観光で大阪を訪れていた東京の女性が、ビルの隙間から出られなくなった子猫の救出劇に一役買う出来事があった。
先月中旬の深夜、大阪市内のビルの間から聞こえる子猫の鳴き声に気づき、予定を変更して消防や専門家に協力を要請。約16時間後に無事に保護された子猫は女性と新幹線で東京へ。わずか100グラムだったオスの茶トラ猫は「むぎ」と名付けてかわいがられ、順調に成長しているという。
「今、旅行で大阪の心斎橋にいる者です」「捕獲を依頼したら来ていただけますか?」-。大阪、京都、沖縄で保護猫専門サービス事業を展開する「ねこから目線。」(本社・大阪市)にこんな問い合わせが届いたのは7月17日の「海の日」。「保護は私がしますし、里親募集もします。見つかるまで飼育できます。子猫が元気になるまで延期で大阪に居続けられます」との文面に、「並々ならぬ覚悟を感じた」と、代表の小池英梨子さん(33)は振り返る。
依頼主は、東京都西東京市の大原アユミさん(23)。友人と大阪市の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を楽しみ、心斎橋の宿泊先ホテルに戻ろうとした17日午前0時ごろ、ビルの間から子猫の鳴き声がするのに気づいた。
だが姿は確認できず、2時間たっても鳴き声が聞こえるだけ。「自力で出られないのでは」と110番すると「消防を呼んでください」と言われ、119番。「人命優先なので、何かあったら引き返す可能性もあります」とした上で、4人の隊員が来てくれた。
大通り沿いのビルとブロック塀の隙間に子猫がいることが判明。40分ほど奮闘してくれたが、「壁を壊さないと無理。自分で入ったのだから自分で出てくるでしょう」。「そうなんだ」と安心した大原さんは友人と宿に戻った。
だが正午に宿をチェックアウトして現場に行くと、また「ミャー」と声が。餌を置いても出てこない。大原さんは保護活動をしている団体を調べて片っ端から電話したが、断られたという。
「ねこから目線。」の小池さんも「子猫が鳴いているから見に来てほしい、という依頼は時々あるが、お断りするケースが多い」と明かす。保護団体の多くは受け入れ可能なキャパシティを超えている状況なうえ、「後は全てお任せします」といった無責任な依頼がほとんどだからだ。
だが、大原さんの依頼は「捕獲を手伝ってほしい」。友人は先に帰ったが、子猫を助けるまでは大阪に残る覚悟だった。送ってもらった動画の鳴き声で子猫は「乳飲み子」と判断した小池さんは、スタッフと2人で現場に向かった。
ビルの隙間は確かに狭かったが、小柄な小池さんらは子猫の近くまで入ることができ、大通りに出てしまわないよう大原さんに出口をふさいでもらって「マジックハンド」で無事に捕獲。生後1週間ぐらいの子猫はまだ目もあいておらず、無数のノミに寄生され、手足にはすりむいた傷があった。母猫が運ぶ途中で落としたとみられ、「救出されなければ助からなかっただろう」(小池さん)。
動物病院で処置後、保温用のボトルを入れた簡易ケージに入れられた子猫は大原さんと一緒に夕方の新幹線で東京へ。実は大原さんは2カ月前にも近くの駐車場で生後4、5カ月の子猫を保護したばかり。「里親、ちゃんと見つけろよ」と言った夫も子猫には「メロメロ」だそう。普段は夫の仕事を手伝う大原さんだが、3時間おきの子猫の授乳のため「育児休暇中」という。
小池さんは「人通りの多い場所なのに地元の人が誰も気づかなかった中、東京から来た大原さんが延泊覚悟で孤軍奮闘してくださったことに感激した。そんな人を2度も呼び止めたこの猫は、強運の持ち主だと思います」と話していた。(木村さやか)