【窪田 新之助】なぜJAの職員は、顧客に不利な共済商品を勧めるのか? 「不正販売」「自爆営業」の原因

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

農業協同組合(JA)は、元来、営利目的ではなく、「経済的に弱い立場にある組合員の生産や生活の向上のため」に設立されたものだ。しかし、そんなJAが、今や共済(保険)事業と信用(銀行)事業に依存し、職員に過大なノルマを課しているという。そして、その結果、現在、多くのJAで「不正販売」と「自爆営業」が蔓延っている。JAで、一体なにが起こっているのか。なぜそのような事態になってしまったのか。元「日本農業新聞記者」窪田新之助氏の新刊ルポタージュ『農協の闇』から、3回に分けてご紹介します。
ノルマの達成度で、年収に大きな差しかし、それにしても、なぜJAの職員は顧客に不利な切り替えを勧めるのだろうか。もうお分かりだろう。その理由もまた、「かんぽの不正販売」と同じである。背景にあるのは、過大なノルマと、目標の達成度によって支払われる手当だ。JAとぴあ浜松のAさんは語る。「うちの農協の職員数は1300人。このうちノルマが課せられるのはLA職員と複合渉外職員、各課の主任と係長の、合わせてざっと300人です。しかもうちの場合、おそらく全国でもノルマが最も多額になっています。同業者の縁で、民間の保険会社の社員と話す機会が少なくないのですが、『農協はノルマが多いよね』ってよく言われますね。しかも年々、その額は大きくなっています。そして、達成すればボーナスが多く払われます。逆に達成できなければ減らされます。だからみんな必死なんです」Aさんによれば、同JAのボーナスの基準は月給の6ヵ月分。査定は4段階に分かれ、最も高評価のAだと7・2ヵ月分、Bは6ヵ月分、Cは4・8ヵ月分、Dになると3ヵ月分となる。このほか、年間ノルマを達成すると30万円の特別賞与がある。さらに締め切りである3月末より前倒しして、前年の12月末までに達成すれば、この特別賞与は倍の60万円に跳ね上がる。このように年収がノルマの達成如何で変わるので、同じ役職でも多い人と少ない人では200万円くらいの開きが生じる。 ポイントが大きい共済商品ほど、不正販売が横行共済商品の販売ノルマをつくっているのは、JAグループの全国組織の一つであるJA共済連だ。名前のとおり共済事業を専門に扱っており、共済商品の企画や開発などをする。JA共済連全国本部(JA共済ビル)このJA共済連が、県本部を通じて地域のJAにポイントを割り振る。それが所属の支店や部署を通じて職員に降ってくる。ここで押さえておきたいのは、共済商品の種類によってポイントの多寡が異なっているということだ。それも、JAごとにどの共済商品に重きを置いているかが変わる。JAとぴあ浜松の職員たちは、それを「とぴあルール」と呼んでいる。基本的に「とぴあルール」では、総じて保障額を大きくすればするほどポイントがたくさん付く仕組みになっている。ただ、保障額を大きくすれば、掛け金も上がってしまう。掛け金が上がれば、顧客はまず切り替えない。だから職員は、解約時に積立金の一部が戻ってくる「解約返戻金」を新契約の原資に充てて、保障額を大きくしても掛け金が上がっていないように見せかけるのだ。「とぴあルール」は、先ほど紹介した「むてきプラス」から「むてきプラス」への切り替えについても当てはまる。同じ共済商品で、保障額が同じ別の契約に転換するなど、顧客にとってはまったく無意味どころかマイナスである。それでもLAが転換させたがるのは、そこにポイントが付いていて、ノルマの達成につながるからだ。ただ、この転換は、JAにとっても経営上、さして意味があるようには思えない。それでも、JAとぴあ浜松が転換を推奨する理由は、単年度の収益を上げるためだという。「うちの農協は対外的に収益を大きく見せるため、そこから逆算してポイントを設定しています。だから、JAにとっても顧客にとっても無意味と思える転換に対してもポイントを付けているわけです。