【懲役3年判決】ナンパだと言い続け…強制わいせつ致傷のイケメン被告が繰り広げた「身勝手な主張」

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「被告を懲役3年に処する」
2月27日、東京地裁の法廷で裁判長がそう判決を言い渡した。量刑の理由が述べられるのを、北畠亜都夢(あとむ)被告は時折、うなずきながら聞いていた。
世田谷区の路上で、女性に背後から抱きついてわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ致傷などの罪に問われている元モデルの北畠被告(27)の裁判員裁判が、2月19日より東京地裁で行われていた。
北畠被告は、逮捕前にはモデル事務所に所属しテレビ番組に出演したこともある。15年間プロを目指してサッカーを続け、高校・大学はスポーツ特待生として進学するレベルだったという。
黒のスーツに白いシャツで出廷した北畠被告は短髪でスラッとして足が長く、さすが元モデルだけあってスタイルがいい。ただ、逮捕前の映像にくらべると、法廷ではひと回り痩せたように見えた。
北畠被告はいずれも20代の、Aさんに対する強制わいせつ未遂、Bさん、Cさんに対する強制わいせつ致傷の3つの事件について罪を問われている。
検察の冒頭陳述によると
’23年1月9日の午後11時ころ、路上でAさんを発見した北畠被告は、約10分間、Aさんの後をつけ、暗い集合住宅の敷地内で突然、背後から手で口を塞いだ。しかしAさんが大声で悲鳴を上げたため、その場から逃走した。
約1ヵ月後の同年2月4日の午前1時30分ころ、路上でBさんを発見した北畠被告は、Bさんが道中にスーパーで買い物をしたこともあり、約1時間にわたって後をつけた。そして、人気のない暗い歩道上で突然、背後から手で口を塞いだ。Bさんは悲鳴を上げて逃げようとしたが、北畠被告は追いかけ、Bさんが着ていたコートの裾をつかんで転倒させた。Bさんの顔や太ももなどに全治約10日間のケガを負わせた挙句、北畠被告はその場から走って逃走したのだ。
さらに約1ヵ月後の同年3月13日の午前0時30分頃、北畠被告は歩いていたCさんの後をつけ、人けのない暗い歩道上で突然、背後からCさんのスカートの中に手を入れた。逃れようとして態勢を崩したCさんの下半身を着衣の上から触ったあと、その場から走って逃走。Cさんは、体勢を崩した際に右ひざをすりむき、爪を割るなど、全治約1週間のケガを負った。
一方、北畠被告の弁護人は冒頭陳述で、3件とも「女性と話がしたい」とナンパ目的で後ろから近づいたものだと主張。背後からバックハグをするように両腕をまわして「お姉さん」と声をかけたが、女性が悲鳴を上げたため逃走したという。「口を塞ぐ」暴行はあったが、わいせつ目的ではなく、悲鳴を上げられたのでとっさに口を塞ごうとしたと説明した。
被告人質問で、弁護人にそれぞれの事件について聞かれた北畠被告は
「Aさんの後ろからハグをするように両腕をまわして『お姉さん』と声をかけたら、Aさんが『キャー』と悲鳴を上げたので、焦って口を塞ごうとしました。腕をほどかれ、大声を出されたので、走って立ち去りました」
「Bさんの後ろからハグをするように両腕をまわして、『お姉さん』と声をかけました。Bさんが『キャー』と悲鳴を上げて前方へ逃げようとして、前のめりに転びました。転びそうになったときにとっさにコートの裾をつかみました。口を塞いではいません。Bさんが叫んでいたので、走って逃げました」
「Cさんの後ろからハグをするように両腕をまわして、『お姉さん』と声をかけました。Cさんは『キャー』と声を上げて、逃げようとしました。Cさんがよろめいたので、とっさに手で支えようとして、下半身に触れてしまいました。少し触れただけで、スカートの中には手を入れていません。Cさんが膝をつき、『警察を~』とか叫んでいたので、走って立ち去りました」
と述べている。
しかし、BさんもCさんも、北畠被告は無言だったと法廷で証言しているのだ。
「後ろから足音がしたので歩道の端によけたら突然、口を塞がれました」(Bさん)
「後ろからダダダッて足音がして、いきなりスカートの中に手を入れられました」(Cさん)
また、弁護人の「なぜ、人けのない場所に行くまでに声をかけなかったのか」という質問には、「ナンパを断られたら格好悪いし恥ずかしいので、人に見られたくなかった」と答えた。
検察官の質問にも「ナンパです」と主張し続けた北畠被告。
「嫌がる人もいるだろうなと感じましたが、ハグだけなら、不審者として通報される可能性までは考えていませんでした」と述べ、検察官の「ハグをしただけという言い分ですが、ちょっと人より性的な嗜好が変わってるなとか、ズレてるなと思ったことってありますか?」という質問には「ないです」と断言した。
しかし、「あなたはモデルですよね。モテるんですよね。なぜ普通に声をかけないのか疑問なんです」と別の検察官が質問に立つと、逮捕直後に彼がまったく違った供述をしていたことが判明した。
検察官「『こんな夜に声をかけてナンパしてもしょうがないし、後ろから抱きついて、女の子の反応がまんざらでもなかったらどこかに行こうと考えました』と供述していませんか?」
北畠被告「覚えていません」
検察官「『お酒を少し飲んでたということもありますし、ムラムラというかそういう気分になりました』と説明していませんか?」
北畠被告「覚えていません」
検察官「『自分の中の溜まっていた性欲が抑えきれずやってしまいました』と説明していませんか?」
北畠被告「警察にうながされて、『はい』と言っただけです…」
さらに、北畠被告は、「逮捕直後で動揺していたので何を話したか覚えていません。それに、弁護士さんと接見できていなくて、取り調べにどう対応したらいいか、助言をもらっていませんでした」と逮捕直後の供述調書には誤りがあると主張したのだった。
2月21日には論告・弁論が行われた。
検察は「わいせつ目的のもと、実行行為を行ったことは明らか」であり、「深夜、人けのない場所で若い女性を背後からふいに襲いかかる行為をナンパ・ハグといった言葉で説明できない」。そして「動機が身勝手で、再犯の可能性が高い」と懲役5年を求刑。
一方、弁護人は、「被告人の行為はわいせつ目的ではなく、ナンパ目的」であり、強いてわいせつな行為をしようと考えて被害者に声をかけたものではない。問われるとすれば、暴行罪や傷害罪であり、「執行猶予つきの判決が相当」と述べた。
最終陳述では、北畠被告が「何らかの形で被害者の方に伝わりますよう祈って、この場をお借りして謝罪させてください。この度は、本当に申し訳ございませんでした」と涙ながらに深々と頭を下げた。そして、傍聴席に向かっても同じように頭を下げたのだった。
そして2月27日に懲役3年の実刑判決が言い渡されたのだ。繰り返し報道されていたからか、法廷には多くの若者がやってきていた。冒頭に記したように裁判長の言葉をうなずきながら聞いていた北畠被告。自分がやったことでどれだけ女性を傷つけたのか、本当に理解したのだろうか。
取材・文:中平良

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