「上履き」を子供に履かせてはいけない理由。成長とケガを予防するベストな選択とは

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こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。子供用の靴はこの10年間ですさまじい進化をとげています。スポーツ医学×AIの発展で、「どこでどう曲がって、どう動けば足の発達にいいのか」ということが分析されているので、以前ほどデザインだけのダメな子供靴は減ってきました。
◆「上履き」を履かせてはいけない
とは言うものの、「ダメな子供靴」はまだまだ存在します。ここでは、「ダメな子供靴」を、「足の動きを阻害して、成長をさまたげ、ケガのもとになる靴」と定義します。昭和生まれの筆者が子供のころは、そんな靴だらけでした。小学生のころから「偏平足」「開帳足」で、長い間ウオノメに悩まされ、その原因が靴だったことを知ったのは大人になってからです。
今、これを読んでいるあなたの足のトラブルも、子供のころに履いた靴が原因という方も多いと思います。そして、その代表的なものがスクールシューズ、いわゆる「上履き用のバレエシューズ」なのです。
この手の「上履き」は、まず、足をきちんと固定できません。紐やベルトで調節ができず、足が靴の中で遊ぶので、足の裏の摩擦が激しくなりマメができます。また、それをかばうために、おかしな歩き方のクセがつきやすくなります。
このデザインの特性上、長さも幅も必ずどちらかがゆるくなります。フィットさせたくても中敷きが取れず、構造的にもどこでも曲がってしまうのでネンザの原因にもなります。さらに日常的に履くのでネンザがクセになり、スポーツでも日常でも、最悪の場合は大人になってもケガを引きずる方が少なくありません。実際に私がそうです。
学校側は「脱ぎ履きがしやすいように」や「できるだけ公平に安価なものを」と考えているのかもしれませんが、時代錯誤もはなはだしい。もし、子供の足に不調があるようであれば、整形外科でネンザの診断書をもらって、別の靴を履かせましょう。診断書を見て「NO」という学校は、令和にはまずありません。
◆足が固定できない靴はNG
バレエシューズのように、足を固定できない靴は害だと考えてください。外履きの靴では、まず筆頭に上がるのがサンダルです。
「ベルトがついてるでしょ」と思われた方、まず、子供と大人ではそもそもの運動量がちがいます。ベルト1本で足を固定することは大人ですら困難です。男女とも子供の足の成長は中学生まで続くので、成長過程にある足にサンダルはダメージを与えます。あくまでよそ行きで短時間使用するぶんにはアリですが、脱着がラクだからといって日常的に履かせるのは危険。
ビーチサンダルもやめてください。ビーチならありですが、アスファルトは危険です。同じことはスポーツサンダルにも言えます。足の甲までしっかり覆っていたり、底のクッションが効いていてもしょせんはサンダル。足元は思いのほか不安定で子供の運動量にはまったくついていけないので、かなりの確率で脱げて怪我をしたり、なにかに巻き込まれたりする事故に直結します。
では、外履きでは何を履かせればいいのか? 「水遊びシューズ」という靴をご存じでしょうか。
◆上履きにも外履きにも「イフミー」がおすすめ
筆者の子供には小学校の低学年までは上履きにも外履きにもこの「水遊びシューズ」を履かせていました。個人的には早稲田大学スポーツ科学学術院と産学協同でつくられている「イフミー」がおすすめです。

サンダルに比べるとはるかに安全で脱着もしやすい・させやすいので、子供が自分で履くこともできるし、親も慣れれば子供を押さえながら「片手で」履かせることもできます。子供はなにかと暴れるので、サンダルは意外に汗でグリップして履かせづらく、勢いで吹っ飛んでしまうこともあり危険です。
しかし、水遊びシューズならすんなり履かせられるので、親もストレスが減ります。イフミーに限らず「水遊びシューズ」は今ではどこのメーカーもしっかり設計されているのでおすすめです。
◆子供靴のサイズ選びのコツとは?
次に靴選びでサイズを合わせるときのコツを教えます。水遊びシューズに限らず、今の子供靴の9割以上はインソールが外れるようになっています。まず、インソールを外してその上に足を合わせ、つまさきに指1本分くらいの余裕を「目視で確認して」購入するのが確実です。
インソールがとれるのに、靴の外側から指でつまさきをぎゅうぎゅう押してサイズを確認する店員もいますが、これは無知と言わざるを得ません。そのような店で靴を買うことはやめましょう。サイズ選びはとにもかくにも「目視が一番」ですが、中には頑なにインソールがはずれないブランドもあります。
誰でも知っているメーカーですが、このような靴は買わないほうがいいでしょう。しっかりしたサイズ選びができない時点で子供の足のことを考えていないことは必然です。
◆底が曲がらない靴も危険
また、これらのメーカーは共通して底も「曲がるべきところで曲がらない靴」をつくっています。厚底のゴムが弾んで動きやすそうに見えても、大人が力を入れても底が曲がらないものがあります。上履きのように「どこでも曲がる靴」も問題ですが、逆もまたしかりで、「曲がるところで曲がらない靴」も危険です。
具体的には「指が並んでいる列の手前のライン」、ここが曲がるべきところです。裸足をイメージするとわかりやすいでしょう。靴もそこで曲がらなければどんなメーカーでもアウトです。子供は確実にケガをします。
店に行って実物を手にし、「.ぅ鵐宗璽襪外せるかどうか」「曲がるべきところで曲がるか」の2点に注意してください。
どうしてもネットで買わざるを得ない場合は、「大人の靴をそっくり縮小したもの」は避けましょう。とにかく見た目さえ似ていれば売れるという販売戦略なので、ほぼアウトです。もうひとつ、平成から販売が続く「光る底」。シンプルに子供が楽しむのでよく売れていますが、これも底を光らせるための構造上、まず曲がりません。
目立つので街中でよくみかけますが、同じくらい「こける風景」も目にします。底が曲がらないということは、歩いている最中に足を突然つかまれるようなものなので、物理的にこけてしまいます。電車の乗降時などでみかけるとこちらまでヒヤッとします。
防犯を謳っていることもありますが、それなら「音が鳴る」靴のほうがベター。こちらは歩きを邪魔しない構造なので、安心して購入できます。
◆樹脂系のつっかけ靴を履いてはいけない
最後に、もっとも避けるべきものは樹脂系のサンダルやつっかけ靴です。エスカレーターでは、「樹脂製の靴などは巻き込まれるおそれがあるので」とエンドレスに警告を発しています。筆者も百貨店に勤務していたときには、エスカレーターの巻き込まれ事故に幾度か遭遇しましたが、大人でも容易に巻き込まれます。

樹脂系サンダルやつっかけ靴はそもそも足の形はしているものの、実はまったく足を固定できず、大人ですら脱げずに歩くのは困難です。もともと医療現場などで「すぐ履けて、立っていても疲れない」というコンセプトの設計なので、あれを外履きとして歩いたり走ったりしてはいけません。
筆者の子供には思春期がくるまでは、ニューバランス、アシックス、ミズノ、イフミーを中心に選んでいました。子供靴は大人用と同じくらいコストがかかります。小さいからといって極端に材料費が安くなるわけではなく、逆にサイズが小さいぶんつくりづらくなるため手間がかかり、儲からない。先述したメーカーはほとんどボランティアで子供のための靴をつくっているようなものです。生産コストを知ってる身からすると本当に頭が下がります。
しかし皮肉なことに「足のことを考えない子供靴」はつくるのが簡単なのでメーカーにとって大きな利益になります。危険な靴は今後も販売され続けるので、くれぐれもご注意ください。
文/シューフィッターこまつ

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