“いい人”ほど「なぜ不幸になりやすい?」根本理由

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「いい人」を目指す必要なんてありません(写真:Graphs/PIXTA)
さまざまな悩みや不安を抱え、「楽しくないまま、いまを過ごしている」。
そんな人は珍しくありません。
とある調査によると「いま、あなたは幸せですか?」という質問にイエスと答えられる人は2割もいないのです。
現代は生きづらさや不安が増しているのかもしれません。
しかし、幸いなことに、多くの先人たちが幸せに生きるコツを残してくれています。それらを現代の生活にあわせて整え、「即役立つ」ようにしたのが、新刊『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』です。
以下では、「悩みや苦しみを遠ざけ、人生を豊かにしていく方法」についてわかりやすく解説します。
「人間関係がしんどい」「人づきあいが苦手」、そう感じている人はいませんか?

そんな感情の裏には「いい人でいたい」、そんな欲求がひそんでいることが珍しくありません。
もしあなたが、「いい人」と呼ばれていて、それが心地よいなら問題はありません。
また「いい人」と呼ばれることに意欲的でいられる場合も、そのままでよいと思います。
でも胸に詰まるものを何かしら感じていたり、釈然としていなかったりする場合。
「もっといい人になりたい」と苦しかったり、「いい人であり続けたい」と思うがゆえに疲れかけている場合。
「いい人」を目指す必要なんてありません。
皮肉な話ですが、いい人でいようとするほど残念な結果を招いてしまいます。
もしかすると、人生の最優先事項が「人に好かれること」「いい人だと思われること」になってはいませんか?
そういう人には「自分の幸せを犠牲にしてでも、いい人でありたい」という傾向があります。
「好かれる」「愛される」といえば聞こえがいいですが、嫌われたくないがために相手の言いなりになってしまいます。
皮肉なことに、自分を縛って、自由を手放していることになります。
目指すべきは「皆に好かれている状態」ではなく、「皆に嫌われているわけではない」というあたりです。
「ストレスなく接することのできる人が自分の周りに3割いる状態」と言い換えてもよいでしょう。
それは逆に言うと「自分の周りにいる人の7割をうっすら嫌いな状態」ですが、それでも十分に立派な大人の態度で生活できているほうです。
さらに言うと「ストレスなく接することのできる人」が、周りに5割いれば、あなたは周囲の人に寛大な偉人です。
7割いれば、コミュニケーションの達人です。
もしあなたが「誰にも嫌われたくない」と考えているのだとしたら、普段の生活では周りに気をつかい、気持ちをすり減らしているはずです。
自分の人生を取り戻すために、もっと自由になる必要があります。
もちろん、急に変われるわけではありません。
こうしたことはほんの少しずつ変えていくことが大事です。
そのためには、次の簡単なレッスンがおすすめです。
私はこれを、自分に対する「いい人」をやめるレッスンと呼んでいます。
他人から見ての「いい人」を目指すのをやめたい場合。
自分に対する「いい人」を、まずやめることがよい練習になるからです。
あなたがとらわれている常識を崩すのは、簡単ではありません。しかし変化を起こしさえすれば、それが小さなものでも、少しずつあなたの行動を変え、やがて大きな変化になります。
多くの人は一度に(短期に)大きく変えようとしすぎです。
初めは驚くほど小さな変化でいいんです。
○飲み物を、まだ買ったことのないものに変える○入ったことのない店に入ってみる○読んだことのない作家の本を読む○普段は聞かない種類の音楽を聞いてみる
このように、いつもの行動や習慣をちょっとだけ変えてみてください。
自分の意志の力で変わろうとする必要はありません。
ひとりでにスムーズに変化できるように、自分に少し変化を与えるだけでいいのです。
「完璧主義者」という言葉を褒め言葉と捉えているうちは、「いい人でいたい」という欲求など手放せません。仕事だけでなく、人間関係においても100点を求めるなんて、そもそもゴーマンな態度です。
「ストレスなく接することのできる人が自分の周りに7割いる状態」であるには、周囲に優しくなる必要があり、そのためにはまず「自分へ向けた完璧主義」を改める必要があります。
「自分が頑張っているのに、相手が頑張っていない」と腹が立ちかねないので、まずこちらが先に手を抜いておくわけです。
ただ、真面目な人はなかなか手を抜けないもの。
ですから「7割できたら自分を褒める」と決めておくことです。
Facebook創始者であるマーク・ザッカーバーグの名言に「完璧であるよりも終わらせることのほうが大事」というものがあります。
