“小泉進次郎というカード”自民内で増す存在感 小泉純一郎元総理がそれでも“待った”をかける理由

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「僕のことはいいから。政策取材をやって欲しいな」小泉進次郎元環境大臣は周囲の記者にこう話す。
【写真】「待った」をかけた父の小泉純一郎元総理 50歳になるまでは総裁選に立ってはならない?
2023年11月に開催された第1回の「超党派・ライドシェア勉強会」でも、「世論調査で総理にふさわしい人として名前が出ているが」という記者の質問に対し、「きょうはライドシェアで質問していただきたい」と打ち返した。
こうして“政局”とは一線を画する様子を見せている小泉氏だが、本人の思いとは裏腹に、彼をめぐる政局的な動きが注目される場面が増えてきた。
1月11日。かつて父・小泉純一郎元総理も所属した自民党の最大派閥・清和政策研究会、通称・安倍派の裏金事件を発端に自民党で新設された、政治刷新本部の初会合が開催された。自身は無派閥を貫く小泉氏は会合後、記者団に対し次のように主張した。
小泉進次郎氏(1月11日)「派閥はなくしたらいいじゃないか。派閥から人事とお金をしっかりと切り離して、政策集団だと胸を張って言えるような環境を整えることは、自民党を立て直す上で最低限必要なことなんじゃないか」
それから2週間後。政治刷新本部が決定した「中間取りまとめ」では「『派閥』から脱却し本来の政策集団に生まれ変わらねばならない。そのカギは、政策集団が『お金』と『人事』から完全に訣別することである」と記載された。
小泉氏は、自身の主張に沿う結論となったことに「申し上げたことが、結果盛り込まれて、しかも『完全に訣別』ってのは非常に重い」と手応えをにじませた。
一般の人が自家用車を使って有料で客を運ぶ「ライドシェア」の導入に向けた活動でも、存在感を高めている。2023年11月に超党派の国会議員による勉強会を立ち上げ、会長として地方の首長やタクシー事業者などと意見を交わしてきた。
小泉進次郎氏(2023年11月)「ライドシェアにしろ、タクシーに対する過剰な規制の打破にしろ、いま迅速な対応が求められている」
勉強会は同年12月、道路運送法の見直しや新たな法律の制定、タクシードライバーが増えない要因の一つとされる、タクシーの営業地域の地名や道路の名前などを問う「地理試験」の抜本的見直しなどを盛り込んだ提言をまとめた。その後、政府は地理試験の廃止や、4月からタクシーが不足する地域や時間帯に限りライドシェアを解禁する方針を決めた。小泉氏の提言が交通政策を動かす結果となった。
JNNが2月に行った世論調査で、石破茂元幹事長に次ぎ「次の総理にふさわしい人」の2位となった小泉氏。各社の世論調査でも必ずと言っていいほど上位に名前が挙がる。
圧倒的な知名度と発信力を誇る政界のサラブレッドは、「未来の総理候補」として早くから注目されてきた。
しかし常に順風満帆だったわけではない。
安倍政権と菅政権で環境大臣を務めた際は、“迷言”で痛烈なバッシングを受けた。
2019年9月、国連の「気候行動サミット」に出席した際の記者会見で「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールでセクシーでなければならない」と発言。この発言に対し、各方面から「何をしたいのか分からない」「具体的な対策についての発言がない」などと批判の声があがった。
また2021年4月、政府が2030年度の温室効果ガス排出を2013年度比で46%削減する目標を定めたことをめぐっては、こう話した。
小泉進次郎氏(2021年4月 TBS「news23」インタビューにて)「くっきりとした姿が見えているわけではないが、おぼろげながら浮かんできた。46という数字が」
この発言は「数値の根拠が曖昧だ」としてネット上などで炎上した。
こうして「政策に具体性が欠ける」と批判されてきた小泉氏だが、2022年に、国会の日程調整や野党との交渉などにあたる「国会対策副委員長」に自ら希望して就任。メディアへの露出も少なく“縁の下の力持ち”的な仕事で、閣僚経験者がこの職に就くのは異例だ。
小泉進次郎氏(2022年当時、自身の活動報告にて)「この法案は国対の知恵と経験で会期内に成立したな、とか、ニュースでは取り上げられない仕事師たちが働いている。そんな国対に身を置いていると今までとは違う学びと、今までとは違う政治の景色も見えるようになった」
また2023年7月、自身が議連幹事長を務める「自民党サーフィン議員連盟」は緊急総会を開催。東京電力・福島第一原発の処理水放出が8月に始まるのを前に、放出後の海でサーフィンをすることで、その安全性を示すことができると訴えた。その後9月には、小泉氏自身が福島県南相馬市の海岸で地元の子どもたちとのサーフィンに参加、その狙いをこう説明している。
小泉進次郎氏(自身のSNSで)「処理水放出後に政治家の私が福島で地元の方々とサーフィンをすることで、少しでも今まで頑張ってきた方々の発信の助けになれば。パフォーマンスだと言われても構いません」
ある外務省幹部は「海水を飲むとかじゃなくて、サーフィンをしに行った。普通はそんなこと思いつかない」とまで絶賛している。
永田町では今、岸田内閣の支持率が政権発足後過去最低を記録し、「ポスト岸田」への関心が高まっている。こうした中、ある政府関係者は、2021年の総裁選で立候補した河野太郎氏の当選を目指し、小泉氏・石破元幹事長・河野氏の3人が結成した「小石河連合」を引き合いに、次のように話す。
「次期総裁候補は、小石河連合のうちの誰かか、上川陽子や高市早苗などの女性候補だろう」「菅さんや麻生さんの動き次第だ」
中でも、小泉氏と同じく無派閥である菅前総理は、派閥解消を強く唱え、ライドシェア導入の旗を振り始めた張本人。昨今の小泉氏の主張とリンクする。
関係者によると菅氏は、派閥の裏金事件を契機に低迷する自民党支持率を念頭に、こんなことをつぶやいているという。
菅義偉前総理(周囲に対し)「次の総裁は思い切って変えないとダメかもしれない。そろそろ進次郎というカードを使うときが来たのかもしれない」
しかし、菅氏に近い政府関係者は小泉氏について「まだ知識や経験不足だ」と指摘する。そのうえで「菅さんも、進次郎を次の総裁候補にしようと思っていたけど、流石に『あいつじゃまだ…』って誰もついてこないと分かったから、次は早いとなっているのでは」と分析する。
別の菅氏周辺も「菅さんは小泉進次郎を大事にしている。まだ総裁には早いかもしれないから、潰さないようにタイミングを見ているんだろう」と話す。
父・小泉純一郎元総理も“待った”をかける。
2023年12月中旬。山崎拓・元自民党副総裁は東京都内で小泉元総理と会食し、進次郎氏についてこんなやりとりを交わしたことを記者団に明かした。
小泉純一郎元総理(山崎氏に対し)「進次郎はまだ40歳だから、50歳になるまでは総裁選に立ってはならない。次の政権を支える立場でやりなさいというふうに申しつけてある」
「未来の総理候補」は「総理」になる力を身につけられるか。政府関係者は「進次郎はまだ42歳、時間がたっぷりある。絶対選挙に落ちないし、既に大臣もやっている。他の同じ年齢の人に比べたら圧倒的に経験があるわけで、焦る必要は無い」と期待をにじませる。
「若さ」という壁を乗り越え、“政策”面でも“政局”面でも真価を発揮することができるかが注目される。
TBSテレビ政治部 平河クラブ岩本瑞貴

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