有名ミスコンにも出場、「ルフィグループ」一味の美女が法廷で語った現在「老人ホームでボランティア」「2人で子供を育てていきたい」

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フィリピンを拠点に活動していた特殊詐欺組織、いわゆる“ルフィグループ”。被害総額は60億円にのぼるとされる中、その一員だった熊井ひとみ被告(26)の初公判が11月6日、東京地裁で行われた。
胸あたりまで伸びた髪をひとつ結びにして、スーツを着用して法廷に現れた熊井被告。証言台では声を荒げたり、また押し黙ることもなく、淡々と受け答えする姿が印象的だった。
被告は、その経歴からも注目を集めていた。高校卒業後、二浪して多摩美術大学へ進学し、1年生の時に『ミスフレッシュキャンパス(新入生を対象にしたミスコン)』に出場。ファイナリストに選出され、配信アプリでのライバーや、フォトスタジオでのモデル活動もしていた。
フィリピンで拘束された当時の熊井被告
一見、華やかなキャンパスライフを謳歌していたように映る熊井氏だが、徐々に歯車が狂っていく。ミスコン出場を機に知り合った友人から、“海外の短期アルバイト”に勧誘され、’19年10月22日にフィリピンへ渡航する。
しかし、“海外の短期アルバイト”とは、詐欺の電話をかける“かけ子”、いわゆる闇バイトだったーー。
あれよあれよとルフィグループの一員として、犯罪の片棒を担いでしまった熊井氏。起訴状によれば、グループのメンバーと共謀して、A氏(65)とB氏(76)からキャッシュカードを盗み、計414万2000円を騙し取った罪に問われている。
いわば「キラキラ大学生」だった彼女が、なぜ道を踏み外してしまったのか。そして彼女がいま思うこととはーー。初公判の内容をもとに詳にしていく。
「スギウラからは、フィリピンで1ヶ月、キャッシュカードに関する手続きについて、電話をかける案件があると言われました。50万~100万近く稼いで帰ってくる人もいると。
かなり切羽詰まった様子でお願いされたので、怪しいとは思ったのですが、父親が東南アジアで事業をしている関係だから安心してと言われました。彼のことは信用していましたし、まさか犯罪組織に関わっているとは思っていなかったので、その時は深く考えず。お金も欲しかったので……」(熊井被告の証言)
熊井被告はミスコン出場を機に知り合った友人、スギウラという男から闇バイトの勧誘を受けた。SNSでのメッセージを機にやりとりを重ね、共通の話題があったことから直接会うようになる。
「スギウラと知り合ったのは、(フィリピンに行く)1年以上前。彼は居酒屋のバイトや、歌舞伎町でキャッチの仕事もしていると明かし、私に“女の子が働くようなお店”を紹介してくれたこともありました。
彼にはいろいろ悩み相談をしており、返答が刺さる部分もあったので信頼していた。(海外の案件も)大丈夫だろうと」(熊井被告の証言)
こうして案件を引き受け、滞在先も知らされぬまま、’19年10月22日にフィリピンへ旅立った熊井被告。しかし、すぐに案件が詐欺であると理解する。
「フィリピンに到着した翌日、“かけ子”の仕事をする、いわゆる“かけ場”に案内されました。そこでは警察官に装い、怒鳴りながら電話をかけている光景を目の当たりにしました。
その後、かけ子のグループの取締役であるテラダという男からマニュアルを渡され、その瞬間に詐欺だと確信しました。自分が犯罪に関与するのかと思うと、とても恐怖でした」
しかし、すでに手遅れだった。上の人間からは「ひたすら電話しろ」と強要され、脱走しないよう日々脅迫を受けることとなる。
“実家の住所も知っているんだから”“日本の警察とも繋がっているから、脱走してもすぐ捕まるし、被害届も取り消される”“大使館に逃げようとして捕まり、ひどい仕打ちを受けた人もいる”
上記のような脅し文句で、かけ子を強要され続けた熊井被告。タバコの火を押し付けられたり、ビール瓶で殴られたかけ子の動画も見させられたという。
スギウラに「やりたくない」とLINEしても、「1ヶ月なら頑張りなよ、君ならできるよ」と返信がくるだけだった。
しかし当然のように、予定の1ヵ月を過ぎても、解放されることはなかった。当時、娘が帰ってこない状況について、証人として現れた熊井被告の母が振り返る。
