「カキ」「下手くそ」「鬱陶しい」黙秘する元弁護士を検事が一方的に罵倒する動画がYouTubeにアップ「威圧的な取り調べが問題になることはあるが、ここまで…」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「ガキだよね」
【画像】「人質司法」と呼ばれることもある日本の制度
法廷に検事の罵倒が響いた。
犯人隠避教唆罪で有罪が確定した元弁護士が違法な取り調べを受けたとして国に損害賠償を求めた訴訟。その取り調べ映像が1月18日、民事訴訟としては異例ながら法廷で再生され、その後弁護団により、YouTubeにもアップされた。
弁護団によりYouTubeにアップされた動画
「元弁護士の江口大和氏は黙秘権を行使したのに、起訴されるまで56時間の取り調べを受けた。これが黙秘権の侵害に当たるとして訴えています。取り調べの録音・録画映像が再生されることは刑事事件ではままあることですが、民事訴訟ではかなり異例です」(司法担当記者)
江口氏は他人の車を無免許運転して事故を起こし、助手席に乗せた会社の同僚を死亡させた男の弁護を担当。男に対し、実際は借りた車を「勝手に持ちだした」とする嘘の供述をさせたとして、犯人隠避教唆の容疑で逮捕、同罪で起訴され、有罪が確定している。
「この時の取り調べを担当したのは、横浜地検特別刑事部の川村政史検事です。特刑部は東京地検でいう特捜部にあたる組織。川村検事は特捜部経験もあります」(前出・記者)
法廷で再生されたのは56時間のうちの約13分間の録音・録画。テーブルをはさんで目をつぶって黙秘する江口氏と検事が座りながら対峙し、検事が一方的に話しかける。異様な空気が伝わってくる。
「ガキだよね。あなたってなんかね、子供なんだよね」
検事はそう言うと江口氏の弁護士活動を批判。「AかBか選択しないといけなくなると、なぜか必ず間違う」と続けた。
さらに有罪になれば弁護士資格を失うことを念頭に「刑事弁護を趣味でしかやれない人」「弁護士自体、資格がない」とたたみかけたかと思えば、「下手くそなんだよ、やり方がね。全然怖くないもん。鬱陶しいだけ」と上から目線でたたき続け、時に嘲笑も交える。

極め付きは幼少時代への言及だろう。
「あなたの中学校の成績見てたら、あんまり数学とか理科とか理系的なものが得意じゃなかったみたい」と指摘し、「論理性がさあ、なんかずれてんだよなあ」と現在に引きつけてみせた。
司法関係者は「検事の威圧的な取り調べが問題になることはままあるが、ここまで詳細に、しかもネットで公開されるのは前代未聞」と話す。
その後の会見で「サンドバッグのように一方的にひどい発言を受け、つらかった。私が受けたのは取り調べではなく、精神的拷問だ」と訴えた江口氏。
国側は訴訟で「真実を供述するよう説得するもの」だとして、違法性を否定しているが、果たして裁判所はどんな判断を下すのか。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年2月1日号)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。