姉を殺害して通帳奪った容疑の妹、「借金返済」名目で知人に数千万円渡す…搾取され続けたか

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福岡県水巻町で女性を殺害して通帳を奪ったなどとして、女性の妹やその知人ら女3人が強盗殺人容疑で逮捕された事件で、3人が「金を得ようと事前に計画した」という趣旨の供述をしていることが捜査関係者への取材でわかった。
妹は「姉に金を借りに行って通帳をもらったが、殺していない」、知人は「まさか殺してまで奪ってくるとは思わなかった」と、いずれも強盗の犯意や殺害を否定している。妹は知人に長年、実態のない借金の返済名目などで数千万円を渡してきたとみられ、県警はいびつな人間関係が事件の背景にあるとみている。
■公園で寝泊まり
「小銭を稼いでは渡していたみたいだが、なぜそこまでしなければならなかったのか……」
殺害されたパート従業員辻つぐみさん(52)の妹、辻和美被告(51)が逮捕後に供述したのは、十数年にわたって知人の岡村恵美容疑者(46)に金を渡してきたという内容だった。捜査関係者は、2人の異様な関係性に首をひねる。
捜査関係者などによると、2人は約20年前、同県遠賀町の職場で知り合ったとみられる。その後、和美被告は知人やヤミ金融から借金を重ねるようになり、夫や子どもを残して「失踪」。辻さんら親族との音信も途絶えていたという。
和美被告と中学校で同学年だった男性は17年ほど前、一度も話したことがなかった同被告から金を無心するような電話があり、驚いたという。男性は「同級生らに手当たり次第、電話していたようだ」と話す。高校で同学年だった女性も「友人の間で『お金を貸したらいけない』とうわさになっていた」と明かす。
失踪後の和美被告は、北九州市内の公園などで寝泊まりしながら日銭を稼いでいたという。得た金の大半を受け取っていたとみられるのが、岡村容疑者だ。
■脅迫はなし
捜査関係者によると、和美被告は「多い時には毎日、数千円を渡していた」と供述。主な名目は「借金の返済」や「身の回りの世話代」だったというが、実際に借金していた形跡はないという。捜査関係者は「岡村容疑者による脅迫はなかったようで、言葉巧みに金を工面しないといけないと信じ込ませていた」とみる。
岡村容疑者は夫と離婚しており、長女の愛香容疑者(24)らと北九州市小倉北区の市営住宅で暮らし、生活保護を受給していた。親子で飼い犬と外出する姿を住民らが目撃していた。
近くの住民によると、岡村容疑者が月に1度の町内の清掃に参加したことはなく、町内会費(月600円)を6月分から滞納するようになったという。ある住民は「普段は優しいが、突然食ってかかってくるような一面があった」と語る。
■事件後に合流
携帯電話の解析で、3人は事件前後に頻繁に連絡を取っていたことも判明。捜査によって、3人の役割分担も分かってきた。
防犯カメラ映像の解析などの結果、県警は殺害の実行行為に関与したのは和美被告だけだったとみている。事件後は辻さんの預金口座からほぼ全額の約74万円を引き出したとみられる。だが、9日後に同市内で県警に身柄を確保された同被告の所持金は、1000円程度だった。
金の大半は岡村容疑者親子に渡ったとみられている。事件数日前、親子は辻さんが縛られていた結束バンドの購入に関わり、現場付近まで和美被告を車で送っていた。事件後には金を引き出した同被告と車で合流したことも確認された。親子は事件後、数十万円の買い物をしていたという。
県警は長期にわたって和美被告から金を得ていたことから、岡村容疑者が事件を主導した可能性があるとみている。
岡村容疑者について聞かれると、「対等な友人」との認識を示しているという和美被告。県警は「岡村容疑者に搾取され続ける異様な関係」(捜査関係者)が事件に至る背景にあったとみて、全容解明を急ぐ。
【事件の概要】
6月5日夜、福岡県水巻町の町営住宅で辻つぐみさんが遺体で発見された。死因は窒息。県警は8月18日、辻和美被告、岡村恵美、愛香両容疑者を強盗殺人容疑で逮捕した。3人は共謀し、6月2日昼頃、辻さん宅で辻さんの首を絞めて殺害し、預金通帳などを奪った疑い。和美被告はこの通帳を使って金を引き出したとして、同12日に詐欺と有印私文書偽造・同行使の両容疑で逮捕され、その後、起訴されていた。

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