生配信中だったスマホを盗んだことから、犯人と思われる男の顔や会話がネット上に筒抜けになるという、前代未聞の窃盗事件。「Mr.サンデー」は、犯行の一部始終を捉えた15台の防犯カメラ映像を独自に入手した。そこから浮かび上がったのは、手慣れた組織的犯行の実態だった。
「ら～ら～ら～ら～♪」横浜市のJR桜木町駅近くの路上で、インターネットで生配信をしていた男性。野球観戦後の10月2日午前0時頃、疲れと酔いも手伝って、路上で寝落ちしてしまった。
生配信が続く中、突然画面に現れたのは、何者かの手。半開きになっていたカバンから財布が抜き取られた。
その犯行の様子を、周辺に設置された15台の防犯カメラがつぶさにとらえていた。
男性が寝入った直後に現れたのは、白いワンボックスカー。直進し、男性の前を通り過ぎると、約30m離れた場所に止まった。
車から男が1人降り、男性のもとへと歩く。たどりついた男は、男性に近づいて手を伸ばしているように見える。その後すぐに車に引き返した男の手には、確かに財布のようなものが握られていた。車は走り去った。
約5分後、再び同じナンバーの白い車が現れた。同じ場所に車を止めると、助手席の男が先ほどの財布らしき物の中身を物色しているように見える。カードのようなものをドライバーに手渡す様子もみられた。そして車は再び走り去り、その約1時間後、またしても現場に現れた。
車は同じ場所に止まり、車を降りた男は、寝入った男性がいる反対側の歩道へと渡った。そこからまた道を渡ると、大通りから路地へと進んだ。そして隣の路地から姿を見せて素早く男性に近づき、何かを持ち去ると、走って道路を横断した。
この間に、反対側で待機していた白い車。男を乗せるとそのまま走り去った。
犯行の瞬間を目撃した人は、「『やばい、取ってる』みたいになっちゃって。一人が降りて一人が待機しててみたいな。降りて多分、様子をうかがってて。タイミングで行ったのかなと」と当時の状況について語った。
男が最後に盗んだのは男性のスマホだったが、この時、生配信は続いていた。
映し出されたのは、激しく揺れる夜の街。男がスマホを持って逃げる場面だった。
待っていた車に男が乗り込むと…
男：おっ！（スマホ）動くのか。
運転手：ロックかけてないですか？
スマホをのぞき込んだ瞬間、犯人とみられる男の顔が映し出された。
男：びっくりした！
運転手：えっ？
男：「映っている」って出てて。
異変に気づいたものの、まさか生配信されているとは思わない男たち。そして、仲間らしき人物と連絡を取り始めた。
男：もしもし、お疲れさまです。あの今、俺、ちょっと“まぐろ”で携帯とセットで手に入れたんですけど。
“まぐろ”とは、酔い潰れて寝ている人を指すようだ。
男：いつも持って行って。電話付きだと暗証番号がわかるって聞いたから。3万かも？そうなんですか？この前は2万もらったんですけど。
過去にもスマホを盗み、2万円で買い取ってもらったと告げた男。その後、男はホテルへ到着。仲間と合流した。
仲間：結構あった？入っていた？
男：金、全然ないんですよ。
仲間：持ってないんだ。
男：でもこのキャッシュカード、これでコンビニでアイコス買ったら、買えたんですよ。
盗んだカードで、加熱式たばこが買えたことを報告。そして…
仲間：これロックかかってんかな？……なんか通報するって。
やっと気づいたのか、ここで生配信は終了。盗まれてから1時間30分後のことだった。
被害に遭った男性は、「だいたい（財布に）1～2万ぐらいは入ってたはずなんですけど、それも空っぽだった。（スマホで）2万円ぐらいは、さささっと使ってる感じです」と話す。
会話も生配信されたうえ、15台の防犯カメラに犯行の一部始終をとらえられていた男たち。元埼玉県警・捜査一課警部補の佐々木成三氏は、一連の犯行を「『マグロ』というワードを使ったり、こういった犯罪を何度も行っている常習者であることは間違いない」と分析し、常習的な組織犯罪の可能性もあるとしている。
（「Mr.サンデー」11月5日放送より）