7割できたら「すごい! 今日は自分へのご褒美が必要かも」。
これくらい、甘くてゆるい感覚でいいのです。
普段から「7割でまず褒める癖」をつけましょう。
ランニングでも、一般的に目標距離の7割あたりから苦しくなるとされています。
7割もクリアしたなんて、本来はすごいこと。
なのに、いつのまにか自分への期待値を上げすぎて「ゴールできない自分=ダメ人間」であるかのように思い込んでしまう人もいるようです。
もしそんなストレスを感じるなら、ペースをうんとゆるめて、歩きましょう。
もっとも仕事などで「続けないといけないこと」もあるでしょう。
その場合、自分が本来以上に頑張っているという事実をしっかりと受け止めてください。
「完璧には至っていない」と自分を責めるのではなく「もう、こんなにもやっているのだ」と素直に褒める。自分自身を肯定してあげる。
そんな営みの繰り返しが、あなた自身の自己評価を上げて、やがては大きな変化へと導いてくれます。
「いい人でいたい」という欲求から卒業するには、ワガママになってみることです。
もちろん突然「ワガママになれ」と言われても、なんだか怖い気がするでしょう。
それはきっと、「ワガママ」と「自分勝手」を混同しているせいかもしれません。
この2つの言葉の意味は大きく異なります。
「自分勝手」とは「他者を考慮せずに行動する態度」と定義できます。一方、「ワガママ」とは「自分の意見を一度ははっきりと言う態度」を指します。
この違いを、身をもってリアルに実感できるよい方法があります。
皆でお昼ご飯を食べに行く機会があったら、自分の食べたいものを伝えてみましょう。
「インド料理は苦手」という友人がいたとしても、あなたが食べたいなら、たまにはつきあってもらいましょう。
その友人にとっても普段食べないものを食べるよい機会です。
あなたとのランチをきっかけに、友人がインド料理の美味しさに目覚めたら、感謝されるかもしれませんよ。
もちろん「結局、友人の意見通りパスタに落ち着いた」ということもあるでしょう。
それでも構わないじゃないですか。
自分に「意見を尊重してあげたい友人」がいることを喜びましょう。
重要なのは、相手に勝つことなどではありません。
あなたが「自分なりの意見を言えた」という事実です。
それは素晴らしいことです。
一方「自分勝手」というのは「何が何でもインド料理を譲らない態度」です。
友人が、たとえどんなに寛大で優しい人だとしても。
あなたが毎回「自分勝手」を貫き通していれば、さすがに困ってしまいますよね。
このように、コミュニケーションのレベルで「自分の意見を明らかにすること」が「ワガママ」。
みんなが困るのが「自分勝手」です。
友人との約束を楽しみにしていたとしましょう。
でも、当日になって突然、体調を崩したり、気分がのらなかったりした経験はありませんか?
健康にどんなに気をつけていても、調子の悪いときはあるものですよね。
もしかして、あなたはそんなときでも、約束を果たそうとしていませんか。
そんな経験があるなら、それはあなたがいい人だからです。
体調がすぐれなかったり、気分が落ち込むようなら、延期を相談してもいいんですよ。
出先で悪化し、倒れてしまったらかえって大変です。
たとえその約束が「その日しか開催されないイベントに行く」など、貴重な予定であったとしても、控えるほうが賢明です。
なぜなら、相手の体調も崩してしまう可能性が高いから。
気分がのらないのは風邪の兆しかもしれません。
あなたが風邪をひいていたとしたら、相手や周囲にうつしてしまうかもしれないでしょう。
万一、取り越し苦労に終われば「たいしたことなくて良かった」ぐらいに考えればいいのです。
そのくらい自分に優しくあることは正義です。
また「体調不良」とすら伝えにくい相手とは、おつきあいを考え直したほうがいいかもしれませんね。
レッスンは以上です。さっそくできることから試してみてください。
「いい人でいたい」という欲求は、知らぬ間にストレスとなって、あなたを少しずつむしばんでいきます。
その欲求は、無理・無駄です。
そんなものは捨てていいんです。そのほうが、必ず幸せになれます。
なぜなら、あなたにとって大事な人は、あなたが「いい人」でなくても、きっと、あなたを愛してくれる人だからです。
逆に、あなたに「いい人でいるべし」と暗に求めるような人は、あなたにとって本質的に大事な人ではないかもしれませんよ。
(堀内 進之介 : Screenless Media Lab. 所長、立教大学特任准教授)(吉岡 直樹 : Screenless Media Lab.テクニカルフェロー)

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