“頂き女子マニュアル”を独自入手…「おぢ」の心理を突く巧妙テクニック満載 関係者が語った「りりちゃん」の素顔

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8月5日に撮影された1枚の写真。カメラを手に女が微笑む――。しかし、この笑顔から約2カ月の間に、女は2度逮捕されることになった。
男性から大金をだまし取る方法を指南したマニュアルを販売した、「頂き女子りりちゃん」を名乗る25歳の女が逮捕された事件。Mr.サンデーはそのマニュアルを独自に入手した。取材から浮かび上がったのは、男たちの心理を突く巧妙な手口と“頂き女子”の意外な素顔だった。
「皆さん、私が世界の平和を守る人妻JK魔法少女りりちゃん!です」(渡辺容疑者のYouTube)
住所不定の無職、渡辺真衣容疑者(25)は、恋愛感情を利用して男性から金銭的な援助を受けることを「頂き」と称し、自らを「頂き女子りりちゃん」と名乗り、動画などを配信していた。
渡辺容疑者は2023年5月、スマホのアプリで知り合った50代の男性から現金約2700万円をだましとった疑いが持たれている。男性に対し、渡辺容疑者は「起業するために借金をしていて、払わないと風俗店に体を売らなければいけない」とうその悩みを打ち明け、現金をだまし取ったとされている。調べに対し渡辺容疑者は容疑を認めているという。
捜査関係者によると、数十人の男性から合わせて2億円以上だまし取ったとみられている渡辺容疑者だが、一体なぜ、そこまでの大金をだまし取ることができたのか。
渡辺容疑者が作成・販売していたのが、“頂き女子マニュアル”だ。渡辺容疑者はこれを女子大学生に販売し、詐欺の手助けをしたとして、8月23日に逮捕、起訴されている。
Mr.サンデーは、渡辺容疑者が作ったというマニュアルを独自入手した。「1ヶ月1000万円頂く頂き女子りりちゃんの【みんなを稼がせるマニュアル】」というタイトルがつけられたマニュアルは、全10章で構成され、印刷すると30ページ以上にのぼる。そこには、自己紹介から始まり、実体験を交えながら相手の同情を誘い、男性がお金を差し出すよう仕向ける方法がつづられていた。
このマニュアルを分析した明星大学心理学部の藤井靖教授は、「人をだます心理テクニックが随所にちりばめられている。(相手の)交友関係の中で(自分が)メインの対象になりやすい人を選んでいるということ。マニュアルではそのノウハウも示している」と指摘する。
お金を出してもらう男性を「おぢ」と呼び、最も“頂き”やすいターゲットを「ギバーおぢ」と名付けると、その特徴を「独り身が多い」「モテたことがない」「お金の使い道がない」などと記している。
出会い系アプリなどから理想的な「おぢ」を探し出すと、その後は「男の人ってわたし苦手で全然関わり持たないんだけど、おぢは他の男の人とは全然ちがうんだよね(マニュアルより)」などとやりとりをする。藤井教授は「お互いに対してオンリーワン、唯一の存在だという風に感じられるとともに、この関係性がより長く続いていくという、そういう見通しがあるのは非常に大事なこと」と話す。
マニュアルには、相手が特別な存在であると認識させる、具体的な会話例も記されていた。
(マニュアルの会話例)「あ~…やっぱおぢと話すと落ち着くなって思った。いつもありがとう」「きいてきいて、今起きたんだけど、おぢの夢見たよ!」
なかには、夢を語るようなものもあった。
(マニュアルの会話例)「わたしねお洋服が好きだからいつか自分のブランド出すのが夢なんだ。いつになるかはわからないけど叶えたいな」
藤井教授は「心理学でストーリーテリング、自分自身の物語を語るということですよね。“この人に対して何かしてあげたい”というような心理を作り出すことができる」と、心理的な要素を巧みに取り入れていると指摘した。
さらに、渡辺容疑者は、電話での話し方についても音声を公開していた。
(渡辺容疑者の音声)本当にいつも●●が優しい言葉をすごいLINEでかけてくれてて、今メンタルやられすぎててー。うん、何かいつもね、そう、●●の優しい温かい言葉に支えられてて、それで頑張れてるから、それ本当伝えたくて。
相手に支えられていると訴え、関係性が確立すると本題に入る。
「1番最初の頂きでおぢに『お金目当て』と思われたら失敗します」(マニュアルより)
