《ヘッドギアをつけさせて「麻原彰晃みたい」と嘲笑》《「スモウ」と称して虐待》「鬼母」が愛息に行った凄惨すぎる「しつけ」の一部始終【埼玉・本庄5歳児虐待死事件】

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2022年3月、埼玉県本庄市の民家の床下から腐敗した男児の遺体が発見された。その後、死体遺棄などの罪で逮捕されたのは実母とその同居人の男女だった――。
「埼玉・本庄5歳児虐待死事件」の裁判員裁判が8月26日からさいたま地方裁判所ではじまった。そこで明らかとなった、実母を含めた大人たちにより「しつけ」と称して行われていた、凄惨な虐待の数々とは。
「舐めてんだ。毎日泣けばいいと思ってんだろ?いい加減にしろ!」
そう話しながら、柿本知香被告(31歳)が長男の歩夢くん(当時4歳)の顔を平手で叩くと、子どもの泣き声が静かな法廷に響いた――。
証拠として裁判で提出された虐待動画の一部始終だ。撮影されたのは2021年1月31日。ペット用監視カメラに保存されていたものだ。
初公判の傍聴券を求め、さいたま地裁前に並ぶ人々
執拗なまでの虐待を行っていたのは母親だけではなかった。
同じ室内にいた知香被告の同居人、石井陽子被告(55歳)が「選手交代」と告げて歩夢くんに近づくと、その顔を平手で殴り、着衣を掴んでその場へと引っ張り倒す。
その後、知香が歩夢くんに近づいて平手で叩いた。石井も再度歩夢くん近づき、両手で顔を挟むようにして撫でた上で、顔を叩く――。
1年後の2022年1月18日、歩夢くんが虐待死するまで暴力は続いた。
知香被告と石井被告に加え、石井被告の内縁の夫で同居人の丹羽洋樹被告(36歳)の3人から暴力を受け続けたのち、歩夢くんの亡骸は4人が暮らしていた家の床下に埋められた。
知香被告・歩夢くん親子と、石井・丹羽両被告に血縁関係はない。だが、知香被告親子が石井・丹羽方に転がりこみ、4人による奇妙な同居生活が始まったのは冒頭の動画が撮影された直前のこと。
以来、大人たちは「しつけ」と称して、日常的に歩夢くんに対して叱責したり、数々の暴力行為を行っていた。石井被告が知香被告や丹羽被告に虐待を指示することもあれば、各々が直接手を出すこともあったという。
「歩夢くんは知香のことが大好きで仲のいい普通の親子でした。知香さんは叱ることはあっても暴力をふるっていたところは見たことがありません……」
知香被告のママ友で一家と親交のあったA子さんは同居前の様子について、こう証言した。
では、なぜ愛する息子に耐えがたい暴力をふるうようになったのか。
知香被告と歩夢くんが、石井・丹羽両被告と同居を開始する前のこと――知香被告は夫のDVから逃げ、半年ほどA子さん宅に居候していた。大阪府にあった実家の両親とは勘当状態だったためだ。
しかし、A子さんとの折り合いが悪くなり、出ていくことに。この時、「部屋があまっているからうちにきたらいいよ」と誘ったのが、石井被告だ。
もともと、A子さんの知人だった石井・丹羽両被告。知香被告はA子さんの紹介で2人と知り合っていた。
石井被告は当初、自らを「丹羽葵」と名乗り、「年齢は丹羽被告の一歳年下」「実家は裕福で、元保育士で子育てに詳しい」と説明していたという。
「冬場、自転車の後部座席に歩夢を座らせていました。歩夢にひざ掛けをかけていたことに石井さんが気づいて、『子どもにちゃんとしていて偉いね』と声をかけられました。うれしかった」(知香被告)
上品な雰囲気で優しい石井被告に、知香被告は信頼を寄せていくことになる。
そして同居が開始した直後から歩夢くんへの「しつけ」が始まった。
歩夢くんが返事をしない、挨拶をしない、食べるのが遅い、トイレに失敗する、といったことに対し、石井被告が腹を立てたのがきっかけだ。
「住み始めてすぐに石井さんの『しつけ』は厳しくなった。やりすぎじゃないか、逆効果だと考えた」(知香被告)
しかし、石井被告に意見したり、歩夢くんを暴力から守ることはなかった。反論すれば「面倒を見られない」「出て行ってもらう」などと言われ、行き場のない知香被告は歩夢くんと2人、放り出されることを怖れていたからだ。
おまけに「元保育士で子育てに詳しい」という石井被告の言葉を真に受け、暴力を容認していくことになる。それどころか自らも指示されるまま虐待に加担していくことになった。
