宇宙ビジネスに大ダメージ イプシロン打ち上げ失敗

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民間企業や大学などの人工衛星計8基を搭載した小型固体燃料ロケット「イプシロン6号機」の打ち上げ失敗は、民間小型衛星打ち上げビジネスの受注増を目指していた宇宙航空研究開発機構(JAXA)にとって、極めて大きなダメージとなりそうだ。
宇宙ビジネスは拡大の傾向にある。米金融大手モルガン・スタンレーが公表しているデータによると、2020年の宇宙ビジネス市場の規模は約3780億ドル。40年には、約3倍の約1兆530億ドルに増加する。
特に人工衛星を用いたビジネスでは、多数の小型衛星を運用させるシステムが注目されており、500キログラム以下の小型人工衛星の打ち上げ実績は20年が1190基で19年の約3倍に増えた。
イプシロンはこれまで1~5号機を打ち上げ、いずれも成功。今回の6号機は打ち上げ能力を高めた強化型の最終号機で、大学などの研究機関だけでなく、民間企業の衛星の打ち上げも初めて受注していた。
日本のロケットの打ち上げ失敗は、平成15年11月のH2Aロケット6号機以来。海外に比べて費用は高いが、失敗のない安心感が日本のロケット打ち上げの最大の売り物だった。しかし今回、「失敗しない」という神話は崩壊した。
イプシロンは将来、民間に移管して商業打ち上げに参入することを目指してきた。そのため、打ち上げ成功を積み重ねることで技術を確立して競争力を高め、価格面だけでない総合的な信頼を得ることが重要だったが、今回の失敗により、今後の宇宙ビジネスの展望を描けなくなった。

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