「日本はストライキが少ない」一体なぜ? そごう・西武で注目…「今は少ないという方が適切」専門家が指摘する時代の変化

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

大手百貨店そごう・西武池袋本店(東京都豊島区)で2023年8月31日、労働組合によるストライキが決行され、同館は臨時休業となった。1962年の阪神百貨店以来、61年ぶりの大手百貨店でのストライキである。
X(ツイッター)では「日本も欧米諸国のように、デモやストライキが当たり前に行われる社会になるべき」「ストライキは全ての労働者が持ってる正当な権利。だが、その権利を行使する人は日本では非常に少ない」といった声があがっている。実際のところ日本はストライキが少ないのだろうか。そうであれば、なぜ少ないのか。さらには、その日本で今回なぜ大規模なストライキが起きたのか。J-CASTニュースは、元労働基準監督官でアヴァンテ社会保険労務士事務所代表の小菅将樹氏に詳しい話を聞いた。
複数報道によると、親会社のセブン&アイ・ホールディングスがそごう・西武を米国投資ファンドに売却する方針を決め、調整を進めていた。ストライキは雇用などの懸念から行われ、そごう・西武労組の組合員のうち、池袋本店に勤める正社員や契約社員約900人が出勤を取りやめた。
日本経済新聞2月24日付記事によると、アメリカでは労働者によるストライキが増えており、22年は12万人超が参加した。21年から5割増加し、23年も頻発する可能性があるという。
フランスメディア「ユーロニュース」3月7日付記事によると、ストライキはヨーロッパの労働文化において重要で、スペインやドイツを含む複数のEU加盟国の人々は、主に賃金と労働条件の改善を求めてストライキをしている。
欧米に比べ、日本ではストライキが少ないのか。小菅氏は「今は少ないという方が適切でしょう」と述べる。今でこそストライキは注目される珍しい事態だと捉えられるが、歴史を遡れば珍しいものではなかったという。
小菅氏によると、その背景には産業構造の大きな変化がある。1960~70年代は、労働組合が会社と話し合い、自分たちの労働条件や雇用を守ってきた。高度経済成長期は製造、建設系の業種が特に大きく成長したが、「労働者が団結して自分たちの権利を守りつつ、その代わり仕事も頑張る時代」だったという。
現在は製造業が伸び悩み、新規産業が次々出てきて、人手不足になっている。そのため労働組合で団結するというより、労働者と使用者が協調関係にあるという。会社の理念に納得できる人が入社し、何か問題があれば、個別的な労働関係、つまり労働者個人と会社で話し合う。うまくいかなければ、裁判などをするケースが「圧倒的に多い」という。
欧米と比べるより、「日本の中で時代とともに変わっていった」と考える方がわかりやすいという。
小菅氏は、現在は「労働組合が強い会社は珍しい」と言われていると指摘する。ストライキも辞さない姿勢の組合の方が少ないという。
では、なぜ西武池袋本店で大規模ストライキが起きたのだろうか。小菅氏は「親会社の決断が雇用に与える影響が大きすぎたということがあると思います」と説明する。
労働者は働く場がなくなることを危惧しており、 経営陣から十分な説明がなされておらず、自分たちの行く末が配慮されていないと感じたのではないかと指摘。労働者は、使用者に対抗したいわけではないだろうと推察する。
歴史ある百貨店であるからこそ、そこで働いている人たちの思いは強いのではないかと指摘する。
セブン&アイHDは9月1日、米国投資ファンドへのそごう・西武の売却が完了したと発表。そごう西武の企業価値は2200億円だが、負債などにかかる調整をした譲渡価額は8500万円の見込みだとしている。
複数報道によると、西武池袋本店は1日、通常営業を再開している。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。