新聞、まもなく消滅へ…読売、朝日を辞めた記者が「ヤバすぎるマスコミの内情」を明かす

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「大人は毎朝、新聞を読むのが当たり前」そんな時代はもう、とっくに過ぎ去ってしまった。70代の8割がスマホを持つ世の中で、巨体を維持できなくなった彼らは、どこへ向かおうとしているのか。
「読売はいまだに体育会系の社風で『辞めるヤツは、ついてこれないから辞めるんだ』と、退職者が出たら悪口を言うのが習いでした。ところが最近は、そんなことを言っていられないほどの勢いで辞める人が増えている。東京本社では自分も含めて同期の3分の1ほどが辞めました。
今年は記者だけでなく、購読者データやデジタル広告を管理する新社内システム『yomiuri ONE』の開発リーダーを務めた、デジタル部門のエースTさんが辞めて広告系の会社に移り、激震が走っています。まだ読売の看板を信奉している役員連中は、激怒していたようですが」
こう明かすのは、最近読売新聞を退職した30代の記者だ。「マスコミ界のドン」渡邉恒雄主筆の威光のもと、戦後を通じて全国紙トップの規模を誇り、2001年には販売数1030万部に達した同社だが、いまでは優秀な人材から毎年クシの歯が抜けるように退職している。この記者が続ける。
「特に東京経済部の中堅記者は、PR会社、コンサル、メーカーの広報など、取材で知り合った企業に相談してそのまま転職してしまうケースが多い。みんな『新聞社はガラパゴスだから、記者が持っているスキルなんて他の会社では通用しない。40歳をすぎたら、もうあと戻りできなくなる』と焦っています。
Photo by gettyimages
それで最近、ようやく管理部門が離職対策に動き始めたらしい。辞めた社員にまで『ご指定の場所にお伺いしますから、辞めた理由をお聞かせいただけませんか』『戻ってくる気はありませんか』と面会を申し出ているんです。でも『お先真っ暗だから辞めました』なんて、正直に言うはずもない。現役社員からも失笑が漏れています」
新聞業界が「斜陽」と言われ始めて20年以上が経つが、この5年でその崩壊が加速している。
全国紙・地方紙すべてをあわせた新聞発行部数のピークは1997年の5376万部で、2017年までの減少率は多いときでも年間3%台だった。それが2018年、いきなり5・3%のマイナスとなり、そこからは毎年5~7%ずつ減り続けている。昨年10月時点の部数は3084万部で、2000万部台への転落が確実となった。元日本経済新聞証券部デスクで、2011年に退職しフリージャーナリストになった磯山友幸氏が言う。
「2018年からの減少数は毎年およそ200万~270万部で、これは日経や毎日新聞がまるごと一社消えているのと同じです。『紙の新聞の時代は終わった』ということが、この5年でもはや明らかになっている。早ければあと15年ほどで、紙の新聞はゼロになる計算です」とりわけ、いちじるしい部数低落を見せているのが朝日新聞だ。2022年の販売数は、じつに前年比9・5%減の428万7575部。1998年には837万部を超えていたのに、四半世紀で半減している。記事を潰すデスクと幹部朝日の落ち込みは、ネットやスマホの普及だけが理由というわけではない。現場の記者たちは萎縮し、のびのびと記事を書けなくなって、紙面は活力を失ってゆくいっぽうだ。同紙で大阪社会部記者やドバイ支局長を務め、2022年にフリーになった伊藤喜之氏が語る。「私は今年3月、参議院議員でユーチューバーのガーシー(東谷義和)氏を取材した『悪党』という本を出しました。そのとき『伊藤は在職しながらガーシー本を出版できなかったから朝日を辞めた』と一部で噂されましたが、それは違う。もともと彼のロングインタビューを朝日で掲載しようと提案したのが、上司に拒まれ、それをきっかけに会社を辞めて書籍にまとめることにしたのです。その時に問題だと感じたのは、原稿が『危なそうだ』というフワッとした印象だけで記事をボツにする上司の姿勢です。具体的に『この原稿はここが問題だから、こう直せ』と言われるならわかります。でも、当時のデスクは『ガーシーの一方的な言い分』と否定し、さらに上の幹部も『ガーシー取材は特派員の仕事じゃない』と言ってきた。Photo by gettyimages暴露で社会現象を起こし、その後に国会議員にまでなる彼には様々な報じるべきポイントがあったはずです。あの程度の記事で何を怯えるのか、とショックでした。今の朝日には『脇を締める』という言葉ばかりはびこり、戦えるネタでもリスクを恐れる。そんな組織では記者たちの士気が持たないでしょう」「ネットで読まれる記事を書け」世間、とくにネット上では「マスコミは権力者からカネをもらったりメシを食わせてもらったりして、報道内容を恣意的にコントロールしているのだ」といった陰謀説がよくウケる。しかし実態は、そんなに「ご立派」なものではない。デスクや局長が「この記事を出したら炎上しそうだ」とか「自分の出世に響きそうだ」といった保身、はたまた「なんとなく気に食わない」といった適当な理由で記事を止める。逆に「知り合いに頼まれたから、この人のインタビューを載せよう」と、軽いノリで紙面を割く。毎朝数百万部を刷る大新聞でも、その内容は幹部たちの「胸先三寸」で決められているにすぎないのである。加えて、このところは「ネットで読まれる記事を書け」という号令もかまびすしく、若手記者たちを苦しめている。ごく最近、朝日新聞を辞めた30代の記者が語る。