要は経営者の都合ですね」(Aさん) JA職員は加害者であると同時に被害者厄介なことに、不正販売の元凶ともいえる過大なノルマが引き起こしている問題は、これだけにとどまらない。じつはJAの職員は、加害者であるとともに被害者でもあるのだ。というのも多くのJAは、ノルマが達成できない職員に対し、「自爆」と呼ばれる経済的な自己犠牲を伴う営業を強いているからだ。この自爆とは、ノルマを達成するために、必要のない共済に職員自ら入る、あるいは他人に懇願して入ってもらい、その掛け金を肩代わりすることを指す。職員は自爆を減らすために、顧客に不利益な商品でも勧めてしまうのである。先ほど紹介したとおり、JAとぴあ浜松でノルマが課せられるのはLAと複合渉外の担当職員、それから主任と係長の約300人である。同JAでは、これらの職員はノルマを達成できなければ、不足分を補うために自ら共済商品を契約する。もちろん、必要な共済にはとっくに加入しており、それに積み増すかたちだ。しかもこれが解約できない。もし解約すれば、実績から控除されて、事後のノルマに上積みされる。さらに、ノルマが課せられるのは毎年度である。職員が不正販売に駆り立てられる気持ちも分からなくはない。そして、言うまでもなく過大なノルマを設けているJAは、いずれも自爆の実態を承知している。それは、共済商品の企画と普及を行うJA共済連も同じだ。にもかかわらず、JA共済連は「営利を目的としない」と謳っている手前、ノルマと自爆の存在を認めようとしない。共済商品のノルマ達成は「必須」しかし、私の手元に決定的な証拠がある。「JAちばみどり」(千葉県旭市)が、全職員に毎年配る「共済事業普及推進計画書」だ。これには、共済商品を推進する使命や方針などとともに、一般職員と信用渉外(MA/マネーアドバイザー)、LAのノルマが「必須目標」として記されている。MAは共済商品だけでなく、JAの金融サービス全般を扱う専門職である。JAちはみとりの「共済事業普及推進計画書」毎年、共済商品を営業する「推進期間」が始まれば、職員はノルマの達成を競うように仕向けられる。職場ごとに、各職員の達成状況が定期的に公表されるのだ。これにより、達成できない職員は自爆へと追い込まれていく。 パワハラというより脅迫決定的といえる証拠がもう一つある。同JAが毎年度内部で調査をして、職員向けに公開している「職員意識調査結果のご報告」だ。その自由記述欄に書き込まれた文章の一部を紹介する(すべて原文ママ)。誤字や脱字などがあるので、文意が分からないところは飛ばして読んで頂きたい。自己加入も限界があり今は給料の半分以上共済の掛け金に消えてしまいます。私の中では共済の掛け金を払うために働いている様に思えます。お願いなので大至急職員の共済台帳を上の方で見てください。現状を見てください。満期などの関係で難しいですが、掛け捨ての共済でも職員割引を検討してください。来年からで済まされる問題ではありません。ノルマは労基(=筆者注・労働基準法)違反です 残業申請できないのも労基違反です。ノルマがキツく広報配っている所やお客さんに保険やお茶の推進をしてもみんな嫌な顔をされて、自分の班の人に追い込まれ自爆をし続け結局月々の支払いが増え生活がキツく貯金もあまり出来ないため。結局自分の人生を犠牲にしている気がしてならない辞めたいです。LAとして頑張っているつもりなのですが、今月末までにどのくらいできるんだ、そんなんじゃ年間目標達成しないじゃないか、少なくともこのくらいやってもらわないと困る、これは自分だけじゃなく職員全員のボーナスにかかわってくるんだ、できないは許されないんだ、わかっているだけじゃなくやるんだと言われました。パワハラというより脅迫だと思います。(中略)もう少し職員を大事にしていただけないのでしょうか。この自由記述欄には、職員が思い思いに書いた123のコメントがそのまま載っており、一つひとつ読んでいくと最も多く挙がっているのは、やはり共済商品の過大なノルマと自爆の痛みについてだった。同JAの職員たちによると、この調査はここ数年、毎年のように実施されている。JAはわざわざ内部調査をして、こうした職員の嘆きや苦しみを把握しているのに、それでもなお過大なノルマを職員に強いているのだ。
