元信者の夫婦、献金2億円で返金1500万円…合意迫る「信徒会」は「教団と一体」と文化庁

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■[教団解散請求]<上>
「旧統一教会に何百もの質問を出したが、なかなか回答を得られない。だからこそ、あなたの証言が必要なのです」。
この夏、北陸地方の男性は文化庁のヒアリングを受けた際、そう伝えられたという。
男性は家族が旧統一教会に入信した際、団体名を隠して勧誘された事実を詳しく証言し、教団が勧誘時に用いたパンフレットなどの資料十数点を文化庁に提供した。担当職員は「ここまできたら、もう(解散命令請求を)やるしかない」と言って立ち去った。
7度にわたる質問権行使に対し、教団側は全体の約2割に当たる100項目超の回答を拒んだ。文化庁の調査に警察捜査のような強制力はないため、予想されたことでもあった。
文化庁が頼ったのが、各地の「被害者の声」だった。弁護士から訴訟や示談の記録を集めたほか、職員が全国を回って170人超から聞き取りを行った。「つらい記憶がよみがえり、泣いたり怒り出したりして聞き取りが中断したこともあった」。文化庁幹部はそう打ち明ける。
最後の質問権行使となった7月下旬。文化庁は教団に送った質問書で、被害者への返金状況などを尋ねた。リストに記載された被害者数は、この時点で1453人に上っていた。
■「家系図に詳しい先生」のお告げ
「あなたの家系図を見た。孫の背後に先祖が立っている。昔、跡取りが24歳で亡くなっているでしょ。(孫が早死にしないように)守ってあげないと」
2018年3月。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者だった関西地方の80歳代女性は、知人の信者が連れてきた「家系図に詳しい先生」から、そう告げられた。読売新聞が入手した録音記録にやり取りが残されている。
女性が「どうしよう」と相談すると、信者らは先祖の因縁を解決するために献金が必要だとして、こう促した。「だから、今日やらんと」。女性は言われるままに献金に応じた。こうした繰り返しで、献金額は09年から脱会する昨秋までに計約1億円に上った。
文化庁が解散命令請求に向けた調査で特に重点を置いたのは、女性のような「09年以降」の被害事例の収集だ。請求に必要となる「組織性、悪質性、継続性」の3要件のうち、「継続性」の立証が重要なポイントだったからだ。
教団は、信者らによる霊感商法事件を機に、09年3月に「コンプライアンス宣言」を出して以降、問題のある献金集めは激減したと主張している。実際、献金の返金などを求め、元信者らから起こされた民事訴訟は09年3月以降、4件しかないという。
だが、文化庁が確認した被害者の中には、09年3月以降も不法行為が疑われるケースが多数あった。訴訟に至る前に、示談で解決した事例も多かった。
被害救済に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会の調査でも、同宣言以降に献金被害があった元信者らは140人、被害額は計約19億円に上った。こうした調査結果も踏まえ、文化庁は継続性の立証は可能だと判断した。
■「組織性」の立証
「悪質性」については、当初から明白とみられていた。安倍晋三・元首相銃撃事件で逮捕された山上徹也被告(43)(殺人罪などで起訴)のように、家族の過剰な献金で生活が困窮したり、家庭が崩壊状態になったりしたケースが多数報告されていたからだ。
残るポイントは、「組織性」の立証だった。教団側は不当な献金集めについて「互助組織の『信徒会』が行ったもので、教団が組織的に行ったわけではない」と関与を否定していた。
弁護士らによると、献金の返金を巡って教団側と示談する際、書類上の当事者が「信徒会」となっているケースが多数あった。
過去に2億円以上を献金した関西地方の元信者の夫婦も、今春の脱会前に返金を求めると、「信徒会」代表から支払いを受けるとする合意書を交わすよう教団側から求められた。夫婦は「40年近く教団にいたが信徒会なんて聞いたこともない」と不信感を募らせたが、借金返済のために当面の資金が必要で、解決金1500万円で合意した。
文化庁によると、今回の調査で、信徒会について「便宜的、あるいは実体がない、あっても法人の一部だろう」と認定した判例を確認した。ヒアリングで得た被害者の証言も踏まえ、「教団と信徒会は一体」と結論づけたという。
■地域教会に「ノルマ」の言葉
数年前まで教団幹部だった男性によると、教団は全国で月に20億円以上の献金目標を掲げていた。男性は「教団は『目標』と言うが、現場の地域教会では『ノルマ』という言葉も使われていた」と振り返る。
教団によると、献金目標は韓国本部と日本本部が協議し、各地の教会に金額を振り分けている。日本から韓国に送金も行っており、近年は国内献金総額の3~4割に当たる200億円弱を毎年送ってきた。
過剰な献金の背景に、組織が決めたノルマや韓国への巨額送金があったのか。文化庁は「献金集めは教団の財産を得る目的で組織的に行われた」とみる。
宗教法人審議会の委員の一人は、取材にこう指摘している。「日本で集めた献金が韓国に移され、どのように使われているかが判然としない。日本で税優遇を受ける宗教法人として適切とは言えない」
旧統一教会は12日に発表した見解で「私たちは国から解散命令を受けるような教団ではないと確信している」としている。
◇ 盛山文部科学相が12日、旧統一教会の解散命令請求を行うと発表した。請求の内幕や背景、課題を探る。

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