ラーメン「1000円の壁」をどう越えるのか…「500円でも生き残る店」「2000円でも潰れる店」の違いは

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写真・AC
東京商工リサーチによると、2023年1~8月の「ラーメン店」の倒産件数(負債1000万円以上)が28件になったという。これは前年同期比3.5倍だという。
「コロナ禍の影響で客足が遠のいたことに加え、小麦粉や背脂などの高騰、電気やガス料金、人件費の上昇が襲いかかりました。ラーメン店は個人営業が多いので、資本金も少ない。資金繰りが苦しくなると一気に倒産までいってしまいます」(経済担当記者)
「価格転嫁」が難しいことも倒産理由にあがる。
「多くの方にとって『ラーメンはワンコインで食べられるB級グルメ』という位置づけです。そのため、値上げをすると客足にシビアに影響があります。
業界では『1000円の壁』と言われますが、このラインを突破すると客足が遠のくとされるので、なかなかできません。そのため、収益改善が見込めず閉店を余儀なくされます」(ラーメン店経営者)
ラーメン店を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだが、物価高騰の波をもろにかぶりながら、ワンコインで健闘する店もある。一方で、1000円の壁を突破して収益が改善しながら、結局は閉店する店も。この差はどこにあるのだろうか。ラーメンライターの井手隊長に解説してもらった。
「実際、ワンコインの500円でもつぶれないお店は存在します。その特徴として『店が持ち物件か、そうでないか』が大きいです。当たり前ですが、家賃がかからないほうが経営は楽になります。
そして、『カウンターだけでなくテーブル席もあり、ラーメンだけでなくお酒も提供している』こと。“ちょい飲み客” の利用が多く、客単価のアップにつなげているお店は強いですね。
さらに『厳選素材を使わない』こと。麺もトッピングの具材も “ほどほど” です。スープも基本的にはあっさり系。何時間も煮込む豚骨などの濃厚系はガス代などがとてもかかります。濃厚系で500円でやっていけるお店は、資金的にも体力があるチェーン店に限られます」
では、「1000円の壁を越えて客も入ったが失敗した」という店には、どういった理由があるのだろうか。
「立地をよくするため『大都市に店を構えた』ことで家賃に圧迫されたというケースがあります。家賃はボディブローのようにじわじわ影響があります。
『厳選素材を使いすぎた』を理由にあげるお店もあります。そのことをメニューでも謳っているため、価格上昇時に代替の素材を使うことができず、原材料高騰をモロに受けてしまうのです。
また、新規で高級路線を謳う場合は、『名店出身』『受賞歴』などの話題性がないと、スタートダッシュが厳しくなるケースが多いです。流行を追いすぎるあまり、ラーメンそのものに特徴が出ず、SNSの口コミも増えず、なかなかお客さんが増えないケースもよく聞きます。
それと、意外に思われるかもしれませんが、『外国人客が多い高級店』も閉店の危険が潜んでいます。単価が高くなり、一見収益が見込めそうですが、滞在時間が長いことが多いのです。2000円、3000円ならまだしも、1000円レベルだとまだ客席の回転のほうが大事なので」
今後のラーメン業界は、ワンコインと高級路線の2極化になりそうだ。

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