【独自】東京学芸大学、一橋大学、桐朋学園でも…東京多摩地区の学校や病院で「基準値以上の発がん性物質検出の地下水」の使用が判明

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発がん性や子どもの発達への影響が指摘されるPFAS。そのPFASで汚染された地下水が、東京・多摩地区にある学校や病院で、飲み水や給食・病院食の調理に使われてきたという。関係者を直撃した。
有機フッ素化合物とは…有機フッ素化合物を総称してPFASと呼ぶ。約5000種類あるとされ、代表的なPFOS、PFOAは国内での製造・使用が禁止され、PFHxSも来年、規制対象となる。アメリカではPFOAを製造していたデュポン社の責任を問う裁判が’99年に起こされ、工場の周辺住民7万人を対象とした疫学調査が実施された。その結果、腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎、甲状腺疾患、脂質異常症、妊娠高血圧症の6つの疾患への影響が確認された。また、複数の専門家から、子どもの低体重や発達に関するリスクを高める、と指摘されている。
発がん性などが指摘されるPFAS(有機フッ素化合物)による汚染が注目を集めている。とくに、東京・多摩地区は全国でもっとも深刻なホットスポット(汚染地帯)となっている。このため、東京都水道局は11ヵ所の浄水所・給水所で、水道水源としていた地下水からの取水を止めた。地下水は動きが遅く、汚染がなかなか消えないためだ。
でも、汚染対策には死角があった。
専用水道と呼ばれる大型井戸をもつ学校や病院で、汚れた地下水が飲み水や給食の調理などに使われていたのだ。その結果、健康への影響を受けやすい子どもや病人たちが、分解されづらいPFASを体内に取り込んでしまうことになった。
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野球のワールド・ベースボール・クラシックでこの春、日本代表を世界一に導いた栗山英樹前監督の母校・東京学芸大学。キャンパスで使われる一日約7200トンの水は、大学が所有する大型井戸から汲み上げている。
昨年7月、保健所が調べたところ構内に二つある井戸のひとつが、国が定める水質管理の暫定目標値50ナノグラム(水1リットル中、PFOSとPFOAの合計)を上回っていた。
〈66ナノグラム〉
東京都で専用水道を管轄する福祉保健局(現・保健医療局)から届いた説明文には、こうあった。
〈PFOSおよびPFOAの目標値は(略)余裕のある数値に設定されています。このため、飲用水としての使用は直ちに健康影響を生じさせるものではありません〉
保健医療局によると、専用水道の設置者は水道法に基づく水質管理を求められるものの、遵守しなければならないのは「水質基準」に定められた51項目に限られる。PFOSとPFOAは水質基準より下の「水質管理目標設定項目」に位置づけられているため、目標値を超えても、飲み続けるかどうかの判断は設置者に委ねられるという。
構内には保育園、幼稚園、小学校、中学校もある。目標値は体重50キログラムの人が一日2リットル飲み続けても健康に影響がない、として弾き出されたもので、PFASは、子どもの発達への影響も指摘されている。
それでも、大学は利用を続けることを選んだ。汚染対策には経済的な負担が大きく、福祉保健局から「直ちに健康への影響はない」と説明されたためだった。
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ところが、1年後の今年7月、大学は方針転換する。汚染がひどい東井戸を止め、西井戸(14ナノグラム)だけを使うことにしたのだ。福祉保健局から、一転して取水停止を促されたためだという。通知は6月15日付。私が福祉保健局に見解をただした2日後に送られたものだった。
古くから専用水道を利用する一橋大学(国立市)ではこれまで、きわめて高い濃度のPFASが検出されてきた。’10年に233ナノグラム、’12年に327ナノグラム、そして、’19年には370ナノグラム。飲み水だけでなく、大学生協の食堂でも使われてきた。
しかし、厚労省が水質管理の目標値を初めて設けることとなり、’20年春、大学は地下水の利用をあきらめて水道水へ切り替えた。以降、年間の水道代は約1700万円にのぼるという。
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一橋大学のすぐ南にある桐朋学園(男子部門・小中高)では、2年前にポンプが故障して以来、専用水道からの取水を止めているという。保健所による水質検査では、国立市の地下水から562ナノグラムが検出されている(’20年)。
「水道水に切り替えたので目標値は下回っていますが、飲み水の濃度については公表していません。検出下限値の5ナノグラム未満なら『安心』といえるでしょうが、そうでないと評価が分かれて判断できないですから」(鈴木正義理事)
また、定期的な検査にも二の足を踏んでいる、と鈴木理事はいう。
「一回10万円以上、隔月でやっても年間60万円。それだけで生徒一人分の年間の授業料が消えてしまう。それでなくても水道代が年間600万円ほどかかる。それなのに、汚染された私どもが引き受けるほかないのです」
PFAS汚染の影響は経済的なものにとどまらない。
東久留米市の自由学園では、幼稚園から大学部まで広大な敷地の中にある。都心とは思えないほど豊かな環境のもと、専用水道から汲み上げる地下水は、生徒たち自身による給食や天然酵母のパンづくりのほか、野菜を育てる農場の水まきや中高生の寮生活でも使われている。学園は数値を公表していないが、保護者によると、独自調査の結果は今年3月に36ナノグラム、5月に34ナノグラムだった。このままでは、自然との共生を掲げる教育理念が揺らぎかねない、と村山順吉理事長はいう。
「いま目標値を下回っているのは確かですが、『汚染された水は飲みたくない』という理由から、入学する生徒離れを招かないとも限りません」
とはいえ、地域の災害拠点でもあり、地下水の利用をやめることは考えていないという。
後編記事『【発がん性物質検出・実名リスト】影響が指摘される「潰瘍性大腸炎」だった故安倍元首相の母校・成蹊学園でも…東京・多摩地区各施設の「対応の回答」と「疑われる汚染源」』に続く。
「週刊現代」2023年9月23日号より

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