しかし、それにしても、なぜJAの職員は顧客に不利な切り替えを勧めるのだろうか。もうお分かりだろう。その理由もまた、「かんぽの不正販売」と同じである。背景にあるのは、過大なノルマと、目標の達成度によって支払われる手当だ。JAとぴあ浜松のAさんは語る。
「うちの農協の職員数は1300人。このうちノルマが課せられるのはLA職員と複合渉外職員、各課の主任と係長の、合わせてざっと300人です。しかもうちの場合、おそらく全国でもノルマが最も多額になっています。同業者の縁で、民間の保険会社の社員と話す機会が少なくないのですが、『農協はノルマが多いよね』ってよく言われますね。しかも年々、その額は大きくなっています。そして、達成すればボーナスが多く払われます。逆に達成できなければ減らされます。だからみんな必死なんです」
Aさんによれば、同JAのボーナスの基準は月給の6ヵ月分。査定は4段階に分かれ、最も高評価のAだと7・2ヵ月分、Bは6ヵ月分、Cは4・8ヵ月分、Dになると3ヵ月分となる。
このほか、年間ノルマを達成すると30万円の特別賞与がある。さらに締め切りである3月末より前倒しして、前年の12月末までに達成すれば、この特別賞与は倍の60万円に跳ね上がる。このように年収がノルマの達成如何で変わるので、同じ役職でも多い人と少ない人では200万円くらいの開きが生じる。
ポイントが大きい共済商品ほど、不正販売が横行共済商品の販売ノルマをつくっているのは、JAグループの全国組織の一つであるJA共済連だ。名前のとおり共済事業を専門に扱っており、共済商品の企画や開発などをする。JA共済連全国本部(JA共済ビル)このJA共済連が、県本部を通じて地域のJAにポイントを割り振る。それが所属の支店や部署を通じて職員に降ってくる。ここで押さえておきたいのは、共済商品の種類によってポイントの多寡が異なっているということだ。それも、JAごとにどの共済商品に重きを置いているかが変わる。JAとぴあ浜松の職員たちは、それを「とぴあルール」と呼んでいる。基本的に「とぴあルール」では、総じて保障額を大きくすればするほどポイントがたくさん付く仕組みになっている。ただ、保障額を大きくすれば、掛け金も上がってしまう。掛け金が上がれば、顧客はまず切り替えない。だから職員は、解約時に積立金の一部が戻ってくる「解約返戻金」を新契約の原資に充てて、保障額を大きくしても掛け金が上がっていないように見せかけるのだ。「とぴあルール」は、先ほど紹介した「むてきプラス」から「むてきプラス」への切り替えについても当てはまる。同じ共済商品で、保障額が同じ別の契約に転換するなど、顧客にとってはまったく無意味どころかマイナスである。それでもLAが転換させたがるのは、そこにポイントが付いていて、ノルマの達成につながるからだ。ただ、この転換は、JAにとっても経営上、さして意味があるようには思えない。それでも、JAとぴあ浜松が転換を推奨する理由は、単年度の収益を上げるためだという。「うちの農協は対外的に収益を大きく見せるため、そこから逆算してポイントを設定しています。だから、JAにとっても顧客にとっても無意味と思える転換に対してもポイントを付けているわけです。要は経営者の都合ですね」(Aさん) JA職員は加害者であると同時に被害者厄介なことに、不正販売の元凶ともいえる過大なノルマが引き起こしている問題は、これだけにとどまらない。じつはJAの職員は、加害者であるとともに被害者でもあるのだ。というのも多くのJAは、ノルマが達成できない職員に対し、「自爆」と呼ばれる経済的な自己犠牲を伴う営業を強いているからだ。この自爆とは、ノルマを達成するために、必要のない共済に職員自ら入る、あるいは他人に懇願して入ってもらい、その掛け金を肩代わりすることを指す。