「街全体が病んでいる」ヤバいのは歌舞伎町だけじゃない!事故物件公示サイト「大島てる」が示す「意外な地域」

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連日、新宿・歌舞伎町ではさまざまな問題が起き続けている。特に深刻なのが、この街で自ら命を絶つ若者たちだ。事故物件を表すサイトとして有名な『大島てる 事故物件公示サイト』には事故物件の炎マークが密集している。だが、同サイト運営者の大島てるさんは「治安は良くなっている」と述べる。その理由について前編記事『「まるで地獄絵図」歌舞伎町が包まれる事故物件の「炎」…「治安は良くなっているんです」と管理人・大島てるが語る理由』より引き続き、事件ジャーナリストの千葉春子氏が聞いた。

街全体が病んでいる「現在の歌舞伎町にある事故物件は、殺人事件などで起きたものよりも自殺が増えているんです。自殺という行為自体は、本来犯罪ではありません。ですが、自殺者が多いところには住みたくないという思いを持っている人は少なくない。自殺者数の増加で『街が物騒になっている』ということは表現としては正しくないですよね」そう話すのは、地図上で事故物件の場所を示す、『事故物件公示サイト 大島てる』を運営する大島てるさんだ。同サイトでは全国の事故物件の情報を炎マークで公示し、共有している運営者の大島てるさんはここ数年の歌舞伎町をどう見ているのか。事故物件公示サイト「大島てる」よりまず、大島さんが感じているのはそこに集まる人たちのメンタルの問題。「街全体が病んでいる」と語る。「歌舞伎町には前世紀の時点ですでに危険なイメージがありました。ですが、ここのところ(事故物件を示す)炎マークは質が変わってきているんです。2001年に44名が亡くなるビル火災の大惨事が起きました。弊サイトは創設が2005年であるため、掲載対象外とさせていただいております。ただ、この火災は放火が原因であるとは断定されていません。したがって、失火の可能性も残り、『殺された』とは言い切りづらく、自殺同様、『治安が悪い』との表現が適切でなく感じるというわけです。それらとは別に、例えばぼったくり等はいかに多くとも直接死人が出ませんので、やはり事故物件増にはつながりません」(大島さん、以下「」も)自殺は連鎖するさらには、命を絶つ方法も変化しているという。「2000年代はラブホテルでの硫化水素自殺が続いた時期がありました。ですが今の歌舞伎町では飛び降り自殺が圧倒的に多いです。特にホストの売り掛けを苦にしたとされる女性の飛び降りが大きく報じられてから増えた印象がありますね」大島てるさん(本人提供)2018年10月、ホストクラブ通いに狂った通称『ホス狂』の女性が飛び降りて通行人男性を巻き込んでしまった事件があった。以来、周辺では自殺の連鎖が続いているという。「その前後には周辺の雑居ビルから身を投げる若者たちが相次ぎました。未遂を含めると6人以上という異常な数になっていた」(歌舞伎町事情に詳しいジャーナリスト)また、歌舞伎町内にあるビジネスホテルでは2021年に18歳男性と14歳の少女が出会って2時間にもかかわらず、飛び降り自殺をしたと問題になった。さらに2021年12月には当時47歳だった母親が9歳の長男を突き落とし、無理心中を図ろうとするなど悲しいニュースも続いた。歌舞伎町だけが特別というわけではない。大島さんが続ける。「『歌舞伎町エリア』から抜けると急に事故物件が減るのかと言われるとそんなことはないんです。隣接している大久保エリアに行っても事故物件が多いんです」そのため、大島さんは歌舞伎町を「自殺の多い特殊な街」とは捉えていないという。歌舞伎町だけではない!「同じような繁華街でも渋谷の円山町は同様に炎マークが多いですが、隣接する松濤エリアに入ると突然事故物件が格段になくなるんです」 続けて、大島さんは横浜の寿町を例にあげた。日雇い労働者が集まるエリアとしても有名な一帯で、事故物件の数は95と多い。