「高校で友達作りたかった」ウクライナ避難民の15歳、進学できず…行政の支援なく

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戦火を逃れてウクライナ東部ハルキウから富山県射水市に避難した少年が日本の高校に進学できず、行政の教育支援を受けられていないことがわかった。
避難民の進学を支える仕組みは自治体によって異なり、専門家は「避難民に自治体側から積極的に情報提供し、希望に沿った対応を考えるべきだ」と指摘している。(谷侑弥)
■慣れない日本語で受験勉強
「今はほぼ日本の友達がいなくなってしまった。高校で勉強し、友達を作りたかった」。射水市で暮らすウクライナ人のダニイル・オルロブさん(15)は、そう語って寂しそうな表情を見せた。
オルロブさんは昨年7月、母親ら家族4人でハルキウを脱出。日本の知人を頼って来日し、同9月には射水市立中学校に3年生として通い始めた。帰国の見込みが立たない中、祖国で柔道に打ち込んでいたこともあり、日本で高校に進学したいと考えていた。
そのため昼は日本の中学、帰宅後はオンラインでウクライナの中学で学び、その後に高校受験のための勉強を重ねた。進路は「外国人が県立高校に進学した例はほとんどない」と聞き、私立高校を受験。この高校からは事前面談で「合格した場合は漢字にふりがなをつけるなどのサポートをする」と言われたものの、受験後に中学の担任を通じて不合格を通知された。
オルロブさんは現在、射水市内の専門学校で日本語を学びながら、オンラインでウクライナの高校の授業に出ている。ただ、ウクライナと時差は6時間で、授業終了は深夜まで及ぶこともあり、体の負担は大きい。中学時代と違って同級生と一緒に学んだり、遊んだりすることはできなくなり、「チャンスがあれば日本の高校に通ってみたい」と願っている。
■他都県では進学実績も
出入国在留管理庁によると、18歳未満のウクライナ避難民は全国で計382人(7月5日現在)。しかし、同庁は学年ごとの人数や個々の進学状況は把握しておらず、進学支援のあり方も自治体ごとに異なる。
県教育委員会もオルロブさんのケースを把握していなかった。県立学校課は「県立高校で避難民を受け入れるには、まず他の自治体の入試制度や入学後の教員配置から研究を始めなければならない」という。
一方、神奈川県では4月、ウクライナからの避難民2人が県立高校に入学した。1人は留学生扱いとし、もう1人は外国人向けに科目を減らしたり、問題文にふりがなを振ったりする特別募集枠で受け入れたという。
1人が避難する神奈川県内のある市では通訳を介して進学制度を説明し、疑問点を解消。市の担当者は「ウクライナでは希望すれば原則高校に進学できるので、違いの説明には苦労した。避難民と密に接してきたことでなんとか乗り切れた」と話す。このほか、東京都でも今春、避難民が都立高に進学した実績がある。
外国人生徒の教育に詳しい東京外国語大学の小島祥美准教授(教育社会学)らによると、公立高で外国人に対する特別募集枠を設けている都道府県は約半数で、北陸では福井県が2020年度入試から始めた。
小島准教授は「学びを保障する環境は公立高側で整えるべきだ。外国人の生徒は地域で新たな人材に育つ可能性があり、地元の人々が様々な国の人々を知って多様性を学ぶきっかけにもなる。今回のケースは、富山にとっても損失だ」と指摘している。

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