【リニア】水問題解決へ“一歩前進”報道のウラ 「川勝知事の本性を取材している記者は分かっていない」

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ついに山が動いたのか。
【写真を見る】23年前の教授時代も頑固だった? 川勝知事の意外すぎる白髪姿 そう思わせる一連の報道だった。静岡県の川勝平太知事がかねて反対しているリニア中央新幹線の工事の問題である。 川勝知事は11月28日に記者会見を開き、JR東海が水流出対策のため提案してきた「田代ダム案」について、見解を示した。それを受け、大手メディアは、「リニア「水問題」 川勝知事がJR案に“一歩前進”」(テレビ朝日)「リニア『水問題解決』へ前進 川勝平太知事、JR東海案『尊重したい』」(産経新聞)

「リニア新幹線、静岡県知事が『JR田代ダム案』賛意回答へ」(日経新聞) このうち、日経新聞はこの問題について下記のように言及している。解決への道は遠すぎる「静岡県の川勝平太知事は28日の記者会見で、リニア中央新幹線の静岡工区を巡り、大井川の水流出対策としてJR東海が示した田代ダム案について『尊重したい』と述べた。流域自治体などの意見をまとめたうえでJR東海側へ賛意を回答することを明らかにした」「川勝知事は会見で『まだ不確定な部分もあり、実現性や技術面を県の専門部会で確認していきたい』としつつ、リニア問題は一歩前進するとの認識を示した」(11月28日付の日経新聞) そして、翌日には田代ダム案について県が「了解する」とした回答書をJR東海に送付。すると、「静岡県、田代ダム案を了解 継続対話求める」(11月30日付の日経新聞) など、まるで、リニア問題が解決に向かって動き始めたかのような報道が見られた。だが、「実態はまったく違います。リニアの問題そのものはまったく前進していません」 と語るのは、静岡県庁関係者である。一体どういうことなのか。 まずは焦点となっていた「田代ダム案」について、説明しておこう。「そうですね」と応じただけ 川勝知事が問題の一つとしているのは、「先進抗」の工事だ。地質調査のために掘られ、実際にリニアが走行する「本坑」が完成すると、作業用や避難用のトンネルとして使われる。 山梨県側から工事を開始し、県境を越えて静岡県で掘削を行うと、発生した湧き水は傾斜の関係から山梨県側へ流れてしまう。 導水路トンネルが静岡県側のトンネルと繋がって、水を戻せるようになるまでの期間は約10ヵ月と想定されており、このトンネルが繋がるまでの間に生じる湧き水の量は500万トンから300万トン程度だ。 川勝知事は「静岡県内のトンネルで発生する湧水は一滴たりとも失わせるわけにはいかない」と要求している。そこでJR東海が提案したのは大井川上流にある田代ダムの取水を調整し、湧き水による減少分を相殺するというものだった。これが「田代ダム案」である。 この案について、JR東海はダムを管理する東京電力や流域の利水関係者で構成される協議会の了承を求めていた。そして今般、協議会がこの案を了承する方向で調整していることが報じられ、そのことを28日の会見で川勝知事は問われたわけである。「実は報道の『一歩前進』というのは記者が『リニア工事について、一歩前進というお考えでしょうか』と会見で問い、知事が『そうですね』と応じたに過ぎません。決して自分から『一歩前進だ』とは言っていないのです。しかも知事は『引き続き専門部会でJR東海との対話を進めていく』と議論する姿勢を示しています」 この部会とは、地質構造・水資源部会の専門部会のことで、大学教授などの4人で構成されている。「しかし、この委員の中には県寄りの主張を持つ人が含まれています。県外に流失する水量の測定方法などは未確定要素として、今後も部会で議論されていくことになります」川勝知事の嫌がらせ 県の担当者によれば、「JR東海さんで水の収支のシミュレーションを行っています。トンネルを掘れば これだけ水が圏外に流出し、大井川の水量がこれだけ減るという計算をしているわけですが、実際にはその収支のシミュレーションには不確実性を指摘する声もあり、専門部会の先生からはもう少し調査をして、精度を高めてからお話ししましょう、となっています」 さらに一連の報道では注目されていないのが地質などを調べるために、工事の前段階に行われるボーリング調査について、だ。JR東海は16日の会見で、このボーリング調査も田代ダム案を適用し、調査にともない流出する地下水について対応するとした。これに川勝知事が猛反発しているのだ。 先の関係者が続ける。「川勝知事は会見で“この件は報道で知った”とし、“高速長尺先進ボーリングにより上流域の生態系への影響がある。それらの影響を回避する保全措置が示されないと認められない”と語りました。ボーリングができなければ、工事は進められない。これは知事の嫌がらせと言っても過言ではないでしょう。また、工事による掘削土をどこに置くかという残土問題は解決には至っていません。土を置く計画地がそのことで崩壊する可能性を知事が指摘しているからです」“自分の主張は絶対” まだまだ解決には程遠いというわけだ。「静岡工区のリニア問題が顕在化してから、もう6年近くが経ち、記者クラブのメンバーも大きく入れ替わりました。そのため、川勝知事のことをよく知っている記者も減ってしまった。有り体に言えば、川勝知事は“頑固”で“自分の主張は絶対”です。最初に選挙に出た時は演説に時間制限があっても、自分の主張を話し終わらないうちは、どんなに時間がかかっても演説を終えなかったことで知られています。そんな彼が簡単にリニアの工事を了承するわけがない。そのあたりのことをわかっている記者が減ってしまったのは事実です」 前進どころか、これから後退するかもしれない状況なのである。デイリー新潮編集部
