「宝塚は治外法権の場所ではない」死亡のタカラジェンヌ“双子の妹”が示した“劇団への怒りと深い失望”「姉が受けたパワハラは悪質で強烈に酷い行為」「姉の命に向き合って」

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〈私は遺族として、大切な姉の為、今、宝塚歌劇団に在団している者として想いを述べます〉
【画像】「姉が受けたパワハラは悪質で強烈に酷い行為」劇団への怒りと深い失望を示した有愛きいの双子の妹一禾あお
行間には、劇団への怒りと深い失望が滲んでいた。
〈劇団員は宝塚歌劇団が作成した【パワーハラスメントは一切行わない】という誓約書にサインしています。それにもかかわらず、宝塚歌劇団は、日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界です。その世界に今まで在籍してきた私から見ても、姉が受けたパワハラの内容は、そんなレベルとは比べものにならない悪質で強烈に酷い行為です〉
宝塚音楽学校と大劇場
2023年9月末、宙組(そらぐみ)の有愛きい(享年25)が転落死してから約5カ月が経った2月27日、遺族の代理人である川人博弁護士が記者会見を開き、劇団側が一部のパワハラを認め、角和夫阪急阪神ホールディングス会長が謝罪することを明らかにした。

「劇団側は一貫して有愛さんが上級生から受けたパワハラについて否定し続けてきました。昨年12月、それに対し、遺族側はLINEなどの証拠を元に、15件のパワハラ行為があったとする『意見書』を劇団側に提出。4度の交渉を経て、ようやく劇団が重い腰を上げた格好です」(社会部記者)
冒頭の文面は、雪組に所属する有愛の妹・一禾(いちか)あおの悲痛な「訴え」である。記者会見で川人弁護士はこの文面を配布し、次のように主張した。
「特に指摘したいのは、15項目の内容に関して、劇団側の言い分が遺族側の主張を否定、ないしは軽視するものもあり、むしろハラスメントを行っている者の主張を代弁するようなものが多いということ。阪急は『行為の多くがハラスメントに該当する』とは言っていますが、具体的にはどの行為が値し、どの行為が値しないかは言っていないのです」

劇団は、有愛を追い詰めた上級生に聴取を行ったと遺族側に説明。だが、一禾は次のように批判する。
〈宝塚は治外法権の場所ではありません。宝塚だから許される事など一つもないのです。劇団は今に至ってもなお、パワハラをおこなった者の言い分のみを聞き、第三者の証言を無視しているのは納得がいきません〉
今回の会見で公表された一禾あおの「訴え」全文は以下の通りだ。
〈訴え
妹(宝塚歌劇団現役団員)
私は遺族として、大切な姉の為、今、宝塚歌劇団に在団している者として想いを述べます。いくら指導という言葉に置き換えようとしても、置き換えられない行為。それがパワハラです。劇団員は宝塚歌劇団が作成した【パワーハラスメントは一切行わない】という誓約書にサインしています。それにもかかわらず、宝塚歌劇団は、日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界です。その世界に今まで在籍してきた私から見ても、姉が受けたパワハラの内容は、そんなレベルとは比べものにならない悪質で強烈に酷い行為です。厚生労働省のパワハラの定義を見れば、姉が受けた行為は、パワハラ以外の何ものでもありません。宝塚は治外法権の場所ではありません。宝塚だから許される事など一つもないのです。劇団は今に至ってもなお、パワハラをおこなった者の言い分のみを聞き、第三者の証言を無視しているのは納得がいきません。劇団は、生徒を守ることを大義名分のようにして、パワハラを行った者を擁護していますが、それならば、目撃したパワハラを証言してくれた方々も、姉も同じ生徒ではないのですか。そもそも【生徒】という言葉で曖昧にしていますが、パワハラを行った者は、れっきとした社会人であり、宝塚歌劇団は一つの企業です。企業として、公平な立場で事実に向き合うべきです。スケジュール改革や、各種改善策に取り組んでいるような発表をしていますが、姉の死を軽視し、問題を曖昧化しているとしか思えません。これ以上姉と私たち遺族を苦しめないでください。姉は体調を崩している訳でも、入院している訳でもありません。二度と帰ってきません。姉の命の重さを何だと思っているのでしょうか。劇団は、「誠意を持って」「真摯に」という言葉を繰り返して、世間にアピールしていますが、実際には、現在も遺族に誠意を持って対応しているとは思えません。これ以上無駄に時間を引き伸ばさないでください。大切な姉の命に向き合ってください。〉

◇◇◇
なぜ、劇団は有愛の命に向き合わないのか。2月28日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」並びに29日(木)発売の「週刊文春」では、いまだに混迷を極める劇団内部の深層レポートを掲載する。遺族側が求める「イジメ上級生の謝罪」が実現しない理由、宙組トップがファンに発信したメッセージ、そして、角会長が記者の直撃に見せた予想外の反応とは――。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年3月7日号)

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