職員は自爆を減らすために、顧客に不利益な商品でも勧めてしまうのである。先ほど紹介したとおり、JAとぴあ浜松でノルマが課せられるのはLAと複合渉外の担当職員、それから主任と係長の約300人である。同JAでは、これらの職員はノルマを達成できなければ、不足分を補うために自ら共済商品を契約する。もちろん、必要な共済にはとっくに加入しており、それに積み増すかたちだ。しかもこれが解約できない。もし解約すれば、実績から控除されて、事後のノルマに上積みされる。さらに、ノルマが課せられるのは毎年度である。職員が不正販売に駆り立てられる気持ちも分からなくはない。そして、言うまでもなく過大なノルマを設けているJAは、いずれも自爆の実態を承知している。それは、共済商品の企画と普及を行うJA共済連も同じだ。にもかかわらず、JA共済連は「営利を目的としない」と謳っている手前、ノルマと自爆の存在を認めようとしない。共済商品のノルマ達成は「必須」しかし、私の手元に決定的な証拠がある。「JAちばみどり」(千葉県旭市)が、全職員に毎年配る「共済事業普及推進計画書」だ。これには、共済商品を推進する使命や方針などとともに、一般職員と信用渉外(MA/マネーアドバイザー)、LAのノルマが「必須目標」として記されている。MAは共済商品だけでなく、JAの金融サービス全般を扱う専門職である。JAちはみとりの「共済事業普及推進計画書」毎年、共済商品を営業する「推進期間」が始まれば、職員はノルマの達成を競うように仕向けられる。職場ごとに、各職員の達成状況が定期的に公表されるのだ。これにより、達成できない職員は自爆へと追い込まれていく。 パワハラというより脅迫決定的といえる証拠がもう一つある。同JAが毎年度内部で調査をして、職員向けに公開している「職員意識調査結果のご報告」だ。その自由記述欄に書き込まれた文章の一部を紹介する(すべて原文ママ)。誤字や脱字などがあるので、文意が分からないところは飛ばして読んで頂きたい。自己加入も限界があり今は給料の半分以上共済の掛け金に消えてしまいます。私の中では共済の掛け金を払うために働いている様に思えます。お願いなので大至急職員の共済台帳を上の方で見てください。現状を見てください。満期などの関係で難しいですが、掛け捨ての共済でも職員割引を検討してください。来年からで済まされる問題ではありません。ノルマは労基(=筆者注・労働基準法)違反です 残業申請できないのも労基違反です。ノルマがキツく広報配っている所やお客さんに保険やお茶の推進をしてもみんな嫌な顔をされて、自分の班の人に追い込まれ自爆をし続け結局月々の支払いが増え生活がキツく貯金もあまり出来ないため。結局自分の人生を犠牲にしている気がしてならない辞めたいです。LAとして頑張っているつもりなのですが、今月末までにどのくらいできるんだ、そんなんじゃ年間目標達成しないじゃないか、少なくともこのくらいやってもらわないと困る、これは自分だけじゃなく職員全員のボーナスにかかわってくるんだ、できないは許されないんだ、わかっているだけじゃなくやるんだと言われました。パワハラというより脅迫だと思います。(中略)もう少し職員を大事にしていただけないのでしょうか。この自由記述欄には、職員が思い思いに書いた123のコメントがそのまま載っており、一つひとつ読んでいくと最も多く挙がっているのは、やはり共済商品の過大なノルマと自爆の痛みについてだった。同JAの職員たちによると、この調査はここ数年、毎年のように実施されている。JAはわざわざ内部調査をして、こうした職員の嘆きや苦しみを把握しているのに、それでもなお過大なノルマを職員に強いているのだ。
共済商品の販売ノルマをつくっているのは、JAグループの全国組織の一つであるJA共済連だ。名前のとおり共済事業を専門に扱っており、共済商品の企画や開発などをする。
JA共済連全国本部(JA共済ビル)
