有料化に分散開催… 530万人が足運んだ「ルミナリエ」はどこへ?

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冬の夜空を無数の光が照らし出す阪神大震災の追悼イベント「神戸ルミナリエ」が様変わりする。初めて1月に開催されるほか、会場の分散化や象徴として親しまれてきた光の回廊の有料化も導入される。新型コロナウイルス禍を経て4年ぶりに復活する光の祭典に何が起きているのか。
【写真】神戸ルミナリエ、主に変更した点 ルミナリエは犠牲者の鎮魂と復興を願い、震災が起きた1995年から毎年12月に神戸市中央区の旧外国人居留地や東遊園地で開かれてきた。2020年以降はコロナ禍を理由に3年連続で規模を縮小した代替イベントを実施してきた。

この追悼行事に足を運ぶ遺族らは柔らかな光を放つ電飾に最愛の人との記憶を巡らせ、街の復興を思い描いてきた。一方で、人々を魅了する光の作品群は観光イベントとしての注目を集め、530万人の来場者を記録した年も。混雑が目立ち、鎮魂の趣旨が薄れているという声もあった。深刻な「懐事情」 主催する組織委員会(会長・久元喜造市長)によると、新たなルミナリエの開催期間は24年1月19~28日の10日間に変更される。震災発生当日の1月17日に近づけることで、鎮魂の意味合いをより強める。 会場に海沿いのメリケンパークも加え、約50点の作品や装飾は旧居留地を中心に3カ所に分散させて混雑の緩和につなげる。 光のドーム「カッサアルモニカ」(高さ約11メートル)は東遊園地で従来通り見られる一方、祭典のシンボルとして人気を集めてきたアーチ状の光の回廊「ガレリア」は、旧居留地から南に600メートル離れたメリケンパークに移る。 ガレリアの全長は約270メートルから70メートルに縮小するほか、海風対策でアーチの高さも最大15メートルでこれまでより5メートルほど低くなる。 そして、観覧の仕組みが大きく変わる。従来はアーチの下を歩きながら無料で楽しむことができたが、今回からは有料の入場券(前売り500円、当日1000円)が必要だ。1時間ごとに入場者数の上限を設け、回廊にとどまることもできる。 分散化と有料化の背景には、運営を巡る「深刻な懐事情」もある。 収入源の柱の企業協賛金は96年に5億1500万円集まったが、その後は減少に歯止めがかからず、前回19年は過去最低の1億8700万円まで落ち込んだ。祭典の継続が危ぶまれ、開催日数の短縮などを実施した経緯もある。 5億円程度の運営費のうち警備費が1億3000万円かかっていたが、会場の分散化で大規模な交通規制を実施しないことから約9000万円まで圧縮できる。ガレリアの有料化も資金調達の一環で、震災から30年を迎える25年を見据え、持続可能な祭典を目指しているという。「金もうけに走るのか」 しかし、一連の見直しに賛否が交錯している。組織委事務局には電話やメールで「祭典を続けていくためには有料化はやむを得ない」という声が届く一方、「本来は鎮魂の場なのに金もうけに走るのか」との批判も寄せられている。 1月17日の追悼行事に関わるNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯(あか)り」の藤本真一代表理事はルミナリエの日程変更に理解を示すが、「一連の対応は資金繰りの話に終始しているように映る。どんな祭典を目指したいかというメッセージも示さないと、多くの人に受け入れられる追悼行事にならないのではないか」と語った。【山本康介】
ルミナリエは犠牲者の鎮魂と復興を願い、震災が起きた1995年から毎年12月に神戸市中央区の旧外国人居留地や東遊園地で開かれてきた。2020年以降はコロナ禍を理由に3年連続で規模を縮小した代替イベントを実施してきた。
この追悼行事に足を運ぶ遺族らは柔らかな光を放つ電飾に最愛の人との記憶を巡らせ、街の復興を思い描いてきた。一方で、人々を魅了する光の作品群は観光イベントとしての注目を集め、530万人の来場者を記録した年も。混雑が目立ち、鎮魂の趣旨が薄れているという声もあった。
深刻な「懐事情」
主催する組織委員会(会長・久元喜造市長)によると、新たなルミナリエの開催期間は24年1月19~28日の10日間に変更される。震災発生当日の1月17日に近づけることで、鎮魂の意味合いをより強める。
会場に海沿いのメリケンパークも加え、約50点の作品や装飾は旧居留地を中心に3カ所に分散させて混雑の緩和につなげる。
光のドーム「カッサアルモニカ」(高さ約11メートル)は東遊園地で従来通り見られる一方、祭典のシンボルとして人気を集めてきたアーチ状の光の回廊「ガレリア」は、旧居留地から南に600メートル離れたメリケンパークに移る。
ガレリアの全長は約270メートルから70メートルに縮小するほか、海風対策でアーチの高さも最大15メートルでこれまでより5メートルほど低くなる。
そして、観覧の仕組みが大きく変わる。従来はアーチの下を歩きながら無料で楽しむことができたが、今回からは有料の入場券(前売り500円、当日1000円)が必要だ。1時間ごとに入場者数の上限を設け、回廊にとどまることもできる。
分散化と有料化の背景には、運営を巡る「深刻な懐事情」もある。
収入源の柱の企業協賛金は96年に5億1500万円集まったが、その後は減少に歯止めがかからず、前回19年は過去最低の1億8700万円まで落ち込んだ。祭典の継続が危ぶまれ、開催日数の短縮などを実施した経緯もある。
5億円程度の運営費のうち警備費が1億3000万円かかっていたが、会場の分散化で大規模な交通規制を実施しないことから約9000万円まで圧縮できる。ガレリアの有料化も資金調達の一環で、震災から30年を迎える25年を見据え、持続可能な祭典を目指しているという。
「金もうけに走るのか」
しかし、一連の見直しに賛否が交錯している。組織委事務局には電話やメールで「祭典を続けていくためには有料化はやむを得ない」という声が届く一方、「本来は鎮魂の場なのに金もうけに走るのか」との批判も寄せられている。
1月17日の追悼行事に関わるNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯(あか)り」の藤本真一代表理事はルミナリエの日程変更に理解を示すが、「一連の対応は資金繰りの話に終始しているように映る。どんな祭典を目指したいかというメッセージも示さないと、多くの人に受け入れられる追悼行事にならないのではないか」と語った。【山本康介】

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