「(同居前は)叱ることはあっても手をあげたことはない。叩くことはなかった」と述べていた知香被告。では、同居から1ヵ月もたたないうちに暴力を振るうようになった理由は何か。
「石井さんから『厳しくしないとダメ』『ぺチン(編集部注・平手打ちのことだと思われる)しなきゃダメ』と言われていました」(知香被告)
弁護士から尋ねられると知香被告は次のように話していた。
「石井さんは元保育士で子育てに詳しいと話していて、しつけ方を厳しくしないといけないといわれていました。それに暴力も手加減すると石井や丹羽さんが出てくるので、私が厳しくしないといけない。やりすぎてるな、とは思っていたけど、(石井被告に)手を抜いて(いるように)見えてはだめだろうと思った」
石井被告や丹羽被告の暴力から守るために、愛息に暴力をふるったと説明する。しかし、いくら「息子のため」だからといって、暴力を容認することはあってはならないはずだ。
歩夢くんに対する非道な虐待は枚挙にいとまがない。
歩夢くんが挨拶をしなかったことに腹を立てた石井被告は知香被告に、高さ70センチの黒いプラスチック製の樽の中に歩夢くんを入れることを指示。ラグビーをしていた丹羽被告が使っていたもので、怖い思いをすれば言うことを聞くようになると考えたからだ。
知香被告が歩夢くんを樽に入れ、ふたを閉めた。
黒い樽の中は真っ暗になる。
それを丹羽被告は横に倒すと知香被告と共に転がしたり、叩いたり、大きな声を出したり。
また別の日には、歩夢くんが返事をしなかったという理由で「足を掴んで逆さ吊りにしろ」と石井被告が知香被告に指示。石井被告と知香被告は2人がかりで歩夢くんを逆さ吊りにして複数回、揺りまわした。そして頭から床におろしたという。
猫用の手製のケージに閉じ込め、大人3人で外出したこともあった。
「ケージに入れたことがびっくりした。やりすぎではないのか、と思った」(知香被告)
だが、それを伝えることもできなかった。
「言えなかった。2人(石井被告と丹羽被告)とも怖いので」(知香被告)
そして歩夢くんが死亡するきっかけとなった「スモウ」暴行へと続いていく。
「スモウ」とは正面から向かいあい、腕を掴み足を払って歩夢くんをその場へと転ばせる行為のこと。本来の相撲とは意味とは異なるが、この3人は「痛い思いさせて言うことをきかせることに効果的だった」この行為を「スモウ」と呼び、「しつけ」の一つとして取り入れていた。
事件2日前の2022年1月16日、歩夢くんが寝る前の挨拶をしないことに腹を建てた石井被告が知香被告にこう提案した。
「スモウの時間だよ、お母さん」
知香被告は歩夢くんと向き合うと腕を掴み、足を払う。歩夢くんは床に倒れた。
丹羽被告は倒れた歩夢くんの身体を立たせると再び知香被告が腕を掴み、倒す。
法廷で流された録音データには、歩夢くんが投げ飛ばされていたであろう、「ドスン」という大きな音が複数回聞こえた。
さらに大人たちは歩夢くんを責めるような言動を浴びせかけ、時には嘲笑った。痛みと恐怖で泣きじゃくる歩夢くんを誰も助けることはしなかった。
それどころか、頭部を護るためにつけさせたヘッドギア姿の歩夢くんに対しては「麻原彰晃みたい」(石井被告)と言って笑っていた。
一方、石井被告と丹羽被告はスモウ暴行を行う知香被告に対して「頑張れ、頑張れ」とか「知香ファイトー」などと言って暴行への励ましまで送っていたのだ。倒すたびに「よし!」といい、抵抗できない歩夢くんを投げ飛ばし続けた。
「(頑張れって言われたことについては)頑張ってしつけをしろってことだと思った。やり方が違うって言われても何が正解だったかわからなかった」(知香被告)
歩夢くんの頬は赤く腫れ、泣きじゃくりながら「痛い」と漏らしていた。
虐待の末に歩夢くんは死に至る――。その後、3人は遺体を床下に埋め、何食わぬ顔で生活を続けた。
非道な行為を繰り返した挙句、死者の尊厳をも踏みにじる大人たちの鬼畜ともいうべき行為については、後編記事『《白目をむいて苦しんでも放置》《埋葬した亡骸の上で日常生活》息子を見殺しにした「鬼母」のヤバすぎる所業』で紹介する。

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