旧統一教会・田中会長が驚愕発言「私の実家は霊感商法商品だらけ」

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「この場で綺麗事言ってもしょうがないので、私としては皆様方に通ずる言葉で、ある程度のことは申し上げたいと思っております。もし失言・暴言があったとしたら、全部、澤田局長の責任にさせていただいて(笑)、皆様方と向き合う時間にしたいと思います」
司会役を務める澤田拓也総務局長から促されて登場した田中富広(とみひろ)・旧統一教会会長(66)は、そう語り始めた。過去2回の会見(7月11日、8月10日)とはまるで違い、その語り口は感情豊かだ。
安倍晋三元首相銃撃事件から40日が過ぎた8月19日、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)本部は全国の公職者に向けて「特別ネット会議」を開催。FRIDAYは、その音声データを独占入手した。
「公職者とは、全国各地にある教団支部の現場責任者クラスを指し、一般信徒がこの会議を見ることはできませんでした。今回のネット会議は、事前に現場から吸い上げた信徒たちの疑問や指摘に対し、本部のトップが答えることを目的として開かれた。霊感商法や献金問題について、信徒たちは率直に質問をぶつけました。しかしそれに対する本部の幹部たちの回答は、ほとんどが曖昧なものだった。教団の変革を期待する信徒たちからすれば、到底、納得できる内容ではありませんでした」(会議を視聴した信者)
会議の司会役は総務局長で、最初に広報部長が報道に関する姿勢・対応を語り、未来人材局局長が2世信者の取り組み、教会成長局副局長が教団に対しプラスになる内容の報道を紹介した。
1時間20分に及ぶ会議の大トリとして田中会長は登場。会見では教団側の主張を滔々(とうとう)と述べていたが、身内向けの会議では、驚きの「本音」を次々と暴露した。
まず始めに強い警戒心を示したのは、8月に政府が立ち上げた「旧統一教会問題関係省庁連絡会議」の存在だ。
「いわゆる被害者の駆け込みですね。こういうものを国が準備しているということは、教団にとって向き合ったことがない未曽有の危機だと私は感じています。私が反対弁護士だったら、いま集まってきているすべての被害を全部この9月中に、この連絡協議会に向かって全部飛び込ませますね。そして、全国からあがってくる相談内容から、本当にこれは問題だというものを取り上げて、発表させる。こちらに返金要求をしてくるような方々は、問題はないと思います。問題はないと言ったら失礼ですけども、まだ対応はできます。でも、こちらに最初から向き合うこともなく、まっすぐに被害弁連のほうに走った者たちは我々も気づいていない。どんな問題が噴き出てくるかわからない。そのぐらい緊張感走る危機意識が末端までないと、本当にどこからサタンが入ってくるかわからない」
続いて会長が取り上げたのは、世間からの批判が強い「霊感商法問題」である。
「私がこの前、第2回記者会見で『当法人は霊感商法をかつても今もやっていない』と。これに対しショックを受けた食口(シック)(教会員)たちから、会長宛に何通か手紙が来ました。『私やってました』『ちゃんと霊感商法やってたじゃないですか』というメッセージがありました」
それらの疑問の声を受け、会長は教団が抱える事情を赤裸々に明かした。
「いわゆる霊感商法、これが信徒たちによって行われていたことは(裁判で)認められていますし、敗訴しています。ただし、″教会自体″が霊感商法はやっていないということは、一貫した私たちの主張であり、また裁判でもずっと続けられてきております。もし私が『教会は霊感商法をやっていました』と言った瞬間に、今までの裁判が全部ひっくり返ります。それぐらい大きなことです。霊感商法そのものを法人がやったかと問われたら『やってなかった』としか言えない。ただ、信徒たちの行き過ぎた行動、トーク、色んなことを通じながら被害と思われる内容を感じ取った方々もおられるので、そこに対して真摯に私たちは向き合っていかなければいけない」
そしていよいよ、驚きの″告白″は飛び出した。
「我が実家に行けば、お壺も何個もありますし、多宝塔(たほうとう)も2個あります。もうとにかく霊感商法商品だらけです、我が家は(笑)。私は持っていないけど、我が家はそういう世界ですよ。うちの母親は本当に感謝して、今でも信仰を持ってます。そういうことで救われた人たちの実感、これは否定できないんです」
自分の母親も霊感商法商品を大量に購入しておきながら、会見では「過去も現在も霊感商法はしていない」と堂々と言い放つとは……。発言を聞いた信者は、こう怒りを滲ませる。
「『霊感商法』という言葉は反対組織が作ったもので、教団内ではそんな言葉は使っていない。そもそも教団として指示はしていない。だから『やっていない』という理屈です。事ここに至って、そんな言い訳が通用するはずがないのは、現場の信徒たちはみんなわかっています」
さらに、山上徹也容疑者(41)についても話は及んだ。山上容疑者の母親に対し、破産後も教団が高額な献金をさせていたという報道に、会長はこう反論した。
