「どうやらオソで間違いない」ついに捕らえた! 32頭の牛を殺した謎のヒグマをハンターが仕留めるまでの“一部始終”

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〈「一度味を覚えたら、必ずまたやる」今年も子牛が“怪物ヒグマ”OSO18に背中を食われ…対策班リーダーが見た“異変”〉から続く
正直、この結末は予想していなかった。
【画像】捕獲が確認され、変わり果てた「OSO18」の姿
〈牛66頭を襲ったヒグマ「オソ18」駆除か 釧路町の牧場〉
8月21日深夜、北海道新聞が〈速報〉として報じた内容を読んで、しばし脱力感に見舞われた。
今年7月、私は文春オンラインにおいて、この「OSO18」に関する一連の記事を公開した。これらの記事に登場する「OSO18特別対策班」リーダーの藤本靖や、その盟友で現役最強のヒグマハンターの赤石正男の話から、「OSO包囲網」が確実に狭まっていることは感じていたが、66頭もの牛を襲い32頭を死に至らしめたヒグマが、まさか誰にもその正体を知られぬままに駆除され、食肉として出荷されるという「最終決着」は思い描いたこともなかった。(全2回の1回目/後編に続く)
牛を襲い続けたOSO18の姿(標茶町提供) 時事通信社
◆◆◆
北海道新聞などの報道によるとOSOが駆除されたのは7月30日のこと。その2日ほど前から釧路町内の牧場附近でクマが目撃されていたため、釧路町では当該クマの有害駆除を決定。最終的にこれを駆除したハンターは、釧路町役場で鳥獣保護対策を担当する40代男性職員だった。その顛末は以下のようなものだったという。
〈〈7月30日午前5時ごろ、男性は町内の牧場を訪れ、近くの牧草地でヒグマ1頭が地面に伏せているのを見つけた。約80メートルの距離まで近づいて銃の引き金を引いた。男性はヒグマをオソだと思わず、死骸を釧路管内の食肉処理業者に運び、体毛をDNA型鑑定に出した。DNAがオソのものと一致したのは、駆除から2週間以上も後のことだった〉(北海道新聞、2023年8月23日付)〉
釧路町役場によると、この“職員ハンター”がヒグマを獲るのは初めてとのことだった。
体重は330キロのオスで、正確な年齢は、死骸を処理してしまったので不明である。
第一報の後、私は「OSO18特別対策班」リーダーの藤本にメールを入れた。折悪しく藤本は釧路市の病院で悪性リンパ腫と戦っている最中で、さすがに深夜、電話をかけるのははばかられたためだ。この時点ではまだ当該クマがOSOだという確証はなかったが、翌朝、藤本から細切れの返信があった。
〈どうやらオソで間違いないようです〉〈呆気ない幕切れです〉〈こんなものでしょう 笑〉〈どんな形でも獲れればいいんです! 農家の方が安心するのが一番です〉……対策班リーダーとして昨年から本格的にOSOを追い始め、ようやく「今年の夏には」と手ごたえを感じていただけに、複雑な思いはあるはずだが、藤本の言う通り、既に数千万円単位の被害を受けている酪農業関係者のことを考えれば、どんなエンディングであっても歓迎すべきなのは確かだ。
「もちろんこれだけ長い時間と労力をかけて追ってきたので、私たちが捕獲できなかったのは残念な気持ちはあります。ただこれですべてが終わったわけではないですし、まだまだ検証し、今後の対策を講じていく必要があるのです」(藤本) もっとも彼らがOSOの駆除を許可されているのは被害が集中していた標茶町と厚岸町に限られており、釧路町はそもそも駆除の許可外ではあった。一方で、当初藤本が指定していたOSOの探索区域に今回の捕獲場所は、しっかりと示されてもいた。 今回OSOが現れた釧路町は、標茶町と厚岸町からは釧路湿原を挟んで直線距離で40キロから50キロ、南に下ったところにある。オスのヒグマは一日に10数キロ移動することもあるので、行動範囲内ではあるが、釧路町のハンターが目の前のヒグマとOSOを結びつけられないのも無理はないほどには離れている。 なぜOSOはこれまでの「狩場」を捨てたのだろうか。その理由は今年に入ってから藤本らが追ってきたOSOの動きを時系列で整理するとうっすらと見えてくる。子牛は背中の肉を食われ死んでいた・6月24日 標茶町上チャンベツの牧場で生後14ヵ月の乳牛が背中の肉を食われ死亡。