「お前、頭おかしいよ」《熊谷27歳女性絞殺事件》控訴審判決で被告が被害者姉に吐き捨てた“暴言” 「黙れ、冤罪だろ!」「ふざけんな!」怒鳴り合いに法廷は騒然

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〈「一生刑務所から出さないで」《熊谷27歳女性絞殺事件》被害者の姉が怒りの告白 殺人から傷害致死にトーンダウン、控訴審は数分で終了、被告に反省の色なし…「私は絶対に許さない」〉から続く
2月14日午前11時、東京高裁第429号法廷。2021年9月に亡くなった宮崎英美さん(当時27)への傷害致死の罪で起訴された冨田賢(すぐる、34)被告の控訴審の判決が行われた。冨田被告には今年3月、さいたま地裁で懲役9年の判決が言い渡されていたが、控訴。昨年12月から控訴審が行われていた。
【画像】亡くなった宮崎英美さん(卒業アルハムより)
宮崎さんのアパートを調べる捜査関係者 共同通信
埼玉県熊谷市の自宅アパートで宮崎さんの絞殺死体が発見されたのは、2021年9月6日のこと。1カ月半後の10月21日に埼玉県警に逮捕されたのが冨田被告だった。
2021年6月にSNSアプリを通じて宮崎さんと知り合った冨田被告は、宮崎さんの自宅を何度か訪れ酒を飲むような関係になっていた。宮崎さんの遺体が発見される3日前の9月3日にも、冨田被告はレンタカーで宮崎さんの自宅を訪れていた。彼女が死に至らしめられたのも、この日だったとされている。当初、冨田被告は殺人罪で逮捕されたが徐々にトーンダウン。最終的には「殺意を認定できない」として傷害致死で起訴された。

控訴審の判決が言い渡された14日、法廷には30名ほどの傍聴人が入廷。記者も傍聴したが、足を踏み入れると、すでに法廷には女性のすすり泣く声が響いていた。
声の主は、パーティションで目隠しされた形で法廷に立った宮崎さんの姉だった。
昨年12月25日に「週刊文春」は「文春オンライン」で「『一生刑務所から出さないで』《熊谷27歳女性絞殺事件》被害者の姉が怒りの告白」と題する記事を配信。冨田被告が冤罪を主張し、事件に対して反省の色を見せないことに、強い憤りを感じている宮崎さんの姉の悲痛な叫びを詳報した。姉はこの日、冨田被告に判決が言い渡される瞬間を見届けようと、法廷に足を運んでいたのだ。
程なくして、刑務官に連れられ上下灰色のスウェット姿の冨田被告が入廷する。第1回公判でも見られた長髪は、肩にかかるほどまで伸びていた。
冨田被告は、一瞬、傍聴席に目をやると、証言台に向かい着席した。椅子に深く腰掛け、足を広げて座る姿からは、反省の態度は微塵も感じられない。

開廷後、裁判長が「主文、本件控訴を棄却する」と言い渡した。ほぼ同じタイミングだった。冨田被告は座ったまま、
「おい! 何でだよ!」
と怒声を上げた。
複数の刑務官が一斉に冨田被告に近づき、法廷内に緊張が走る。続けて冨田被告は「説明できんだろうな!」と裁判官らに叫ぶと、パーティションの後ろから、涙声の絶叫が響き渡った。宮崎さんの姉だった。
「『おい』じゃねえよ! ふざけんな! いいかげんにしろよ! 人殺し!」

それに対して、冨田被告は「黙れ、冤罪だろ!」「矛盾してんだろ!」と、裁判官による発言の制止にも構わず、大声で叫び続ける。冨田被告の怒声に宮崎さんの姉の泣き叫ぶ声が重なり、法廷は騒然となった。
続けて、裁判長が控訴趣意について読み上げようとする。ところが、再び冨田被告は「そこがおかしいから言ってんだろ」と、不満げな声で反論を始めた。
それに対して宮崎さんの姉が「おかしくない!」と絶叫。冨田被告は「お前、頭おかしいよ」と泣き叫ぶ姉に暴言を吐いた。すかさず裁判長が「発言しないでください!」と強い調子で2人の発言を制止した。
判決では、一審判決で証拠として提出された訪問看護師の証言、冨田被告が事件の後にLINEのアカウントを一度削除した後に復活させ、被害者である英美さん以外の友達を再度登録していたことなどをもとに控訴棄却の理由を裁判官が述べ、懲役9年の第一審判決を支持した。

法廷には終始宮崎さんの姉の泣き声と荒い息が響き、冨田被告は腕を組み、時折不服そうに首をかしげていた。
そして開廷から約30分後、閉廷が告げられ、冨田被告が退廷を促されると、立ち上がった冨田被告は、傍聴席を見渡して、こう叫んだのだった。
「みなさん、これは冤罪でーす! 裁判所は不都合なことを見ていない!」

宮崎さんの姉は、昨年12月に行われた冨田被告の控訴審第1回公判に合わせて、次のように綴った意見陳述書を用意していた。
〈妹の命を奪った加害者を重く裁き、責任逃れをさせないでほしい。妹の命を奪った加害者を刑務所から出して欲しくないです。人の命を軽く見ないで欲しい。正直なところ、加害者に対する地方裁判所の判決の内容は甘すぎると私は思いました〉
だが、裁判でこれを読む機会は与えられなかった。
控訴審の判決後、改めて宮崎さんの姉に話を聞いた。

「裁判所には再度別の陳述書を提出しましたが、今回の判決でも、読み上げる機会は与えられず、悔しくて、残念な気持ちでいっぱいでした。そんな時、加害者が声を荒げたので、私もこれまで抑えてきた気持ちが爆発してしまいました。裁判中取り乱してしまい、すみません……。私も多くの証言・証拠を見ていますし、これは加害者が主張するような冤罪ではないと思います。傷害致死ということになっていますが、今でも『殺人罪で裁いてほしい、そして罪を認めて償ってほしい』という思いは変わりません」
愛する妹の命を奪われただけでなく、裁判の場で暴言を吐かれた宮崎さんの姉。遺族の心に安らぎが訪れる時は来るのだろうか。
(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)

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