「他人の家のゴミ袋をチェックする」迷惑老人。なぜか近隣住民から感謝されるようになるまで

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存在感を失いつつある町内会をはじめ、地域のつながりは希薄化し続けている現代。「向こう三軒両隣」で育った年配層と、プライバシーを重視する若年・壮年の世代間で、軋轢が生まれるのもやむなしだろうか。 某地方都市に住む稲尾恵さん(仮名・42歳)の近所には、“地域密着”系のトラブルメーカーがいたという。
◆「他人の家のゴミ袋をチェックする」のが日課
「近所に通称『秘密警察』の老人が住んでるんです。その人を仮に藤原さんとしますが、藤原さんはとにかくルールにうるさくて。燃えるゴミの袋に1つでもプラスチック製品が混じっていれば、さあ大変。即座に怒鳴り込まれてしまいます。捨てるところを監視するばかりか、ゴミ袋を開けてチェックするまでが日課なんですよ」 そんな藤原さんは、回覧板にも目を光らせる。
「持ち回り制の町内会の班長を、なんと藤原さんは10年以上も歴任。藤原さんが決めた日数までに回覧板が戻ってこないと、家々を回るんです。止めている家庭を見つけては『さっさと回せ!』と怒号を響かせます」
◆警察に通報しても効果がなかった
なかには神経質な監視に耐えかね、反発する家もあるが……。
「怒鳴り込んでくる藤原さんを警察に通報した家もありました。ですが、藤原さんに『俺はルールを守ってほしいだけだ』と熱弁されては、警察も注意することしかできなかったようなんです。なんの効果もありませんでしたね」
警察でさえ打つ手のなかった藤原さんの振る舞い。そこに雲行きを変える人物が突如として現れる。
「うちの隣に築年数が半世紀以上経つアパートがあるんですが、そこに中年女性が引っ越してきたんです。ガリガリに痩せていて猫背で、第一印象は『カマキリ』。ゴミ捨て場で会った時などに挨拶しても、決まって無視でした。いつも同じワンピースを着て、町中を早歩きで歩き回っていて……。完全に謎の人物でしたね」
◆なぜか盗難が頻発するように…
風変わりと思ったところで、それ以上のことは考えていなかった稲尾さん。しかし「カマキリ」が暮らすようになって間もなく、町に異変が起きるようになった。
「盗難が頻発するようになったんです。外に干していた服や、玄関先に置いてあった子供の自転車、庭に置いてあったバーベキューセットなど、あらゆるものに被害がありました。お祭りで使う神輿についていた飾りもなくなってしまって」
住民のあいだで問題が共有されると、ひとりの人物が浮かび上がった。盗難があった前後での「カマキリ」目撃談が、続々と寄せられたのである。
「盗みを働いては売り払い、そのお金で生活しているのではないかと噂されていました。防犯カメラを仕掛けるようになった家もありましたが、注意深く確認しているようなんです。対策のある家には盗みに入らないので、決定的な証拠は出ないまま。盗難被害は増え続ける一方でした」
◆毒を以て毒を制すことに成功
そんなある日、「カマキリ」が住むアパートからけたたましい声が町に響いた。
「藤原さんが例の女性の部屋のドアを叩いて叫んでいたんです。『おい! あんた吉田さんの家の玄関にあった置き物持っていっただろ! 見てたんだからな!』と。はじめ女性は無視を決め込んでいましたが、藤原さんのしつこさには敵わなかった(笑)。わけのわからない叫び声を上げながら部屋を出るなり、藤原さんに食ってかかったんです」
秘密警察 vs カマキリの大一番の対決を、地域の住民が固唾を飲んで見守る。
「ご近所さん観察に余念のない藤原さんが、部屋のなかで証拠を見つけたんです。『やっぱり吉田さんの置物があるじゃないか!!』と、大騒動の果てに警察も駆けつけ、女性はついにお縄になりました。藤原さんは一躍ヒーローとなりましたね」
これまで煙たがられはしても、感謝はされなかった藤原さん。地域から賞賛を受けて満足したのか、監視の目も少しゆるくなったのだとか。
<TEXT/和泉太郎>
―[キレる老人の恐怖]―

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