「(破産以降も)高額献金を迫られていたとかそういうことはありません。断言できます。子供たちを抱えて、もし献金したとしてもひと月でどれくらい献金できたか。これとて、私たちは想像できることです。かといって家計簿を山上家からもらって、それを精査して社会に発信するということまではとてもできませんので、またいずれ警察発表とあわせて、私たちの口から言えることは申し上げていきたいと思っております」
一方で、山上容疑者が凶行に走ったことに関しては、こんな反省も口にした。
「今回の事件で、これは言えます。山上家庭に今、尋訪(シンバン)プロジェクトが行われていますけども、ずーっと尋訪され続けていたら、こういうことは起きなかったんじゃないかと(※尋訪=信者家庭を訪問すること)。(山上家が)距離を持ち始めた時に訪ね、しっかりと家庭の抱える課題に向き合い、ともに痛みを分かち合うような文化を作り上げてこなかったということも確かだと思います」
銃撃事件の大きな原因となった高額献金問題への姿勢についても、信者からは不満の声が出ている。
「信徒が実質的に献金を強制されているのは揺るぎない事実です。山上家に限らず、献金によって生活が苦しくなっている信徒は大勢いる。しかし、田中会長を始めとしたトップは『ルールを明確にする』などというだけで、献金問題そのものに本気で取り組もうという姿勢はまったく感じられません。本当に健全な教団作りを行うなら、過剰な献金制度としっかり向き合って欲しいというのが願いです」(会議を視聴した別の信者)
信者からは、「毎日記者会見をしてほしい」といった要望も会長のもとに届いたようだが、それに対しては、
「毎日毎日主張の場を用意してくれる、こんなに社会は甘くありません。第3回目、もし私が記者会見するとしたら、『田中会長辞任発表』くらいじゃないですか。そういうことだったら、メディアみんな飛んでくると思いますね(笑)」
と、ジョークを飛ばす場面もあった。
約30分にわたり心境を吐露した田中会長。スピーチは、「真(まこと)のお母様」こと韓鶴子(ハンハクチャ)総裁から届いた激励のメッセージを紹介して結ばれた。
「(8月18日に韓国で行われた旧統一教会批判に対する大規模抗議デモの)直後にお母様から大陸会長(日本法人の実質的トップ)に電話が直接ありました。年に一度あるかないかの電話がありまして、『この韓国での集会を見たか』と。そして『しっかり頑張れ』ということで、お母様も思いを注いでくださってると改めて感じました」
この「特別ネット会議」では、田中会長以外にも注目の発言があった。会長の一つ前には、関連団体である天宙平和連合(UPF)の魚谷俊輔事務総長が登場。UPFは、安倍元首相がビデオメッセージを送ったことで知られる団体である。
魚谷事務総長は、「政治家が家庭連合から距離を置いたり、離れていくことを心配している。(教団の賛同会員である)井上(義行)議員は今どのような状態なのでしょうか」という信者からの質問を紹介し、こう答えた。
「井上議員の内心はまったく変わっていませんし、我々の応援によって当選したことは感謝していらっしゃいます。しかし今、自民党のほうからとにかく静かにして欲しいとのことでして、表立って発言はできない状態です。これは深く繋がっている他の国会議員も同様であって、心は離れていなくても、今、マスコミがヒステリー状態になっているので身を屈めてやり過ごすしかない、というのが現状です。地方の食口議員でさえ、マスコミの追及に対しては正面から戦えないぐらい厳しい状況です」
霊感商法への本音から、政治家との関係性まで……。衝撃の暴露が続いた「特別ネット会議」の内容について、長年教団を追及してきたジャーナリストの鈴木エイト氏が語る。
「まず、田中会長が旧統一教会の抱える問題についてこれほど言及したことに率直に驚きました。『法人としては霊感商法をやってなかったとしか言えない』『私の実家は霊感商法商品だらけ』といった発言は、会見での『霊感商法はない』という発言が詭弁に過ぎなかったことを明確に示しています。また、教団との関係が明らかになった国会議員について言及していることも注目です。UPF幹部は、いまだ『心は離れていない』議員がいる、と発言している。教団との関係を一切断つとしている自民党の態度が形だけで、実はまだ繋がっている議員がいるのだとすれば、これは大きな問題です」
本誌は、田中会長の「実家は霊感商法商品だらけ」発言について教団に取材。教団は文書で次のように回答した。
「通称『霊感商法』と呼ばれているトラブルは、当法人の一部の信者が行ったものであり、当法人はそれを指導した立場にはないという意味で、『霊感商法なるものを当法人が行ったことは過去にも現在にもない』と田中会長は記者会見で申し上げました。そのスタンスの中で、一部の信者が販売した商品をご自身も購入したことがある、という意味合いの発言をしたに過ぎません」
相変わらず主張は、「霊感商法なる言葉は教団内には存在しない。だからやっていない」ということのようだ。しかし、矛盾を抱えたまま問題を乗り切ろうとする教団トップの姿勢に、信徒たちの心はすでに離れ始めている。
※「ネット会議」での発言は内容を損なわない範囲で一部要約しています。
『FRIDAY』2022年9月30日・10月7日号より

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