ユニクロ大量窃盗容疑、困窮につけ込まれたベトナム人…首謀者から「日本は万引きしやすい」と送り込まれる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を狙って万引きを繰り返したとして、ベトナム人の男女4人が福岡県警に窃盗容疑で逮捕、起訴された。
祖国で借金や病気などのため困窮していた4人は、首謀者から高額報酬を示され、「日本は万引きしやすい」と勧誘されていた。盗みの手口を教わり渡航の手配も受け、即席の窃盗団として日本に送り込まれていた。(藤本鷹史)
■学費払えず
「夫が病気で仕事ができず、親も子も全員、私の収入で生活していた。私の病気の手術代も必要だった」
先月26日、福岡地裁での公判。被告(42)(窃盗罪で公判中)は母国での苦しい生活状況を語った。果物の露天商としての収入は月5万円。子どもは学費が払えず高校を辞めた。
県警は2月、被告やリーダー役(38)ら4人が昨年9月末、福岡、久留米両市のユニクロでダウンジャケットやセーターなど92点を盗んだ窃盗容疑などで逮捕したと発表した。
捜査関係者や公判によると、金に困った4人に目を付けたのが、「チン」と呼ばれる首謀者のベトナム国籍の女(40歳代)。同国で服の販売や金貸しをしているとみられ、4人とは近所だったり服の販売を通じたりして知り合った。「日本では逮捕されにくい」と誘い、10万~25万円程度の報酬を示して渡航を勧めた。
リーダー役にとっては給料3か月分に相当し、2018年頃から計12回も来日して盗みを繰り返した。女に70万円ほど借金があったという別の被告は公判で、「従うしかなかった」と弁明した。県警は4人のうちの誰かが属するグループが18年以降、福岡や関東、関西で万引き66件に関与したことを確認し、被害総額は約1970万円に上る。
■バッグを加工
女がターゲットにしたのは手頃な「ファストファッション」の代表格・ユニクロだった。ベトナムでは高級ブランドとして扱われ、店には警備員が常駐するなど厳しい万引き対策が取られているという。
女は4人に手口を詳細に指示していた。入り口が限られる単独店ではなく、複数の入り口がある大型商業施設内の店舗を狙うよう伝え、盗む商品の色やサイズも細かく決めていた。
4人は警報装置に反応しないよう加工されたバッグに商品を入れて店外に持ち出し、スーツケースに詰め替えて移動。民泊施設に置くと、運搬役とみられる別の人物が持ち去っていたという。商品はベトナムにいる女に渡り、現地のフリーマーケットサイトなどで販売されたとみられる。
公判では4人とも起訴事実を認め、リーダー役は「後悔している」と謝罪した。検察側は4人に懲役2年6月~3年を求刑。弁護側は「首謀者の手足として働いたにすぎず、動機にも同情の余地がある」と執行猶予などを求めた。判決は13日に言い渡される。
■各地で事件
ユニクロを狙ったベトナム人による窃盗事件は各地で起きており、大阪府警は2月28日、ベトナム人の女3人を窃盗容疑で逮捕した。福岡のグループとの関係は不明だが、府警は「同種事案が全国で発生しており、組織の解明が必要だ」と警戒する。福岡県警は窃盗容疑で首謀者の女の逮捕状を取り、行方を追っている。
運営するファーストリテイリングの広報担当者は取材に「セキュリティーを強化し、防犯意識を高めていく。警察とも、情報提供を含めて密な連携を図っていきたい」としている。
■「許されぬ」意識低い国も
なぜ、外国の窃盗団に日本が狙われるのか。
警視庁と小売業者による「東京万引き防止官民合同会議」がベトナムや日本など7か国の計700人を対象に行った万引きに関する意識調査(2021年)では、万引きが「いかなる理由があっても許されない」と回答した割合は、日本が最高の85%だったのに対し、他国は76~44%。「見つからなければ問題ない」の割合も日本より英国や米国、ベトナムが高かった。
日本の店舗には複数の出入り口があり、店外に商品を陳列するなど対策が甘いとの印象を持たれ、外国人が「万引きされても仕方ない」と捉える傾向があるという。
一方、日本では店員による客への声掛けの励行に抑止効果があるとみられている。ただ、調査に関わった拓殖大の守山正名誉教授(犯罪学)は「外国人には効果が薄いというデータもある」と指摘。「防犯カメラの整備や従業員の目が届く陳列など物理的な対策が有効だ」と話している。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。