「盗賊団が大集結」「兵器による人工地震」被災地で“フェイクニュース”が拡散される理由

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《全国から能登半島に盗賊団が大集結中》
【写真】東日本大震災時の岩手県を震災後の石川県と紹介…実際に投稿された誤情報
《今回の地震は兵器によって起きた“人工地震”だ》
1月1日に起きた能登半島地震の直後から、SNSではこのような“情報”が拡散された。もちろん、これらは何の根拠もない誤情報“フェイクニュース”だ。
「昔からこういった、誤情報・ニセ情報といったものは多かったのですが、ここ最近で世の中の認識が高まってきたことによって、よりクローズアップされている面が強いと思います」
と話すのは、『日本ファクトチェックセンター』(以下、『JFC』)の編集長、古田大輔さん。『JFC』はSNSなどで流れる情報について、事実の検証に取り組んでいる。
冒頭のような誤情報、ほかにはどんなものがあるのか、古田さんはこう続ける。
「災害発生時に多いのは、実際と異なる被害の投稿と、不確かな救助要請です。地震が起きるたびに“津波が来たぞ!”と東日本大震災の映像を流したり、もう救助されているのに“友達が閉じ込められている”と、リツイート(リポスト)され続けたり。
そして定番は、犯罪集団が大挙して被災地に向かっている、という根拠のない噂ですね」
このように災害が発生した後、流れてくる誤情報は時系列で変わってくる。
「避難所での生活が長引いている中で“避難所で子どもが虐待されている”といった情報が流れやすくなります」(古田さん、以下同)
こうした情報は、誰がどんな目的で流すのだろうか?
「故意犯、確信犯、愉快犯の3つに分けることができます。故意犯というのは、それが誤っていると知りながら拡散する事例。投稿の閲覧数に応じたお金を稼ぐことなどが目的です。
次が確信犯。その情報が正しいと信じている人たちです。例えば、冒頭の人工地震の情報がそれに当たりますね。世の中に知られていない“事実”を広めなくてはいけない、という正義感に駆られているわけです。そして愉快犯は人がだまされているのを見て楽しみたい、注目を集めたいという動機になります」
インターネットが普及し、誰でも簡単に情報を発信できるようになった現在。正否が入り交じった情報を、どのように判別すればいいのだろう。
「大切なことは、メディアの特性を理解し、信頼できる情報を見分けること。メディアリテラシーという能力です。私たちのサイトでも『リテラシー講座』として連載をしているのですが、メディアを活用する能力のことで、流れている情報を鵜呑みにするのではなく、吟味する思考を持ちましょうと。
例えば、志賀原発から1万9800リットルの油が海に流れた、というニュースがありましたが、志賀原発のサイトを見ると、確かに油は漏れ出しているが、海面に漏れたのは6・1リットルだと確認されたと出ているんです。
ニュースの根拠になっているものはどこなのか? まず入ってきた情報を疑って、正否を見極めるようにすることですね」
流れてきた情報を焦って拡散するのではなく、疑うことから始めることが“フェイクニュース”の撲滅につながるのだ。

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