このJA共済連が、県本部を通じて地域のJAにポイントを割り振る。それが所属の支店や部署を通じて職員に降ってくる。
ここで押さえておきたいのは、共済商品の種類によってポイントの多寡が異なっているということだ。それも、JAごとにどの共済商品に重きを置いているかが変わる。JAとぴあ浜松の職員たちは、それを「とぴあルール」と呼んでいる。
基本的に「とぴあルール」では、総じて保障額を大きくすればするほどポイントがたくさん付く仕組みになっている。ただ、保障額を大きくすれば、掛け金も上がってしまう。掛け金が上がれば、顧客はまず切り替えない。だから職員は、解約時に積立金の一部が戻ってくる「解約返戻金」を新契約の原資に充てて、保障額を大きくしても掛け金が上がっていないように見せかけるのだ。
「とぴあルール」は、先ほど紹介した「むてきプラス」から「むてきプラス」への切り替えについても当てはまる。同じ共済商品で、保障額が同じ別の契約に転換するなど、顧客にとってはまったく無意味どころかマイナスである。それでもLAが転換させたがるのは、そこにポイントが付いていて、ノルマの達成につながるからだ。
ただ、この転換は、JAにとっても経営上、さして意味があるようには思えない。それでも、JAとぴあ浜松が転換を推奨する理由は、単年度の収益を上げるためだという。
「うちの農協は対外的に収益を大きく見せるため、そこから逆算してポイントを設定しています。だから、JAにとっても顧客にとっても無意味と思える転換に対してもポイントを付けているわけです。要は経営者の都合ですね」(Aさん)
JA職員は加害者であると同時に被害者厄介なことに、不正販売の元凶ともいえる過大なノルマが引き起こしている問題は、これだけにとどまらない。じつはJAの職員は、加害者であるとともに被害者でもあるのだ。というのも多くのJAは、ノルマが達成できない職員に対し、「自爆」と呼ばれる経済的な自己犠牲を伴う営業を強いているからだ。この自爆とは、ノルマを達成するために、必要のない共済に職員自ら入る、あるいは他人に懇願して入ってもらい、その掛け金を肩代わりすることを指す。職員は自爆を減らすために、顧客に不利益な商品でも勧めてしまうのである。先ほど紹介したとおり、JAとぴあ浜松でノルマが課せられるのはLAと複合渉外の担当職員、それから主任と係長の約300人である。同JAでは、これらの職員はノルマを達成できなければ、不足分を補うために自ら共済商品を契約する。もちろん、必要な共済にはとっくに加入しており、それに積み増すかたちだ。しかもこれが解約できない。もし解約すれば、実績から控除されて、事後のノルマに上積みされる。さらに、ノルマが課せられるのは毎年度である。職員が不正販売に駆り立てられる気持ちも分からなくはない。そして、言うまでもなく過大なノルマを設けているJAは、いずれも自爆の実態を承知している。それは、共済商品の企画と普及を行うJA共済連も同じだ。にもかかわらず、JA共済連は「営利を目的としない」と謳っている手前、ノルマと自爆の存在を認めようとしない。共済商品のノルマ達成は「必須」しかし、私の手元に決定的な証拠がある。「JAちばみどり」(千葉県旭市)が、全職員に毎年配る「共済事業普及推進計画書」だ。これには、共済商品を推進する使命や方針などとともに、一般職員と信用渉外(MA/マネーアドバイザー)、LAのノルマが「必須目標」として記されている。MAは共済商品だけでなく、JAの金融サービス全般を扱う専門職である。JAちはみとりの「共済事業普及推進計画書」毎年、共済商品を営業する「推進期間」が始まれば、職員はノルマの達成を競うように仕向けられる。職場ごとに、各職員の達成状況が定期的に公表されるのだ。これにより、達成できない職員は自爆へと追い込まれていく。 パワハラというより脅迫決定的といえる証拠がもう一つある。同JAが毎年度内部で調査をして、職員向けに公開している「職員意識調査結果のご報告」だ。その自由記述欄に書き込まれた文章の一部を紹介する(すべて原文ママ)。