そう思わせる一連の報道だった。静岡県の川勝平太知事がかねて反対しているリニア中央新幹線の工事の問題である。
川勝知事は11月28日に記者会見を開き、JR東海が水流出対策のため提案してきた「田代ダム案」について、見解を示した。それを受け、大手メディアは、
「リニア「水問題」 川勝知事がJR案に“一歩前進”」(テレビ朝日)
「リニア『水問題解決』へ前進 川勝平太知事、JR東海案『尊重したい』」(産経新聞)
「リニア新幹線、静岡県知事が『JR田代ダム案』賛意回答へ」(日経新聞)
このうち、日経新聞はこの問題について下記のように言及している。
「静岡県の川勝平太知事は28日の記者会見で、リニア中央新幹線の静岡工区を巡り、大井川の水流出対策としてJR東海が示した田代ダム案について『尊重したい』と述べた。流域自治体などの意見をまとめたうえでJR東海側へ賛意を回答することを明らかにした」「川勝知事は会見で『まだ不確定な部分もあり、実現性や技術面を県の専門部会で確認していきたい』としつつ、リニア問題は一歩前進するとの認識を示した」(11月28日付の日経新聞)
そして、翌日には田代ダム案について県が「了解する」とした回答書をJR東海に送付。すると、
「静岡県、田代ダム案を了解 継続対話求める」(11月30日付の日経新聞)
など、まるで、リニア問題が解決に向かって動き始めたかのような報道が見られた。だが、
「実態はまったく違います。リニアの問題そのものはまったく前進していません」
と語るのは、静岡県庁関係者である。一体どういうことなのか。
まずは焦点となっていた「田代ダム案」について、説明しておこう。
川勝知事が問題の一つとしているのは、「先進抗」の工事だ。地質調査のために掘られ、実際にリニアが走行する「本坑」が完成すると、作業用や避難用のトンネルとして使われる。
山梨県側から工事を開始し、県境を越えて静岡県で掘削を行うと、発生した湧き水は傾斜の関係から山梨県側へ流れてしまう。
導水路トンネルが静岡県側のトンネルと繋がって、水を戻せるようになるまでの期間は約10ヵ月と想定されており、このトンネルが繋がるまでの間に生じる湧き水の量は500万トンから300万トン程度だ。
川勝知事は「静岡県内のトンネルで発生する湧水は一滴たりとも失わせるわけにはいかない」と要求している。そこでJR東海が提案したのは大井川上流にある田代ダムの取水を調整し、湧き水による減少分を相殺するというものだった。これが「田代ダム案」である。
この案について、JR東海はダムを管理する東京電力や流域の利水関係者で構成される協議会の了承を求めていた。そして今般、協議会がこの案を了承する方向で調整していることが報じられ、そのことを28日の会見で川勝知事は問われたわけである。
「実は報道の『一歩前進』というのは記者が『リニア工事について、一歩前進というお考えでしょうか』と会見で問い、知事が『そうですね』と応じたに過ぎません。決して自分から『一歩前進だ』とは言っていないのです。しかも知事は『引き続き専門部会でJR東海との対話を進めていく』と議論する姿勢を示しています」
この部会とは、地質構造・水資源部会の専門部会のことで、大学教授などの4人で構成されている。
「しかし、この委員の中には県寄りの主張を持つ人が含まれています。県外に流失する水量の測定方法などは未確定要素として、今後も部会で議論されていくことになります」
県の担当者によれば、
「JR東海さんで水の収支のシミュレーションを行っています。トンネルを掘れば これだけ水が圏外に流出し、大井川の水量がこれだけ減るという計算をしているわけですが、実際にはその収支のシミュレーションには不確実性を指摘する声もあり、専門部会の先生からはもう少し調査をして、精度を高めてからお話ししましょう、となっています」
さらに一連の報道では注目されていないのが地質などを調べるために、工事の前段階に行われるボーリング調査について、だ。JR東海は16日の会見で、このボーリング調査も田代ダム案を適用し、調査にともない流出する地下水について対応するとした。これに川勝知事が猛反発しているのだ。
先の関係者が続ける。
「川勝知事は会見で“この件は報道で知った”とし、“高速長尺先進ボーリングにより上流域の生態系への影響がある。それらの影響を回避する保全措置が示されないと認められない”と語りました。ボーリングができなければ、工事は進められない。これは知事の嫌がらせと言っても過言ではないでしょう。また、工事による掘削土をどこに置くかという残土問題は解決には至っていません。土を置く計画地がそのことで崩壊する可能性を知事が指摘しているからです」
まだまだ解決には程遠いというわけだ。
「静岡工区のリニア問題が顕在化してから、もう6年近くが経ち、記者クラブのメンバーも大きく入れ替わりました。そのため、川勝知事のことをよく知っている記者も減ってしまった。有り体に言えば、川勝知事は“頑固”で“自分の主張は絶対”です。最初に選挙に出た時は演説に時間制限があっても、自分の主張を話し終わらないうちは、どんなに時間がかかっても演説を終えなかったことで知られています。そんな彼が簡単にリニアの工事を了承するわけがない。そのあたりのことをわかっている記者が減ってしまったのは事実です」
前進どころか、これから後退するかもしれない状況なのである。
デイリー新潮編集部

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