高齢者に怒鳴られ、YouTuberに晒され…「無料PCR検査」スタッフの過酷すぎる「お仕事」

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夏のピーク時より落ち着いたとはいえ、新型コロナ感染者数はいまだに全国で5万人を超える日も珍しくない。そうした中、東京都内だけでも1200箇所を超える「無料PCR検査センター」が稼働している。
特に大きな駅や繁華街にほど近い検査センターには、老若男女さまざまな人たちが訪れ、ピーク時には「戦場」というべき状況に陥ったところもある。今回、編集部は東京都内の無料PCR検査センタースタッフからの情報提供を受け、複数の検査センターの内情を取材した。見えてきたのは、現場の驚くべき熾烈な実態だった……。
「俺は70歳なんだぞ。メールなんて持ってねえよ。登録できるわけねえだろ。なんとかならねえのか」
墨田区のある無料検査センターでは、高齢の男性が二十歳そこそこの学生アルバイトスタッフにすごんだ。検査を受けるためにまず必要な、ネットでの個人情報登録でいきなりつまづいているのだ。
Photo by iStock
スタッフは「うちは紙で結果をお送りしていないので、メールアドレスがないと結果が送信できないんです。ご家族やご友人のアドレスでも結構ですので、なんとかなりませんか?」と何度も確認する。しかし男性は、「ガラケーしかないんだよ。渡すからお前がやれ!」と怒鳴り続け、譲らない。困ったセンター側はとうとう地元の警察署に通報し、警官が訪れる事態に発展した。まさに暴走老人だ。スマホが使えない…このように大声を上げたりする迷惑なケースはさすがに少数派であるにしても、メールアドレスを持っていなかったり、スマホを持っていない、あるいは持っていても使いこなせず、そもそも検査自体を受けることができない高齢者は少なくないという。総務省が3月に発表した調査によると、昨年末時点でガラケーの契約件数はいまだ2074万件にも上る。ある携帯電話の業界関係者は「地方の高齢利用者が大半を占めると思われるが、携帯電話の契約総数はおよそ2億件だから、まだガラケーが全体の1割を占めている。スマホが普及しきった今どき驚くかもしれないが、これが現実です」と話す。もちろん東京といえども、かなりの数のガラケーユーザーがいることは間違いない。無料PCR検査センターの運営は多くが民間業者へ委託されているが、予算は税金で賄われる立派な公共事業だ。「情報格差(デジタルデバイド)」によって、サービスを受けられる人と受けられない人が出てくるのは、望ましいことではないだろう。取材に応じた墨田区のセンターの元スタッフがこう述懐する。 「私がセンターで高齢の方に接して感じたのは、高齢の方たちの間でも、新しい技術に通じている人と全くわからない人の間の格差がものすごいということです。ある70代後半の方はスマホを難なく使いこなしていましたが、雑談の中で『孫とLINEでのやりとりを楽しみたいから、自然と覚えた』とおっしゃっていました。スマホや新しい機器に関心があるとか、使いこなすセンスがあるかどうかだけでなく、家族や友人とのつながりといった環境の有無も、情報にアクセスできるかどうかを左右するのだと思います。怒鳴り散らしていた男性は、やり取りした限りでは、おひとりで暮らしている方のようです。今さら新しいコミュニケーション手段を学んで使いこなすのはめんどくさい、できないから関心を失い、さらに周囲とのつながりをなくす……という悪循環にハマっているのではないでしょうか」ある東京都庁の関係者は「PCR検査のような任意のサービスならともかく、これから大きな災害が起きた場合には、スマホで避難所などの情報を得るのが必須になる。行政がスマホやネット偏重になってゆくのは、それはそれで問題もある」と危機感を明かした。「はい店員さんオコでーす」一方で、スマホを使いこなしすぎて問題を起こす利用者もいるという。なんと、自撮り棒を構えながら検査センターに現れ、唾液採取の様子を実況中継するユーチューバーが少なくないというのだ。渋谷区の検査センターに勤める20代スタッフが語る。 「ある日、後ろの唾液採取ブースから『今、唾液出してます!ガンガン出てますよー!』と大声が聞こえたので、何事かと思って見てみると、なんとYouTubeで生放送していたんです。当然、店内は撮影禁止ですと言って止めたのですが、その様子まで『はーい、店員さん、オコでーす』とネタにする始末。あまり強硬な手段にも出られないので、『中の様子と他の利用者さんやスタッフの顔だけは映さないようにしてくださいね』と念押ししましたが、結局放送を止めることはできませんでした。そもそも、こんなことまでわざわざ中継して見る人がいるのかと驚きましたね。後から念のためYouTubeで動画を検索したら、アーカイブには残していないようで引っかかりませんでしたが、ヒヤヒヤしました」「迷惑系ユーチューバー」の存在が社会問題となって久しいが、速やかに検体を採取し立ち去るべき検査センターで、動画撮影など余計な行為をしては、感染拡大のリスクを高めることにもなりかねない。あらゆるものを動画コンテンツにするユーチューバーの台頭には、このコロナ禍での巣ごもりも関係しているに違いない。 さらに、東京都内有数のターミナル駅近辺のセンターでは、外国人、富裕層、さらには「ノーマスク・反検査」活動家まで現れ、まさにカオス状態に……その驚愕の実態を、後編記事『ノーマスク男と「コロナは風邪だ!」で口論に…「無料PCR検査」スタッフが困惑の告白』でひきつづきお伝えする。