「当初、娘からは、『1ヵ月だけ海外で短期のアルバイトをする』と伝えられていました。以前から海外にホームステイする機会もあったので、その時は不思議に思うことはありませんでした。フィリピンに行ってからも、娘からは『元気だよ』とたまにLINEが来ていました。
ただ、年明けになって、徐々に不安が大きくなりました。住処も同居人も知らない状態だったので、心配していると連絡したら、『元気にしているから心配ない、警察には言わないで』と。
この時、“娘はなにかに巻き込まれている、大きな組織に関与しているのでは?”と疑うようになりました。家族にもそのことは伝えましたが、娘から口止めされていたことを守り、なすすべなく待つばかりでした」(熊井被告の母の証言)
熊井被告は、母に口止めしたことに対して、「通報したことがバレて家族に危害が及ぶのが怖かった」と振り返っている。
結局、熊井被告の家族が、娘の悪行を知ったのは’23年5月頃。彼女が日本に強制送還された時期だった。
’23年9月中旬には、熊井被告はA氏とB氏に、電話で被害弁済と示談の旨を伝えた。弁償するための414万2000円は、姉から400万円を借り、残りは自分で工面した。現時点では、B氏とは被害弁済と示談を済ませているものの、A氏からは拒絶されている状態だと明かした。
裁判では、検察官から400万円をどう返していくのか聞かれると、
「姉には毎月3万円を返済すると約束している。裁判が終わったらすぐにでも仕事をしたい。いまはハローワークに通い、得意な英語を生かした仕事を探している」
と答えた。また、現在は老人ホームでボランティア活動をしていると話した。
「自分が金を騙し取ったのが高齢者だったので、罪の意識を忘れないよう、老人ホームでのボランティアを始めました。そのうち入居者たちと話していくなかで、親切にしてもらうことも多々あり、私がお金を盗んだA氏とB氏も、親切な老人だったのではないかと考えるようになりました。
私がA氏とB氏から盗んだお金は、老後の資金や、子供や孫にとっておいた金だったと聞いています。罪の意識を忘れないよう、今後もボランティア活動は続けていきます」(熊井被告の証言)
もう1点、裁判で気になるポイントがあった。それは熊井被告が直前に出産していたことだ。
配偶者になる可能性がある男性は、同じかけ子グループのリーダーをしていたとされる藤田海里被告。現在、内縁関係にあるという。2人はルフィグループの一員として詐欺行為に加担しながら、恋愛関係になっていた。
2人が関係を深めたのは’19年11月頃、ともにかけ子をしていたアジトの摘発がきっかけだった。
摘発ではメンバー35人ほどが拘束された中、熊井・藤田両名は難を逃れた。それから間もない’20年1月、2人は逃避行をしながら交際を開始。ルフィグループの軟禁から解放された後も、各地を転々としながらかけ子を続けていたと、供述調書から明らかになっている。
その後、’23年1月頃に熊井被告の妊娠が発覚。同年5月に強制送還された際も、妊娠を理由に勾留を免除され、初公判の直前に出産した。
現在は、三鷹市にある実家に住み、両親とともに子育てをしている。
「いまは子供も非常に小さくて、いっときも目を離せない。保育園に預けることも考えたが、世間的な目も気になる。周りに頼れる大人もいないし、いまは自分でどうやって育てていけばいいかを模索している。
(子供を育てながら生計を立てていくことについて)毎月、姉への返済費を含め、アルバイトで稼いでいく。両親が休みの土日を縫って、週2回ほど働いていく予定です」(熊井被告の証言)
今後は、藤田氏との婚約も匂わせた。
「いずれ入籍する予定です。(実刑がついたとしても)これからは夫と2人で子供を育てていきたい」
フィリピンで逃避行を続け、罪をともにしながら、惹かれ合っていった2人。検察官から、アジト摘発後に、2人でかけ子をしながら生活していたことを問われると、「言いたくないです」と答弁を拒否。2時間ほど続いた裁判で唯一、被告が答弁を拒んだ瞬間だった。
求刑は4年、判決は12月7日に言い渡される予定だ。

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