「いまは朝日に限らず、どこの新聞社でも『コンバージョン』つまり『その記事をネットで読んだ人が、どのくらい有料購読してくれたか』を記者の評価基準にしていますが、朝日はとくに酷い。一次情報よりも、SNSで出回っている『ちょっとイイ話』や『生活ネタ』『炎上ネタ』を膨らませた記事のほうがコンバージョン率が高いので、皆そっちに走るようになっているのです。そういう柔らかい記事が出しやすい持ち場の記者はいいですが、堅い分野を担当している記者はどうしようもない。あまりにも不公平です」実際、朝日新聞デジタルのトップページでは速報のすぐ下に「特集」「オピニオン」「暮らしと話題」が載っており、他社とくらべて事件などのストレートニュースが少なく見える。かといって、時間と手間をかけたスクープや調査報道が多いというわけでもなく、識者や学者へのインタビューを増やしてお茶を濁している印象を受ける。こうした中、窮地の朝日新聞をはじめ、他社の苦境を見ながら「我々が唯一の全国紙になる」と豪語するのが読売だ。その詳細を【新聞「大崩壊」のあと、読売だけが生き残る…ネットに敗れたマスコミの末路と「ささやかな希望】でひきつづきお伝えする。「週刊現代」2023年12月23日号より
「2018年からの減少数は毎年およそ200万~270万部で、これは日経や毎日新聞がまるごと一社消えているのと同じです。『紙の新聞の時代は終わった』ということが、この5年でもはや明らかになっている。早ければあと15年ほどで、紙の新聞はゼロになる計算です」
とりわけ、いちじるしい部数低落を見せているのが朝日新聞だ。2022年の販売数は、じつに前年比9・5%減の428万7575部。1998年には837万部を超えていたのに、四半世紀で半減している。
朝日の落ち込みは、ネットやスマホの普及だけが理由というわけではない。現場の記者たちは萎縮し、のびのびと記事を書けなくなって、紙面は活力を失ってゆくいっぽうだ。同紙で大阪社会部記者やドバイ支局長を務め、2022年にフリーになった伊藤喜之氏が語る。
「私は今年3月、参議院議員でユーチューバーのガーシー(東谷義和)氏を取材した『悪党』という本を出しました。そのとき『伊藤は在職しながらガーシー本を出版できなかったから朝日を辞めた』と一部で噂されましたが、それは違う。もともと彼のロングインタビューを朝日で掲載しようと提案したのが、上司に拒まれ、それをきっかけに会社を辞めて書籍にまとめることにしたのです。
その時に問題だと感じたのは、原稿が『危なそうだ』というフワッとした印象だけで記事をボツにする上司の姿勢です。具体的に『この原稿はここが問題だから、こう直せ』と言われるならわかります。でも、当時のデスクは『ガーシーの一方的な言い分』と否定し、さらに上の幹部も『ガーシー取材は特派員の仕事じゃない』と言ってきた。
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暴露で社会現象を起こし、その後に国会議員にまでなる彼には様々な報じるべきポイントがあったはずです。あの程度の記事で何を怯えるのか、とショックでした。今の朝日には『脇を締める』という言葉ばかりはびこり、戦えるネタでもリスクを恐れる。そんな組織では記者たちの士気が持たないでしょう」
世間、とくにネット上では「マスコミは権力者からカネをもらったりメシを食わせてもらったりして、報道内容を恣意的にコントロールしているのだ」といった陰謀説がよくウケる。しかし実態は、そんなに「ご立派」なものではない。
デスクや局長が「この記事を出したら炎上しそうだ」とか「自分の出世に響きそうだ」といった保身、はたまた「なんとなく気に食わない」といった適当な理由で記事を止める。逆に「知り合いに頼まれたから、この人のインタビューを載せよう」と、軽いノリで紙面を割く。毎朝数百万部を刷る大新聞でも、その内容は幹部たちの「胸先三寸」で決められているにすぎないのである。
加えて、このところは「ネットで読まれる記事を書け」という号令もかまびすしく、若手記者たちを苦しめている。ごく最近、朝日新聞を辞めた30代の記者が語る。
「いまは朝日に限らず、どこの新聞社でも『コンバージョン』つまり『その記事をネットで読んだ人が、どのくらい有料購読してくれたか』を記者の評価基準にしていますが、朝日はとくに酷い。
一次情報よりも、SNSで出回っている『ちょっとイイ話』や『生活ネタ』『炎上ネタ』を膨らませた記事のほうがコンバージョン率が高いので、皆そっちに走るようになっているのです。
そういう柔らかい記事が出しやすい持ち場の記者はいいですが、堅い分野を担当している記者はどうしようもない。あまりにも不公平です」
実際、朝日新聞デジタルのトップページでは速報のすぐ下に「特集」「オピニオン」「暮らしと話題」が載っており、他社とくらべて事件などのストレートニュースが少なく見える。
かといって、時間と手間をかけたスクープや調査報道が多いというわけでもなく、識者や学者へのインタビューを増やしてお茶を濁している印象を受ける。
こうした中、窮地の朝日新聞をはじめ、他社の苦境を見ながら「我々が唯一の全国紙になる」と豪語するのが読売だ。その詳細を【新聞「大崩壊」のあと、読売だけが生き残る…ネットに敗れたマスコミの末路と「ささやかな希望】でひきつづきお伝えする。
「週刊現代」2023年12月23日号より

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