スタッフは「うちは紙で結果をお送りしていないので、メールアドレスがないと結果が送信できないんです。ご家族やご友人のアドレスでも結構ですので、なんとかなりませんか?」と何度も確認する。
しかし男性は、「ガラケーしかないんだよ。渡すからお前がやれ!」と怒鳴り続け、譲らない。困ったセンター側はとうとう地元の警察署に通報し、警官が訪れる事態に発展した。まさに暴走老人だ。
このように大声を上げたりする迷惑なケースはさすがに少数派であるにしても、メールアドレスを持っていなかったり、スマホを持っていない、あるいは持っていても使いこなせず、そもそも検査自体を受けることができない高齢者は少なくないという。
総務省が3月に発表した調査によると、昨年末時点でガラケーの契約件数はいまだ2074万件にも上る。ある携帯電話の業界関係者は「地方の高齢利用者が大半を占めると思われるが、携帯電話の契約総数はおよそ2億件だから、まだガラケーが全体の1割を占めている。スマホが普及しきった今どき驚くかもしれないが、これが現実です」と話す。
もちろん東京といえども、かなりの数のガラケーユーザーがいることは間違いない。無料PCR検査センターの運営は多くが民間業者へ委託されているが、予算は税金で賄われる立派な公共事業だ。「情報格差(デジタルデバイド)」によって、サービスを受けられる人と受けられない人が出てくるのは、望ましいことではないだろう。取材に応じた墨田区のセンターの元スタッフがこう述懐する。
「私がセンターで高齢の方に接して感じたのは、高齢の方たちの間でも、新しい技術に通じている人と全くわからない人の間の格差がものすごいということです。ある70代後半の方はスマホを難なく使いこなしていましたが、雑談の中で『孫とLINEでのやりとりを楽しみたいから、自然と覚えた』とおっしゃっていました。スマホや新しい機器に関心があるとか、使いこなすセンスがあるかどうかだけでなく、家族や友人とのつながりといった環境の有無も、情報にアクセスできるかどうかを左右するのだと思います。怒鳴り散らしていた男性は、やり取りした限りでは、おひとりで暮らしている方のようです。今さら新しいコミュニケーション手段を学んで使いこなすのはめんどくさい、できないから関心を失い、さらに周囲とのつながりをなくす……という悪循環にハマっているのではないでしょうか」ある東京都庁の関係者は「PCR検査のような任意のサービスならともかく、これから大きな災害が起きた場合には、スマホで避難所などの情報を得るのが必須になる。行政がスマホやネット偏重になってゆくのは、それはそれで問題もある」と危機感を明かした。「はい店員さんオコでーす」一方で、スマホを使いこなしすぎて問題を起こす利用者もいるという。なんと、自撮り棒を構えながら検査センターに現れ、唾液採取の様子を実況中継するユーチューバーが少なくないというのだ。渋谷区の検査センターに勤める20代スタッフが語る。 「ある日、後ろの唾液採取ブースから『今、唾液出してます!ガンガン出てますよー!』と大声が聞こえたので、何事かと思って見てみると、なんとYouTubeで生放送していたんです。当然、店内は撮影禁止ですと言って止めたのですが、その様子まで『はーい、店員さん、オコでーす』とネタにする始末。あまり強硬な手段にも出られないので、『中の様子と他の利用者さんやスタッフの顔だけは映さないようにしてくださいね』と念押ししましたが、結局放送を止めることはできませんでした。そもそも、こんなことまでわざわざ中継して見る人がいるのかと驚きましたね。後から念のためYouTubeで動画を検索したら、アーカイブには残していないようで引っかかりませんでしたが、ヒヤヒヤしました」「迷惑系ユーチューバー」の存在が社会問題となって久しいが、速やかに検体を採取し立ち去るべき検査センターで、動画撮影など余計な行為をしては、感染拡大のリスクを高めることにもなりかねない。あらゆるものを動画コンテンツにするユーチューバーの台頭には、このコロナ禍での巣ごもりも関係しているに違いない。 さらに、東京都内有数のターミナル駅近辺のセンターでは、外国人、富裕層、さらには「ノーマスク・反検査」活動家まで現れ、まさにカオス状態に……その驚愕の実態を、後編記事『ノーマスク男と「コロナは風邪だ!」で口論に…「無料PCR検査」スタッフが困惑の告白』でひきつづきお伝えする。
