学習端末「よく机から落ちる」「こんなに壊れるとは」…自治体にのしかかる修理費

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学校で学習用デジタル端末が小中学生に1人1台配布されて1年以上たち、端末の故障が相次いでいる。
端末を落とすなどの事故が目立ち、修理費が年間数百万円に上る自治体もある。今後、機器の更新でも自治体や保護者の負担が生じる可能性もあり、現場は対応を迫られている。
■4か月で40台
「こんなに壊れるとは予想しなかった」。東京都の区立小学校の男性副校長(48)は驚く。端末は全校約650人に配られ、昨年春から本格的に使い始めた。1年目の故障は約60台だったが、今年度は4~7月だけで約40台に上った。故障の多くは学校や自宅で落としたり、ぶつけたりしたことが原因だ。
学校の机には、教科書、ノート、文具に加え、端末も置かなければならなくなった。都内の公立小学校で6年を担任する女性教諭は「机に空きスペースがなく、よく端末が机から落ちる」という。「来年の1年生が使うので大事に使って」と呼びかけるが、落としてしまう子供は減らない。少数だが、わざと壊す子もおり、昨夏には小5男子がキーボード部分をはがしてしまった。
■保護者負担も
国は2020年度までに小中学生に端末を配備した際、1台あたり4万5000円を自治体に補助したが、修理費は対象外だ。
小中学校で端末約1万1000台を使う埼玉県久喜市は今年度の当初予算で、修理費用として75台分約260万円を計上した。しかし、4月に200台程度の故障がわかり、予算に約770万円を追加した。このままのペースで故障が増えれば年間の修理費は1000万円を超えそうだ。
保護者に修理費を請求するかは判断が分かれている。
都内の区立小では昨年、端末をなくした児童の保護者には約5万円を請求したが、普段から予想外の行動の多い高学年男子が教室で投げて壊したケースでは請求を見送った。学校関係者は「教員が気を付けるべきだと言われてしまうと反論できない」と打ち明ける。
広島県尾道市では19~21年度、市立学校で約100件故障があり、市は約80万円を負担。故意に壊した一部の事例では、保護者に負担を求めた。兵庫県高砂市は、わざと壊せば弁償を求めることもある、と保護者に伝えるが「1人で何台も壊すようなケースを防ぐためで、原則は市の負担」という。大阪府箕面市も「保護者に『使いたくない』と思われないよう、原則、市で負担する」としている。
■保険でカバー
端末事故をカバーする保険も登場した。保険代理店「スクールキーパー」(横浜市)は21年1月から端末事故の保険を販売。保険料は1台年1100円程度が主流で多くはPTAなど保護者負担だ。約300の学校・自治体が端末約5万台分を申し込み、これまでに約700台を補償した。山下泰徳社長は「学校と保護者間のトラブル防止の意味が大きいようだ」と話す。
学校での端末利用に詳しい国際大学の豊福晋平准教授(教育工学)は、「故障の原因によっては保護者負担は仕方ないが、自治体や学校が保護者とよく話し合い費用負担のルールを決めておく必要がある。また、国は導入で終わりとせず、故障への対応や更新費について、一定の方針やガイドラインを示すべきだ」としている。
■更新費用 巨額に
一般に端末は5年程度で更新が必要だが、1人1台配布された学習用端末の更新費用を誰が負担するか、文部科学省は方針を明らかにしていない。国の端末整備だけで約3000億円かかっており、更新費は数千億円程度に上るともされる。
川崎市では、端末約11万7000台をリース契約し、市は約60億円、国も30億円弱を負担するが、25年度末の契約期間終了で、更新が必要だ。自治体は頭を悩ませるが、文科省の担当者は「まだ何も決まっていない」としている。

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