誤字や脱字などがあるので、文意が分からないところは飛ばして読んで頂きたい。自己加入も限界があり今は給料の半分以上共済の掛け金に消えてしまいます。私の中では共済の掛け金を払うために働いている様に思えます。お願いなので大至急職員の共済台帳を上の方で見てください。現状を見てください。満期などの関係で難しいですが、掛け捨ての共済でも職員割引を検討してください。来年からで済まされる問題ではありません。ノルマは労基(=筆者注・労働基準法)違反です 残業申請できないのも労基違反です。ノルマがキツく広報配っている所やお客さんに保険やお茶の推進をしてもみんな嫌な顔をされて、自分の班の人に追い込まれ自爆をし続け結局月々の支払いが増え生活がキツく貯金もあまり出来ないため。結局自分の人生を犠牲にしている気がしてならない辞めたいです。LAとして頑張っているつもりなのですが、今月末までにどのくらいできるんだ、そんなんじゃ年間目標達成しないじゃないか、少なくともこのくらいやってもらわないと困る、これは自分だけじゃなく職員全員のボーナスにかかわってくるんだ、できないは許されないんだ、わかっているだけじゃなくやるんだと言われました。パワハラというより脅迫だと思います。(中略)もう少し職員を大事にしていただけないのでしょうか。この自由記述欄には、職員が思い思いに書いた123のコメントがそのまま載っており、一つひとつ読んでいくと最も多く挙がっているのは、やはり共済商品の過大なノルマと自爆の痛みについてだった。同JAの職員たちによると、この調査はここ数年、毎年のように実施されている。JAはわざわざ内部調査をして、こうした職員の嘆きや苦しみを把握しているのに、それでもなお過大なノルマを職員に強いているのだ。
厄介なことに、不正販売の元凶ともいえる過大なノルマが引き起こしている問題は、これだけにとどまらない。じつはJAの職員は、加害者であるとともに被害者でもあるのだ。というのも多くのJAは、ノルマが達成できない職員に対し、「自爆」と呼ばれる経済的な自己犠牲を伴う営業を強いているからだ。
この自爆とは、ノルマを達成するために、必要のない共済に職員自ら入る、あるいは他人に懇願して入ってもらい、その掛け金を肩代わりすることを指す。職員は自爆を減らすために、顧客に不利益な商品でも勧めてしまうのである。
先ほど紹介したとおり、JAとぴあ浜松でノルマが課せられるのはLAと複合渉外の担当職員、それから主任と係長の約300人である。同JAでは、これらの職員はノルマを達成できなければ、不足分を補うために自ら共済商品を契約する。もちろん、必要な共済にはとっくに加入しており、それに積み増すかたちだ。しかもこれが解約できない。もし解約すれば、実績から控除されて、事後のノルマに上積みされる。
さらに、ノルマが課せられるのは毎年度である。職員が不正販売に駆り立てられる気持ちも分からなくはない。そして、言うまでもなく過大なノルマを設けているJAは、いずれも自爆の実態を承知している。それは、共済商品の企画と普及を行うJA共済連も同じだ。にもかかわらず、JA共済連は「営利を目的としない」と謳っている手前、ノルマと自爆の存在を認めようとしない。
しかし、私の手元に決定的な証拠がある。「JAちばみどり」(千葉県旭市)が、全職員に毎年配る「共済事業普及推進計画書」だ。これには、共済商品を推進する使命や方針などとともに、一般職員と信用渉外(MA/マネーアドバイザー)、LAのノルマが「必須目標」として記されている。MAは共済商品だけでなく、JAの金融サービス全般を扱う専門職である。
JAちはみとりの「共済事業普及推進計画書」
毎年、共済商品を営業する「推進期間」が始まれば、職員はノルマの達成を競うように仕向けられる。職場ごとに、各職員の達成状況が定期的に公表されるのだ。これにより、達成できない職員は自爆へと追い込まれていく。
