【A4studio】3人の女性の「悲痛な叫び」から見えてくる…「トー横キッズ」と「渋谷ギャル」の決定的な違い

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少女たちが家に帰らずに都心の繁華街の路上にたむろし、なかには売春をおこなう子もいるらしい――令和の今、こう表現すると真っ先に思い浮かべられるのが歌舞伎町の「トー横キッズ」だろう。
だが90年代後半から00年代前半にかけても、「渋谷ギャル」と呼ばれる少女たちが東京の繁華街に昼夜問わず集まっていたことや売春をしたいたことが、社会問題になっていた。
新宿の歌舞伎町にたむろするトー横キッズと、渋谷のセンター街にたむろしていた渋谷ギャルは、それぞれを象徴する要素は類似している点が多い。
だが、年間約1500件もの恋愛相談を受けている恋愛カウンセラー・恋愛コラムニストの堺屋大地氏いわく、「渋谷ギャルとトー横キッズは、アウトラインは同じでも似て非なるもので、内面的には異なる出自を持っている」とのことだ。
詳しく考察するため、【前編】『喫煙、飲酒が常態化…10代女性が語る「“家に帰れない”トー横キッズ」の絶望的な生活の実態』で見たように、15歳の少女と24歳の女性の二人組の「トー横キッズ」に取材を行った。
いわゆる「地雷系」と呼ばれるルックスをしている15歳の少女のほうがトー横歴は長いという。
「私は去年の9月ぐらいからここ(トー横)にいるよ。親がめんどくさいから家に帰るのは2ヶ月に1回ぐらいしかない。あとはずーっとここにいる」(15歳少女)
一方の24歳の女性は、実年齢よりもかなり幼く見え、本人いわく「量産型」のファッション・メイクをしているという。彼女はまだトー横に来て2週間ほどだそうだ。
24歳女性のほうは一人暮らしの部屋があるため、「トー横にそのままいることもあるけど気分で家に帰ることもある」らしいが、15歳少女はずっと家に帰っていないと言っていた。
「まあ親と仲悪いっていうか……虐待みたいなのがあるから帰りたくないんだよ。だから基本ずっとここにいる。夜は近くのホテル(ビジネスホテル)に行くことが多いかな。誰か一人が予約して5、6人とかで泊まるって感じ。
お金はワリカンするときもあれば、そのときにカネ持ってる人が払うとか。羽振りいいヤツが払う感じ(笑)。私が持ってれば払うときもあるよ」(15歳少女)
どうやってお金を稼いでいるのかが、やはり気になるところである。
「私は昼職と夜職を掛け持ちしてて、昼はカラオケ屋で夜はガールズバーとかコンカフェとかでバイトしてる。まぁまぁ普通にお金は持ってるかな」(24歳女性)
「友達は風俗やったりカラダ売ったり。え、私? 私もまぁ……たまに」(15歳少女)
Photo by iStock
そう言葉を濁す15歳少女。
歌舞伎町といえば、トー横の広場から歩いて数分の場所にある「大久保公園」の周辺で、立ちんぼをしている売春女性が数多くいることも問題になっている。その立ちんぼ女性のなかにはトー横キッズもいるという噂もあったが……。
「うーん……そうだね。(大久保公園あたりで)私もたまに“立ってる”よ」(15歳少女)
15歳少女になにをしているときが一番楽しいかと尋ねた際は、「(トー横の仲間と)酒飲んだりカラオケ行ったりバー行ったり居酒屋行ったり、まぁとにかく大学生ノリが楽しい」と嬉々として語ってくれた。
この少女は、飲み代やホテル代といった“トー横での生活費”のために、売春に手を出してしまっているのかもしれない。
「将来の夢? ないなー。前はカウンセラーになりたいって思ってたけど、親がウザいし反対するから、そういうのはもう考えてない。今がつらいのにどうして先のこと考えなくちゃいけないのって感じだよ」(15歳少女)
15歳少女と24歳女性への取材を終えたところで、ちょうど二人の仲間が通りかかり、その19歳少女も取材に答えてくれた。
