パソコンを広げると猫が邪魔を!「ネコハラ」急増の理由とは… 獣医師「子どもっぽいまま大人になった猫が増えた。特にオス猫に甘えん坊が」

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誰よりもかわいい「うちの子」を世界一幸せな猫にしたい。それが猫の飼い主(と書いてげぼくと読む)全員の願いでは。いったいうちの子は何を望み、何を考えているのか? 一方、SNSを中心に、猫の気持ちを知りたい飼い主たちから圧倒的な支持を受けるのが、獣医学博士の資格を持ち、現在、難治性疾患の基礎研究に従事するにゃんとす先生。自身も愛猫家である先生が日々の「困った」についてお答えします。
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仕事や勉強をしようとした途端に、キーボードや書類の上に猫が乗ってくることはありませんか? 「可愛いけどこれでは作業が進まない!」とお悩みの飼い主さんもいると思います。
猫が手を出してくる理由とは…A 飼い主さんにかまってほしいからB キーボードが獲物に見えるからのどちらでしょうか?

あらためて猫がキーボードに乗ってくる理由はもちろん、Aの「飼い主さんにかまってほしいから」です。
普段はそっけないのに、机に書類を広げたりパソコン作業をしようとした途端に猫に邪魔される…なんて経験が一度はあると思います。猫から受けるハラスメント、通称「ネコハラ」とも呼ぶそうですが(笑)、特にテレワークが増えた昨今、可愛いけど困るなあ…とお悩みの飼い主さんも多いのではないでしょうか。
猫が飼い主の邪魔をしてくるのは、現代の飼い猫が「子どもっぽいまま大人になってしまう」ことが原因だと考えられています。子猫は好奇心旺盛で、「母猫の気を引きたい・かまってほしい」という欲求を持っています。これと同じように、飼い主に対して、「かまってほしい・こっちを見てほしい」と邪魔してくるのでしょう。では、なぜ現代の飼い猫は、子どもっぽいまま大人になってしまうのでしょうか?
猫は本来、狩りをして生きる自立した動物でしたが、1万年ほど前から人間と生活を共にするようになりました。現代の飼い猫も基本的にずっと飼い主さんと一緒にいるので、狩りをする必要がなくなってきました。ごはんは勝手に出てくるし、人間が世話をしてくれます。その結果、自立心が無くなり、子どもっぽいまま大人になる現象が起きているのではないかと考えられています。また、現代の猫は親離れがないことも原因の1つでしょう。本来、猫はある時期になると、母猫は子猫(特にオス猫)を威嚇して親離れさせますが、飼い主は母猫のように親離れさせることはありませんよね。オス猫のほうが甘えん坊さんが多いのは、このようなことも関係しているかもしれません。しかし、どんなに可愛い理由でも仕事を邪魔されるのは困りますよね。そんな時は、SNSでも一時話題になりましたが、机の上に猫用のスペース(小箱やベッドなど)を用意してあげると良いですよ。パソコンのキーボードに乗ってくる場合は、アクリル製のカバーなどを使用するのもおすすめです。
愛猫が何もない空間をじっと見つめていることはありませんか?
視線の先に一体何が見えているのかと言えば…A 人間には聞こえない音を聞いているB 人間には見えない幽霊が見えているのどちらでしょう?
ネコと暮らしていると不思議がいっぱい
あらためて猫が何もないところを見つめる理由とは、Aの「人間には聞こえない音を聞いている」です。
愛猫が何もないところをじっと見つめていると、「えっ、おばけ的なものが見えているの…?」と怖くなってしまうかもしれませんが、おそらくこれは猫の聴覚や視覚が人間とは大きく異なることがその背後にあるのではないでしょうか。猫の聴覚は人間よりもはるかに優れています。特に高い音を聞き取る能力が非常に高く、人間よりも2オクターブ高い音まで聞き取ることができると考えられています。また、猫の耳の周りの筋肉は非常に発達しており、180度ぐるっと動かすことができるので、周囲の音の方向を正確に捉えることができます。そのため、人間には聞こえない高い周波数のや微細な音を聞き取って、その音のする方向を見ているのかもしれません(音の正体が幽霊的な何かではないという保証はありませんが…)。
そして、猫の視覚も人間とは異なる特徴を持っています。猫はあまり目が良くないという話を聞いたことがあるかもしれません。基本的に猫の視力は人間の7分の1以下と、かなりの近視だと考えられています。また人間のように多彩な色を認識することも難しく、赤や緑を見分けることができません。しかし、猫は暗闇のハンターだけあって、暗い環境での視力は非常に優れています。これは、暗い場所での視覚を司る「桿体細胞(かんたいさいぼう)」が人間の3倍以上あることが関係しています。また網膜の裏に「タペタム(輝板)」という反射板を持っており、これによって網膜を通過した光を反射し、再度網膜を通過させることで、暗闇での視力を向上させています。そのため、暗い場所ではもちろん、昼間の明るい場所でも人間には認識できない光の反射(微細なホコリなど)が猫にはしっかり見えているのかもしれません。さらに2014年には、猫を含む様々な動物が紫外線を認識できている可能性を示す研究が発表されました。紫外線を認識できることで、実際にどのような世界が見えているのかはよくわかっていませんが、私たち人間には見ることのできない何かが、猫には見えているのかもしれませんね。※本稿は『どっちが正しい? 幸せになるねこ暮らし』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

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