一方、隣り合う山手エリアでは2件のみ。横浜でも渋谷と同じような現象が起きているのだ。「このエリア自体は狭いのですが、炎が折り重なっています。ただ歌舞伎町と違う点は、円山町と松濤のように隣り合った山手エリアには炎がほとんどない」この2つのエリアの間を流れる中村川を一本挟むとまるで別世界になる。「寿町の事故物件は凍死や餓死、孤独死などが多く、歌舞伎町に比べると年齢層も高い。おまけに騒音トラブルなどによる他殺も多いんです。歓楽街ではないのに他殺が多いのはちょっと異常と思えますね。歌舞伎町の場合は集まってくる人も多いためその分、事件や自殺も多いというのは頷けるんです。だからといって若い人の自殺が増えているのは問題だとは思いますが」そう指摘する大島さんは、「事故物件を通して見えてくるものがある」と強調する。「歌舞伎町の場合は高い建物から飛び降りる行為が圧倒的に多い。それを抑止する対策ができればとりあえず直近の飛び降り行為はなくなります。以前、飛び降り自殺の名所として有名だった板橋区の高島平団地でも柵を作るなどして対策を講じた。そのため、今は自殺者はほとんど出ていません。ビジネスホテルも宿泊者じゃなくても入れる仕組みだったり、会計がチェックアウト後だったりしたことから若者たちの自殺が増えた背景がある。今ではこの件もしっかり改善されているようです」歌舞伎町での自殺が今後、減少するのだろうか。「やっぱりホストクラブの問題を放っておくと今のハイペースでの自殺者数は減らないと思います。飛び降りを防止したところで、落ちた場所によっては命を落とす。対策は必要ですが100%防げるわけではありません」事故物件マップは現代社会の「病み」を照らし出している。取材・文/千葉春子(事件ジャーナリスト)・・・・・さらに関連記事『閲覧注意…事故物件紹介サイト「成仏不動産」が見た「孤独死現場」』では、さらなる詳しい孤独死の現場の真実や、事故物件がどのように賃貸に出されているのかなどの実態に迫っている。
連日、新宿・歌舞伎町ではさまざまな問題が起き続けている。特に深刻なのが、この街で自ら命を絶つ若者たちだ。事故物件を表すサイトとして有名な『大島てる 事故物件公示サイト』には事故物件の炎マークが密集している。だが、同サイト運営者の大島てるさんは「治安は良くなっている」と述べる。
その理由について前編記事『「まるで地獄絵図」歌舞伎町が包まれる事故物件の「炎」…「治安は良くなっているんです」と管理人・大島てるが語る理由』より引き続き、事件ジャーナリストの千葉春子氏が聞いた。
「現在の歌舞伎町にある事故物件は、殺人事件などで起きたものよりも自殺が増えているんです。自殺という行為自体は、本来犯罪ではありません。ですが、自殺者が多いところには住みたくないという思いを持っている人は少なくない。自殺者数の増加で『街が物騒になっている』ということは表現としては正しくないですよね」
そう話すのは、地図上で事故物件の場所を示す、『事故物件公示サイト 大島てる』を運営する大島てるさんだ。
同サイトでは全国の事故物件の情報を炎マークで公示し、共有している運営者の大島てるさんはここ数年の歌舞伎町をどう見ているのか。
事故物件公示サイト「大島てる」より
まず、大島さんが感じているのはそこに集まる人たちのメンタルの問題。
「街全体が病んでいる」と語る。
「歌舞伎町には前世紀の時点ですでに危険なイメージがありました。ですが、ここのところ(事故物件を示す)炎マークは質が変わってきているんです。2001年に44名が亡くなるビル火災の大惨事が起きました。弊サイトは創設が2005年であるため、掲載対象外とさせていただいております。ただ、この火災は放火が原因であるとは断定されていません。したがって、失火の可能性も残り、『殺された』とは言い切りづらく、自殺同様、『治安が悪い』との表現が適切でなく感じるというわけです。それらとは別に、例えばぼったくり等はいかに多くとも直接死人が出ませんので、やはり事故物件増にはつながりません」(大島さん、以下「」も)
