立件の目安は不記載「4000万円超」、池田議員の身柄拘束の決め手は「証拠隠滅の恐れ」

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自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る事件は、東京地検特捜部が7日、派閥から高額のキックバック(還流)を受けていた池田佳隆衆院議員(57)を逮捕し、全容解明へヤマ場を迎えた。
政治資金規正法違反容疑による国会議員の身柄拘束は前例が少ないが、特捜部は「証拠隠滅の恐れが高い」と判断した。(社会部 萬屋直、坂本早希)
■立件基準
特捜部は先月以降、還流分を政治資金収支報告書に記載していない議員側を捜査してきたが、不記載額は数万円から5000万円超まで幅広く、立件対象の「基準」を設定する必要があった。関係者によると、検察内部では「4000万円超」を立件の一つの目安としたとされる。
安倍派議員で該当するのは、池田容疑者のほか、大野泰正参院議員(64)、谷川弥一衆院議員(82)。ただし、過去の同種事件で議員逮捕に至ったのは虚偽記入額が1億円以上の坂井隆憲・元衆院議員ら少数で、数千万円規模では在宅のまま捜査し、薗浦健太郎・前衆院議員のように略式起訴とすることが多かった。
こうした中で池田容疑者と政策秘書・柿沼和宏容疑者(45)を逮捕した理由について、ある検察幹部は「具体的な証拠隠滅の恐れが認められる」と説明した。
資金管理団体「池田黎明(れいめい)会」は、議員本人への任意の事情聴取が始まる前の先月8日付で収支報告書を訂正した。その際、池田容疑者側は還流分について「党から派閥を経て支払われる政策活動費と認識し、記載していなかった」と釈明。池田容疑者らも任意の捜査段階で同様の説明をしたが、検察内部では「派閥から還流しているのに『党からのカネ』とするのは無理がある」(別の幹部)と疑問視されていた。
違法性の認識を否定する両容疑者に対し、特捜部は在宅捜査のままでは口裏合わせなど証拠隠滅を図る可能性が高いと判断。今月下旬にも召集される通常国会への影響をにらみ、異例の休日の逮捕に踏み切った。
■派閥幹部の関与は
「高額還流」に加え、捜査で焦点となったのが、安倍派の収支報告書への不記載や虚偽記入に派閥幹部が関与していたかどうかだ。特捜部は歴代事務総長らから任意で事情を聞いており、派閥内での指揮系統について慎重に捜査している。
同派ではノルマ超過分を議員側に還流する運用が長年続いていたとされるが、2022年4月、会長だった安倍晋三・元首相が廃止方針を示したことが判明。幹部らに方針が伝えられ、同5月のパーティーで還流廃止が決まったとされる。
ところが一部の議員から還流継続を求める声が上がり、安倍氏が同7月の銃撃事件で亡くなった後に派閥幹部らが対応を協議し、還流を続けることになった。特捜部は還流廃止の方針が撤回されるまでの協議に着目し、派閥幹部らへの聴取では、協議での発言内容などを確認したという。
関係者によると、派閥幹部は還流分の不記載への関与を否定している。特捜部は派閥の会計責任者を同法違反容疑で立件する方針を固めているが、幹部との「共謀」を示す客観的な証拠があるかどうかが今後のポイントとなる。

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