斜線部分の面積の和は□cm2である。
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いかがでしょうか?
この問題、少し中学入試の勉強をしている人はとくに数字に惑わされるちょっといたずらが過ぎる問題でもあるのです。それは785という数字は3.14×25=78.5となるので、いかにも円周率を利用する問題に感じてしまう数字設定なんですね。
しかしながら、この問題に円周率(3.14)は全く必要ありません。
この問題は次の図のように左右上下対称になるような補助線を書き込んでみるのです。
すると、★、、◎はそれぞれ同じ面積になりますので、求める部分は円の面積から中央の長方形の面積を除いて半分にすればよいのです。
与えられた長さから、中央の長方形の面積は(24-6)×(18-8)=180cm2ですので、斜線部分の面積の和は(785-180)÷2=302.5cm2となります。
数字に惑わされず、更には対称図形のパズルを見破ることができた方はかなりのつわものです。
最後はとても見た目が美しいパズルです。
2022年度 東京の難関共学校、渋谷教育学園渋谷中学からのご紹介です。
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図のように1辺の長さが9cmの正方形の中に,2つの正三角形と正方形が入っています。斜線部分の面積は何cm2ですか。
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さてこの問題、解法はかなりたくさんありそうです。その中で今回紹介するのは最も小学生らしいやわらかい発想での解き方です。
まず【図1】のように左右上下対称の図形になるように補助線を引きます。このときに、★の二等辺三角形の形をよく覚えておいてください。
続いて【図2】のように点アから点エ、点オにそれぞれ補助線を引くと、全く同じ形の3つの二等辺三角形アイエ、アエオ、アオウが現れます。
この3つの三角形はいずれも★の二等辺三角形2つと▲の正三角形1つでできていますので、同じ形にしるしをつけていくと、【図3】のようになります。
正方形は★の二等辺三角形が8つ、▲の正三角形が4つでできており、斜線部分は★の二等辺三角形が4つ、▲の正三角形が2つですので、求める面積は正方形の半分だということがわかりますね。
よって、斜線部分の面積は9×9÷2=40.5cm2となります。
なお、この問題は大問の(3)の問題で、実際の入試では(1)、(2)で【図2】のアイエのような内角がそれぞれ30度、75度、75度の二等辺三角形がテーマとなっており、「この二等辺三角形を探すところからですよ」という出題者の配慮もしっかりとありました。小学生の入試の緊張感への心遣いも忘れない良問といえますね。
いかがでしたでしょうか?
中学入試の学習がいかに脳のトレーニングになっているかがお判りいただけたのではないかと思います。
中学入試の勉強は単に知識を詰め込むものと思われがちですが、実際に私国立中学の入試を見ると、学校側が求めているのはそれとは少し違う力なのかもしれませんね。
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