パワハラというより脅迫決定的といえる証拠がもう一つある。同JAが毎年度内部で調査をして、職員向けに公開している「職員意識調査結果のご報告」だ。その自由記述欄に書き込まれた文章の一部を紹介する(すべて原文ママ)。誤字や脱字などがあるので、文意が分からないところは飛ばして読んで頂きたい。自己加入も限界があり今は給料の半分以上共済の掛け金に消えてしまいます。私の中では共済の掛け金を払うために働いている様に思えます。お願いなので大至急職員の共済台帳を上の方で見てください。現状を見てください。満期などの関係で難しいですが、掛け捨ての共済でも職員割引を検討してください。来年からで済まされる問題ではありません。ノルマは労基(=筆者注・労働基準法)違反です 残業申請できないのも労基違反です。ノルマがキツく広報配っている所やお客さんに保険やお茶の推進をしてもみんな嫌な顔をされて、自分の班の人に追い込まれ自爆をし続け結局月々の支払いが増え生活がキツく貯金もあまり出来ないため。結局自分の人生を犠牲にしている気がしてならない辞めたいです。LAとして頑張っているつもりなのですが、今月末までにどのくらいできるんだ、そんなんじゃ年間目標達成しないじゃないか、少なくともこのくらいやってもらわないと困る、これは自分だけじゃなく職員全員のボーナスにかかわってくるんだ、できないは許されないんだ、わかっているだけじゃなくやるんだと言われました。パワハラというより脅迫だと思います。(中略)もう少し職員を大事にしていただけないのでしょうか。この自由記述欄には、職員が思い思いに書いた123のコメントがそのまま載っており、一つひとつ読んでいくと最も多く挙がっているのは、やはり共済商品の過大なノルマと自爆の痛みについてだった。同JAの職員たちによると、この調査はここ数年、毎年のように実施されている。JAはわざわざ内部調査をして、こうした職員の嘆きや苦しみを把握しているのに、それでもなお過大なノルマを職員に強いているのだ。
決定的といえる証拠がもう一つある。同JAが毎年度内部で調査をして、職員向けに公開している「職員意識調査結果のご報告」だ。その自由記述欄に書き込まれた文章の一部を紹介する(すべて原文ママ)。誤字や脱字などがあるので、文意が分からないところは飛ばして読んで頂きたい。
自己加入も限界があり今は給料の半分以上共済の掛け金に消えてしまいます。私の中では共済の掛け金を払うために働いている様に思えます。お願いなので大至急職員の共済台帳を上の方で見てください。現状を見てください。満期などの関係で難しいですが、掛け捨ての共済でも職員割引を検討してください。来年からで済まされる問題ではありません。
ノルマは労基(=筆者注・労働基準法)違反です 残業申請できないのも労基違反です。
ノルマがキツく広報配っている所やお客さんに保険やお茶の推進をしてもみんな嫌な顔をされて、自分の班の人に追い込まれ自爆をし続け結局月々の支払いが増え生活がキツく貯金もあまり出来ないため。結局自分の人生を犠牲にしている気がしてならない
辞めたいです。LAとして頑張っているつもりなのですが、今月末までにどのくらいできるんだ、そんなんじゃ年間目標達成しないじゃないか、少なくともこのくらいやってもらわないと困る、これは自分だけじゃなく職員全員のボーナスにかかわってくるんだ、できないは許されないんだ、わかっているだけじゃなくやるんだと言われました。パワハラというより脅迫だと思います。(中略)もう少し職員を大事にしていただけないのでしょうか。
この自由記述欄には、職員が思い思いに書いた123のコメントがそのまま載っており、一つひとつ読んでいくと最も多く挙がっているのは、やはり共済商品の過大なノルマと自爆の痛みについてだった。
同JAの職員たちによると、この調査はここ数年、毎年のように実施されている。JAはわざわざ内部調査をして、こうした職員の嘆きや苦しみを把握しているのに、それでもなお過大なノルマを職員に強いているのだ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。