今年に入り初めてのOSOによる乳牛被害となる。・6月25日 前日の襲撃地点から南に10キロ離れた標茶町の町有林のセンサーカメラに木に背中をこすりつけるOSOの鮮明な姿が初めて捉えられる。→木に仕掛けられた「ヘアトラップ」で採取した体毛のDNA鑑定でOSOと判明。・7月1日 上チャンベツの襲撃現場に再びOSOが現れる。・7月16日 アレキナイから上尾幌方面へと向かうOSOの足跡を発見。・7月30日 駆除 昨年までの対策班は、とにかくOSOに関する情報をひとつでも多く集める「攻めの探索」を行っていたが、今年はその結果得られた情報をもとに「攻めから待ち」へと作戦変更をしていたという。具体的には、ここ数年、必ず牛の襲撃が起きるアレキナイを中心に「ヘアトラップ」と定点カメラを増設し、OSO包囲網を形成していたのである。 前出の7月の記事において、藤本は定点カメラの映像分析から、今年は中チャンベツからアレキナイにかけてOSOを上回る体重400キロクラスのクマが〈ゴロゴロ〉来ていると指摘していた。クマは自分より大きいクマは避ける傾向がある。そして実際に今年最初の襲撃(6月24日)は中チャンベツより手前の上チャンベツで起きた。当然、藤本らは近辺にくくり罠(ワイヤーの「輪」の中に獲物が足を踏み入れるとバネが作動し、獲物の足を一気に締める罠)を仕掛けるなどして次なる出現に備えていた。(後編に続く)〈ライフルで首に1発、頭に2発…“怪物ヒグマ”OSO18はなぜ逃げなかった? “最期のシーン”に隠された謎を追う〉へ続く(伊藤 秀倫)
「もちろんこれだけ長い時間と労力をかけて追ってきたので、私たちが捕獲できなかったのは残念な気持ちはあります。ただこれですべてが終わったわけではないですし、まだまだ検証し、今後の対策を講じていく必要があるのです」(藤本)
もっとも彼らがOSOの駆除を許可されているのは被害が集中していた標茶町と厚岸町に限られており、釧路町はそもそも駆除の許可外ではあった。一方で、当初藤本が指定していたOSOの探索区域に今回の捕獲場所は、しっかりと示されてもいた。
今回OSOが現れた釧路町は、標茶町と厚岸町からは釧路湿原を挟んで直線距離で40キロから50キロ、南に下ったところにある。オスのヒグマは一日に10数キロ移動することもあるので、行動範囲内ではあるが、釧路町のハンターが目の前のヒグマとOSOを結びつけられないのも無理はないほどには離れている。 なぜOSOはこれまでの「狩場」を捨てたのだろうか。その理由は今年に入ってから藤本らが追ってきたOSOの動きを時系列で整理するとうっすらと見えてくる。子牛は背中の肉を食われ死んでいた・6月24日 標茶町上チャンベツの牧場で生後14ヵ月の乳牛が背中の肉を食われ死亡。今年に入り初めてのOSOによる乳牛被害となる。・6月25日 前日の襲撃地点から南に10キロ離れた標茶町の町有林のセンサーカメラに木に背中をこすりつけるOSOの鮮明な姿が初めて捉えられる。→木に仕掛けられた「ヘアトラップ」で採取した体毛のDNA鑑定でOSOと判明。・7月1日 上チャンベツの襲撃現場に再びOSOが現れる。・7月16日 アレキナイから上尾幌方面へと向かうOSOの足跡を発見。・7月30日 駆除 昨年までの対策班は、とにかくOSOに関する情報をひとつでも多く集める「攻めの探索」を行っていたが、今年はその結果得られた情報をもとに「攻めから待ち」へと作戦変更をしていたという。具体的には、ここ数年、必ず牛の襲撃が起きるアレキナイを中心に「ヘアトラップ」と定点カメラを増設し、OSO包囲網を形成していたのである。 前出の7月の記事において、藤本は定点カメラの映像分析から、今年は中チャンベツからアレキナイにかけてOSOを上回る体重400キロクラスのクマが〈ゴロゴロ〉来ていると指摘していた。クマは自分より大きいクマは避ける傾向がある。そして実際に今年最初の襲撃(6月24日)は中チャンベツより手前の上チャンベツで起きた。当然、藤本らは近辺にくくり罠(ワイヤーの「輪」の中に獲物が足を踏み入れるとバネが作動し、獲物の足を一気に締める罠)を仕掛けるなどして次なる出現に備えていた。(後編に続く)〈ライフルで首に1発、頭に2発…“怪物ヒグマ”OSO18はなぜ逃げなかった? “最期のシーン”に隠された謎を追う〉へ続く(伊藤 秀倫)