さらには、命を絶つ方法も変化しているという。
「2000年代はラブホテルでの硫化水素自殺が続いた時期がありました。ですが今の歌舞伎町では飛び降り自殺が圧倒的に多いです。特にホストの売り掛けを苦にしたとされる女性の飛び降りが大きく報じられてから増えた印象がありますね」
大島てるさん(本人提供)
2018年10月、ホストクラブ通いに狂った通称『ホス狂』の女性が飛び降りて通行人男性を巻き込んでしまった事件があった。以来、周辺では自殺の連鎖が続いているという。
「その前後には周辺の雑居ビルから身を投げる若者たちが相次ぎました。未遂を含めると6人以上という異常な数になっていた」(歌舞伎町事情に詳しいジャーナリスト)
また、歌舞伎町内にあるビジネスホテルでは2021年に18歳男性と14歳の少女が出会って2時間にもかかわらず、飛び降り自殺をしたと問題になった。さらに2021年12月には当時47歳だった母親が9歳の長男を突き落とし、無理心中を図ろうとするなど悲しいニュースも続いた。
歌舞伎町だけが特別というわけではない。大島さんが続ける。
「『歌舞伎町エリア』から抜けると急に事故物件が減るのかと言われるとそんなことはないんです。隣接している大久保エリアに行っても事故物件が多いんです」
「同じような繁華街でも渋谷の円山町は同様に炎マークが多いですが、隣接する松濤エリアに入ると突然事故物件が格段になくなるんです」
続けて、大島さんは横浜の寿町を例にあげた。日雇い労働者が集まるエリアとしても有名な一帯で、事故物件の数は95と多い。一方、隣り合う山手エリアでは2件のみ。横浜でも渋谷と同じような現象が起きているのだ。
「このエリア自体は狭いのですが、炎が折り重なっています。ただ歌舞伎町と違う点は、円山町と松濤のように隣り合った山手エリアには炎がほとんどない」
この2つのエリアの間を流れる中村川を一本挟むとまるで別世界になる。
「寿町の事故物件は凍死や餓死、孤独死などが多く、歌舞伎町に比べると年齢層も高い。おまけに騒音トラブルなどによる他殺も多いんです。歓楽街ではないのに他殺が多いのはちょっと異常と思えますね。歌舞伎町の場合は集まってくる人も多いためその分、事件や自殺も多いというのは頷けるんです。だからといって若い人の自殺が増えているのは問題だとは思いますが」
そう指摘する大島さんは、「事故物件を通して見えてくるものがある」と強調する。
「歌舞伎町の場合は高い建物から飛び降りる行為が圧倒的に多い。それを抑止する対策ができればとりあえず直近の飛び降り行為はなくなります。以前、飛び降り自殺の名所として有名だった板橋区の高島平団地でも柵を作るなどして対策を講じた。そのため、今は自殺者はほとんど出ていません。ビジネスホテルも宿泊者じゃなくても入れる仕組みだったり、会計がチェックアウト後だったりしたことから若者たちの自殺が増えた背景がある。今ではこの件もしっかり改善されているようです」
歌舞伎町での自殺が今後、減少するのだろうか。
「やっぱりホストクラブの問題を放っておくと今のハイペースでの自殺者数は減らないと思います。飛び降りを防止したところで、落ちた場所によっては命を落とす。対策は必要ですが100%防げるわけではありません」
事故物件マップは現代社会の「病み」を照らし出している。
取材・文/千葉春子(事件ジャーナリスト)
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さらに関連記事『閲覧注意…事故物件紹介サイト「成仏不動産」が見た「孤独死現場」』では、さらなる詳しい孤独死の現場の真実や、事故物件がどのように賃貸に出されているのかなどの実態に迫っている。

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