手軽な暑さ対策として人気の携帯型扇風機が発火したり、破裂したりする事故が起きている。
リチウムイオン電池の損傷が主な原因で、けが人が出たケースも。猛暑が続く中、専門機関は「発煙などの異変を感じたら使用を控えてほしい」と注意を呼びかけている。(石沢達洋、小川朝煕)
■顔に火花
「ケガがなくて本当に良かった」。東京都江東区の女性(35)は今月上旬、小学2年の長男(8)の顔に風を当てようと手持ちの小型扇風機を近づけたところ、突然、火花と白い煙が上がり、慌てて電源を切った。
扇風機は昨年夏、外遊びが好きな子どもに少しでも涼んでもらうため、ネットで約2000円で購入。誤って何回か地面に落とし、物にぶつけたことはあったが、これまでに異常はなく、この夏も使い始めたばかりだったという。
女性は「電池の損傷で発火することがあると聞き、慌てて処分した。今年も暑いので、新しい扇風機を買う。取り扱いには注意します」と話した。
■「パーン」
製品事故を分析する独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」は、携帯型扇風機が使用中に「パーン」と音をたてて破裂する様子を再現した実験動画をホームページで公開している。
事故原因は主に、製品に内蔵されているリチウムイオン電池の損傷だ。落として衝撃を与えたり、過充電で劣化したりすると、電子回路がショートして異常発熱や発火につながる。
NITEによると、こうした事故は2022年度までの5年間に全国で少なくとも45件発生している。20年夏には、ネット通販で購入した製品を使っていた兵庫県の50歳代男性が発火で軽いやけどを負うなど、けが人も出ている。
NITEは使用時の注意点として、〈1〉商品に衝撃を加えない〈2〉充電時は周囲に可燃物を置かない〈3〉異常がある場合は使用を控える――を挙げている。
■選び方
携帯型扇風機はここ数年、普及が加速し、手持ち式や首掛け式など様々な商品が販売されている。
国民生活センターによると、安価な輸入品の中には粗悪なリチウムイオン電池を使った不良品もあるほか、販売業者の連絡先の記載がなかったり、問い合わせ先の電話がつながらなかったりするケースがある。
同センターは、安全性の基準を満たしていることを示す「PSEマーク」が付いている製品や、メーカーの純正品を選ぶことを推奨している。
事故防止に取り組むメーカーもあり、「アイリスオーヤマ」(仙台市)は製品が高温となった場合に強制的に電流を遮断する仕組みを採用した。同社広報室の中嶋宏昭室長(42)は「夏本番となるが、安全に使用してほしい」と話している。
■猛暑 熱中症注意
気象庁によると、今年の夏は全国的に平年並みか、それ以上の暑さとなる見通しになっている。7月に入って各地で真夏日や猛暑日が続き、熱中症警戒アラートも発表されている。
総務省消防庁によると、熱中症による搬送者数は7月1~9日に全国で計4940人(速報値)に上り、うち4人が死亡、67人が重症となった。暑さに体が慣れるまでは特に熱中症の危険性が高く、扇風機やエアコンの適正使用に加え、こまめな水分補給などの対策が欠かせない。
15~17日の3連休も、東京都心で34~36度、大阪で33~34度、名古屋で34~36度の最高気温が予想されている。東京消防庁は「体調がおかしいと思ったら無理をせず、しっかり水分と休息を取ってほしい。熱中症の症状が出た場合は、首やわきの下などを冷やす対応が有効だ」と話している。