埼玉立てこもりで浮彫り 20歳未満の犯罪率を逆転、コンビニですぐキレる 孤独な超高齢者対策の実情

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埼玉・蕨市の郵便局に86歳の男が拳銃を持って立てこもった事件で、日本が直面する超高齢化社会の問題が浮き彫りになっている。地域社会は孤立化する高齢者にどう対応すればいいのか。
逮捕された鈴木常雄容疑者は自宅アパートへの放火、病院での発砲の後、郵便局で職員2人を人質に取って、約8時間にわたって、立てこもった。アパートは立ち退きを要求され、病院や郵便局とはトラブルがあり、不満を抱えていたことが犯行動機とみられる。
「最近はコンビニやスーパーで店員にすぐに文句をつけてキレる高齢者が増え、パワハラやカスハラ(カスタマーハラスメント)が横行している」と指摘するのは一般社団法人日本民間防衛連合会の金子富夫代表理事だ。
犯罪率にも如実に表れている。刑法犯の検挙者のうち65歳以上の高齢者率は1992年は2・7%だったのが、2021年には23・6%まで跳ね上がっている。逆に20歳未満は47・3%から8・8%に減少し、逆転現象が起きている。
背景には少子高齢化かつ人と人のつながりが希薄化し、相談やストレスを発散できる場がないことが挙げられている。「一人暮らしの高齢者は国内に約600万人いる。一人暮らしが長ければ長いほど隣人や地域社会とのコミュニケーションが減っていく時代。かつ高齢者にもスマホが広がり、ネットやSNSなどで一人の世界になっている。気の利いた地域社会では町内会の役員が様子伺いなどしているが、本来なら行政機関が率先して行うべき活動」と金子氏は訴える。
その町内会も若者が入らずに高齢者ばかりのところも多い。「老老地域社会を逆手に取って、高齢者が高齢者を見守る対策が手っ取り早い。高齢者が集まる場所で食事会、カラオケ会などを積極的にやるしかない。また消防団には若い人もいる。防災、火災予防対策を兼ねて、地域の見守りもできるような環境をつくるしかない」(同)
今回の立てこもり事件は社会から疎外された元暴力団員が起こした特異なケースではなく、超高齢化社会を迎えた日本が抱える大きな課題と捉える必要がありそうだ。

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