「私がセンターで高齢の方に接して感じたのは、高齢の方たちの間でも、新しい技術に通じている人と全くわからない人の間の格差がものすごいということです。ある70代後半の方はスマホを難なく使いこなしていましたが、雑談の中で『孫とLINEでのやりとりを楽しみたいから、自然と覚えた』とおっしゃっていました。
スマホや新しい機器に関心があるとか、使いこなすセンスがあるかどうかだけでなく、家族や友人とのつながりといった環境の有無も、情報にアクセスできるかどうかを左右するのだと思います。怒鳴り散らしていた男性は、やり取りした限りでは、おひとりで暮らしている方のようです。
今さら新しいコミュニケーション手段を学んで使いこなすのはめんどくさい、できないから関心を失い、さらに周囲とのつながりをなくす……という悪循環にハマっているのではないでしょうか」
ある東京都庁の関係者は「PCR検査のような任意のサービスならともかく、これから大きな災害が起きた場合には、スマホで避難所などの情報を得るのが必須になる。行政がスマホやネット偏重になってゆくのは、それはそれで問題もある」と危機感を明かした。
一方で、スマホを使いこなしすぎて問題を起こす利用者もいるという。なんと、自撮り棒を構えながら検査センターに現れ、唾液採取の様子を実況中継するユーチューバーが少なくないというのだ。渋谷区の検査センターに勤める20代スタッフが語る。
「ある日、後ろの唾液採取ブースから『今、唾液出してます!ガンガン出てますよー!』と大声が聞こえたので、何事かと思って見てみると、なんとYouTubeで生放送していたんです。当然、店内は撮影禁止ですと言って止めたのですが、その様子まで『はーい、店員さん、オコでーす』とネタにする始末。あまり強硬な手段にも出られないので、『中の様子と他の利用者さんやスタッフの顔だけは映さないようにしてくださいね』と念押ししましたが、結局放送を止めることはできませんでした。そもそも、こんなことまでわざわざ中継して見る人がいるのかと驚きましたね。後から念のためYouTubeで動画を検索したら、アーカイブには残していないようで引っかかりませんでしたが、ヒヤヒヤしました」「迷惑系ユーチューバー」の存在が社会問題となって久しいが、速やかに検体を採取し立ち去るべき検査センターで、動画撮影など余計な行為をしては、感染拡大のリスクを高めることにもなりかねない。あらゆるものを動画コンテンツにするユーチューバーの台頭には、このコロナ禍での巣ごもりも関係しているに違いない。 さらに、東京都内有数のターミナル駅近辺のセンターでは、外国人、富裕層、さらには「ノーマスク・反検査」活動家まで現れ、まさにカオス状態に……その驚愕の実態を、後編記事『ノーマスク男と「コロナは風邪だ!」で口論に…「無料PCR検査」スタッフが困惑の告白』でひきつづきお伝えする。
「ある日、後ろの唾液採取ブースから『今、唾液出してます!ガンガン出てますよー!』と大声が聞こえたので、何事かと思って見てみると、なんとYouTubeで生放送していたんです。当然、店内は撮影禁止ですと言って止めたのですが、その様子まで『はーい、店員さん、オコでーす』とネタにする始末。
あまり強硬な手段にも出られないので、『中の様子と他の利用者さんやスタッフの顔だけは映さないようにしてくださいね』と念押ししましたが、結局放送を止めることはできませんでした。そもそも、こんなことまでわざわざ中継して見る人がいるのかと驚きましたね。後から念のためYouTubeで動画を検索したら、アーカイブには残していないようで引っかかりませんでしたが、ヒヤヒヤしました」
「迷惑系ユーチューバー」の存在が社会問題となって久しいが、速やかに検体を採取し立ち去るべき検査センターで、動画撮影など余計な行為をしては、感染拡大のリスクを高めることにもなりかねない。あらゆるものを動画コンテンツにするユーチューバーの台頭には、このコロナ禍での巣ごもりも関係しているに違いない。
さらに、東京都内有数のターミナル駅近辺のセンターでは、外国人、富裕層、さらには「ノーマスク・反検査」活動家まで現れ、まさにカオス状態に……その驚愕の実態を、後編記事『ノーマスク男と「コロナは風邪だ!」で口論に…「無料PCR検査」スタッフが困惑の告白』でひきつづきお伝えする。
さらに、東京都内有数のターミナル駅近辺のセンターでは、外国人、富裕層、さらには「ノーマスク・反検査」活動家まで現れ、まさにカオス状態に……その驚愕の実態を、後編記事『ノーマスク男と「コロナは風邪だ!」で口論に…「無料PCR検査」スタッフが困惑の告白』でひきつづきお伝えする。

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