今回OSOが現れた釧路町は、標茶町と厚岸町からは釧路湿原を挟んで直線距離で40キロから50キロ、南に下ったところにある。オスのヒグマは一日に10数キロ移動することもあるので、行動範囲内ではあるが、釧路町のハンターが目の前のヒグマとOSOを結びつけられないのも無理はないほどには離れている。
なぜOSOはこれまでの「狩場」を捨てたのだろうか。その理由は今年に入ってから藤本らが追ってきたOSOの動きを時系列で整理するとうっすらと見えてくる。
・6月24日 標茶町上チャンベツの牧場で生後14ヵ月の乳牛が背中の肉を食われ死亡。今年に入り初めてのOSOによる乳牛被害となる。
・6月25日 前日の襲撃地点から南に10キロ離れた標茶町の町有林のセンサーカメラに木に背中をこすりつけるOSOの鮮明な姿が初めて捉えられる。
→木に仕掛けられた「ヘアトラップ」で採取した体毛のDNA鑑定でOSOと判明。
・7月1日 上チャンベツの襲撃現場に再びOSOが現れる。
・7月16日 アレキナイから上尾幌方面へと向かうOSOの足跡を発見。
・7月30日 駆除
昨年までの対策班は、とにかくOSOに関する情報をひとつでも多く集める「攻めの探索」を行っていたが、今年はその結果得られた情報をもとに「攻めから待ち」へと作戦変更をしていたという。具体的には、ここ数年、必ず牛の襲撃が起きるアレキナイを中心に「ヘアトラップ」と定点カメラを増設し、OSO包囲網を形成していたのである。 前出の7月の記事において、藤本は定点カメラの映像分析から、今年は中チャンベツからアレキナイにかけてOSOを上回る体重400キロクラスのクマが〈ゴロゴロ〉来ていると指摘していた。クマは自分より大きいクマは避ける傾向がある。そして実際に今年最初の襲撃(6月24日)は中チャンベツより手前の上チャンベツで起きた。当然、藤本らは近辺にくくり罠(ワイヤーの「輪」の中に獲物が足を踏み入れるとバネが作動し、獲物の足を一気に締める罠)を仕掛けるなどして次なる出現に備えていた。(後編に続く)〈ライフルで首に1発、頭に2発…“怪物ヒグマ”OSO18はなぜ逃げなかった? “最期のシーン”に隠された謎を追う〉へ続く(伊藤 秀倫)
昨年までの対策班は、とにかくOSOに関する情報をひとつでも多く集める「攻めの探索」を行っていたが、今年はその結果得られた情報をもとに「攻めから待ち」へと作戦変更をしていたという。具体的には、ここ数年、必ず牛の襲撃が起きるアレキナイを中心に「ヘアトラップ」と定点カメラを増設し、OSO包囲網を形成していたのである。
前出の7月の記事において、藤本は定点カメラの映像分析から、今年は中チャンベツからアレキナイにかけてOSOを上回る体重400キロクラスのクマが〈ゴロゴロ〉来ていると指摘していた。クマは自分より大きいクマは避ける傾向がある。そして実際に今年最初の襲撃(6月24日)は中チャンベツより手前の上チャンベツで起きた。当然、藤本らは近辺にくくり罠(ワイヤーの「輪」の中に獲物が足を踏み入れるとバネが作動し、獲物の足を一気に締める罠)を仕掛けるなどして次なる出現に備えていた。(後編に続く)〈ライフルで首に1発、頭に2発…“怪物ヒグマ”OSO18はなぜ逃げなかった? “最期のシーン”に隠された謎を追う〉へ続く(伊藤 秀倫)
前出の7月の記事において、藤本は定点カメラの映像分析から、今年は中チャンベツからアレキナイにかけてOSOを上回る体重400キロクラスのクマが〈ゴロゴロ〉来ていると指摘していた。クマは自分より大きいクマは避ける傾向がある。そして実際に今年最初の襲撃(6月24日)は中チャンベツより手前の上チャンベツで起きた。当然、藤本らは近辺にくくり罠(ワイヤーの「輪」の中に獲物が足を踏み入れるとバネが作動し、獲物の足を一気に締める罠)を仕掛けるなどして次なる出現に備えていた。
(後編に続く)〈ライフルで首に1発、頭に2発…“怪物ヒグマ”OSO18はなぜ逃げなかった? “最期のシーン”に隠された謎を追う〉へ続く(伊藤 秀倫)
〈ライフルで首に1発、頭に2発…“怪物ヒグマ”OSO18はなぜ逃げなかった? “最期のシーン”に隠された謎を追う〉へ続く
(伊藤 秀倫)

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