「幸せな瞬間がない。とてもつらい5年」 母親が明かす苦悩 仏女性失踪から5年

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「本当にリラックスできる瞬間、幸せな瞬間がないのです」。
そう語ったのは、栃木・日光市で2018年7月に行方不明となったティフェヌ・ベロンさん(41)の母親・アンヌさん(64)。
娘のベロンさんが突然失踪してから、29日で5年。5年間の苦悩を語った。
ベロンさんは、2018年7月29日、日光市を観光中に突然行方がわからなくなった。
彼女の荷物は宿泊していたホテルの部屋に残されたまま、チェックアウトの時間になっても戻らなかったため、不審に思ったホテルのオーナーが警察に通報したことから行方不明になっていることが発覚した。
失踪発覚の直後から警察が周辺の川などを捜索したが、所持品など痕跡は一切見つかっていない。
また、2019年にはベロンさんの兄と妹がフランスから救助隊とともに来日し、川の中や周辺の山林を捜索したが、何も見つからなかった。
母親は「時間がたてばたつほど、見れば見るほど、不思議に思い、事故なんてありえない、事故ならとっくに見つかってるでしょう、と思うのです」と語る。
ベロンさんは日光市を観光後、ほかの地域を観光する予定だったため、29日以降に宿泊予定のホテルも予約していた。
日光に到着してからも、ベロンさんは家族にSNSで頻繁に連絡を取り、風景を写真で送っていた。
いったい、彼女に何があったのか? 目撃証言から、当日の午前10時ごろホテルを徒歩で外出したとされているが、ベロンさんの携帯の記録によると、およそ1時間半後の午前11時40分までホテルのWi-Fiに接続されていたほか、位置情報からもホテルにいた可能性が高いことがわかった。
その後、携帯の位置情報は途切れている。
ベロンさんは日本が大好きで、日本語を独学で学んでいた。
彼女の部屋にはたくさんの日本語の参考書などが残されていて、それらは今、母親の家で保管されている。
母親は「彼女は絵を描くのが好きだから、漢字を見ると喜ぶのです。彼女は本当に漢字が好きでした」と話した。
7月22日はベロンさんの41歳の誕生日だった。
母親は、「7月は彼女の誕生日と失踪の日が一週間違いで重なり、つらい月です」と話す一方、「誕生日を迎えるたびに、彼女の誕生を思い出します。かわいい赤ちゃん、かわいい女の子でした」と娘への愛を語った。
母親は「5年、5年、とてもつらい5年…どうやって生きていけばいいのでしょう? だって…あきらめないって、すごくエネルギーがいることだから。戦い続けるにはエネルギーが必要なんです」と言うと涙を流し、「失踪はわたしたちの人生を狂わせて、将来の計画を立てるのを難しくしました」と語った。
最後に母親は、「諦めたくなることもよくあるし、『もうやめよう、疲れた、つらすぎる』と言いたくなることもあります」と心のうちを明かした。
拉致事件を専門とする国連の強制失踪委員会は、2023年3月、ベロンさんは事件に巻き込まれた可能性があるとして、「事件性が疑われる行方不明事件」と指摘した。
そのうえで、委員会は日本政府に対し、犯人特定に向けた捜査や家族やフランス当局に捜査情報の提供を要請した。
強制失踪委員会が日本に要請をするのは、今回が初めて。
どんな手がかりでも良い、ベロンさん発見の吉報を待つ母親の思いは募るばかりだ。
情報提供は、「日光警察署(0288ー53ー0110)」まで。
(フジテレビ社会部・林英美、FNNパリ支局)

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