大事なのは、金への執着心がないように思わせることだと力説。
「本当はこんな話誰にも言いたくないし、自分1人でなんとかしようとしてる。でもおぢが聞いてくるから話すことにしよう、というていで話すことにしましょう」(マニュアルより)
お金が必要な状況を切り出しても、決して自分から欲しいとは言わず、相手から「お金出すよ」と言わせなくてはならないと説明する。
(マニュアルの会話例)「お金目当てなんでしょ」「え、どういうこと?そんなわけないよね。おぢが話してって言ってくれたから全部話したのになんでそうなるの?なんかすごい悲しい」
「ごめん、ちゃんと聞くよ。と言わせよう」(マニュアルより)
渡辺容疑者はこうしたマニュアルを約3万円で1000人以上に販売していたという。詐欺に詳しい、加藤・浅川法律事務所の加藤博太郎代表弁護士は、「まさに詐欺ほう助に当たると思う。いわゆる“おぢ”という人たちがどんどん本気になっていく方法が具体的に書いてあるので、まさにあれは詐欺の指南マニュアルと言える」と、マニュアル自体に違法性があると指摘した。
渡辺容疑者はこうして手に入れた2億円以上といわれる大金を一体何に使っていたのか――。
渡辺容疑者は2023年7月に、自身のSNSでこんな告白をしていた。
「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」(渡辺容疑者のSNSへの投稿)
捜査関係者によると、実際、渡辺容疑者の口座には残高がほとんどなかったという。渡辺容疑者は夜の街でどんな生活をしていたのか。
新宿・歌舞伎町で取材すると「(渡辺容疑者が)立っているのは見たことがある」という女性がいた。その女性は「かわいいから、それで安くて。正直みんなよりはね、稼げるから。めっちゃ(客が)来るから、それで稼いでいたんじゃないかな」と話した。
また、渡辺容疑者のホスト通いを知る人は「りりちゃん(渡辺容疑者)の担当だったホストが、月7000万円売り上げてナンバー1になったんですが、そのほとんどが、りりちゃんが払ったお金でした」「(渡辺容疑者は)カプセルホテルに毎晩泊まって生活していた」と語った。
「おぢ」から受け取った金をホストにつぎ込み、住む場所もままならない生活。だが、今年その生活にも変化が起きていた。
汚れた地面に座り込む女性。逮捕される約3週間前の8月4日に新宿で撮影された、渡辺容疑者の写真だ。
写真を撮影し、渡辺容疑者に興味を持ったというフォトグラファーは、「(靴を)脱いだ後でちゃんとそろえて置いていたのが面白かった」とその印象について話す。渡辺容疑者の所持品は、壊れたスマホに、ホストの名刺、数千円程度の現金だったという。
「話し方もネットに出ているようなふわふわしたものではなく、声色もしっかり落ち着いていて、もう本当に別人でした」。フォトグラファーは、ネット上で知られていた“頂き女子りりちゃん”とは別の印象を持った。
話し込むうちに、自分がやってきたことに危機感を抱いていたという渡辺容疑者。フォトグラファーは「いつか捕まる可能性があるっていうのは、もう分かっていた」と話す。
“頂き女子りりちゃん”と名乗り男性からお金をだましとって、その方法を指南するマニュアルまで販売したとして逮捕された渡辺容疑者だが、フォトグラファーには、ホスト通いも“頂き女子”も7月にやめたと語っていたという。
「あれは地獄だと。なんでかというと、稼いでも稼いでも、毎月毎月お金を使わなきゃいけない。おじさんからお金をもらうというのも、いつもウソばかり言わなければいけないから、とにかく辛かった、と」
そんな渡辺容疑者の心境を聞いた上で、フォトグラファーは「彼女がしたことはやっぱりしっかりと司法にのっとって裁かれるべきだし、彼女は償いをこれから時間をかけてしていかなければならない」と感じたという。その一方で、「彼女はすごく純粋だったし、でも純粋だから善良かというと必ずしもそうではない。その危うさとかが、彼女のカリスマ性の一つの要素だったのかな」と語った。
容疑を認めているという渡辺容疑者だが、1000人以上が手にしたというマニュアルにより次の犯罪が生まれたのも事実だ。この事件の危うさは、そこにある。(「Mr.サンデー」9月24日放送より)

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