時間外労働207時間、100日連続勤務…「専攻医」の過酷すぎる労働環境 遺族が提訴

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2022年に神戸市東灘区の病院「甲南医療センター」に勤務していた医師の高島晨伍さん(当時26)が自殺した問題で遺族が2日、病院と院長に計約2億3000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
訴状によると、高島さんは22年4月からは消化器内科の専門医を目指す「専攻医」として研修を受けながら診療をしていた。しかし、診療のほかに学会の準備などによる長時間労働でうつ病を発症し、同年5月17日に神戸市の自宅で自殺した。
病院側は長時間勤務は自己研さんも含まれており、「過重労働は強いていない」と主張していた。西宮労働基準監督署は23年6月、高島さんが亡くなる直前の1か月間の時間外労働は207時間にのぼり、約100日間の連続勤務があったとして労災認定。同年12月、労働基準法違反容疑で院長らを書類送検した。
一般的に聞き慣れない専攻医だが、専門研修プログラムを受けている医師を指す。初期研修として2年間さまざまな診療科を経験し3年目以降、専攻医として専門医取得を目指すことになる。その業務は激務だ。
「診療に加えて、若い先生には救急などの当直当番が回ってきます。患者がひっきりなしだったり、患者の容体が急変したりすれば休む暇はありません。当直は夕方から翌朝8時までなんですが、医局長の指示があればそのまま関連の病院に行くことになります。『今日、(当直)明けなんだよね』と言ってる先生もたくさんいます。本当にいつ寝てるんだろうと思います」(医療関係者)
さらに専攻医は診療に加え、高島さん同様に論文作成など学会の準備に追われる。
激務に拍車をかけているのが医師不足だ。「病院は外部の先生で成り立っている感じ。診療のない日は医局長の指示で系列などの外病院に行くので休みはありません。病院によっては当直のアルバイトの時給がいいので志願する先生もいます。寝てない自慢をする先生もいますが、そういう人たちじゃないとできない仕事なのかもしれません」(同)。今回の提訴が医療界に一石を投じるかもしれない。

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