髪型はピンク色のロングボブ。ファッションはチェック柄のワンピース。サンリオキャラクター柄のピンクのバッグを持っている。
「ここに初めて来たのは去年の5月。なんか、出ていって、また戻って来て、また出て、また戻って来てって繰り返してるけど、来るようになって1年以上は経ってる。去年の5月にネットでつながってた友達とトー横で会うことになって、そのまま家に帰らなくなって。うちの親ってけっこう歳いっててすでに年寄りなんですよ。だから話も合わないし全然仲よくない」(19歳少女)
トー横で何度か出戻りを繰り返しているそうだが、親のいる家にはもう1年間ほどまともに帰っていないそうだ。
Photo by iStock
「トー横から出ていってる間は彼氏の家だったりホテルだったり友達の家だったりで泊まってました。でもトー横にいるときはだいたいここ(広場)にずっといる。夜中もずっと、朝までいる。
冬は死ぬほど寒くてしんどいけど、それでもここでオールしてたからね(笑)。ここの友達と酒飲みながらしゃべってるのが楽しすぎるから、まぁなんとか耐えられた。ここの人たちとだらだらと甘いもの食べて酒飲んでってゆったり生活してるのが一番楽しい」(19歳少女)
15歳少女のようにホテルを頻繁に利用しているわけではないようだが、やはり路上生活で飲み食いする生活費は必要になってくるはず。この19歳少女はどのようにお金を稼いでいるのだろうか。
「知り合いに頼み込んで、ガルバ(ガールズバー)の体入(体験入店)だけして5000円とか1万円とかもらったりしてるよ。年齢的にちょっと将来のことも考えるようになってて、このあいだは居酒屋のバイトの面接を受けて来た。
お酒好きだからお酒扱う仕事ならなんでもいいんだけど、まだ仲よくしてる元彼が、ガルバとかコンカフェとかで働くのはダメって止めてくるんだよな」(19歳少女)
最後に、大久保公園で立ちんぼをするといった売春行為の経験はあるかとストレートに尋ねたところ、「そこは聞かないで。秘密ってことにしておいて(笑)」と否定はしなかった。
トー横キッズたちの間では未成年飲酒が常態化してしまっており、大麻の使用や風邪薬などでOD(オーバードーズ)しているグループもあるという。そして噂どおり、大久保公園で立ちんぼをしている少女もいることがわかった。
トー横キッズたちへの取材を終えたところで、改めて恋愛カウンセラー・恋愛コラムニストの堺屋大地氏に、「渋谷ギャルとトー横キッズは、アウトラインは同じでも似て非なるもので、内面的には異なる出自を持っている」という考察について解説していただこう。
「確かに渋谷と新宿という違いはあれど、10代の少女たちが都心の繁華街で路上生活をしているという意味では同じです。ちなみに何週間も家に帰らない渋谷ギャルたちは、昼間はセンター街の路上でたむろし、夜は宮下公園(現・ミヤシタパーク)で野宿したりカラオケボックスでオールしていたりしていました。
また、かつての渋谷ギャルたちは『援交』(援助交際の略)と呼び、トー横キッズたちは『パパ活』と呼び、売春をしている子もいるというのも同じ。『売春』という汚らわしくダーティなイメージのある呼称は避け、『援交』『パパ活』とカジュアルに言い換えて、無意識のうちに罪悪感を軽減させようとしているのだろうという心理状態も似ています。
そして、“先のことなんて考えない、今が楽しければいい!”といった刹那主義的思想を持っているという点も共通しています。このように渋谷ギャルとトー横キッズは非常に類似した特徴を持っているのです。……が、両者は出自がまったく異なるのです」(堺屋氏)
では渋谷ギャルの出自や精神性から解説していただこう。
「渋谷ギャルの前身とも言うべき属性はヤンキーです。90年代前半にヤンキーカルチャーが廃れていきますので、ヤンキーファッションなどがダサいという認識が浸透していくなかで、不良マインドを持ったやんちゃな少女たちによって、ギャルという属性が形成されていったという背景があります。
ヤンキーと言えば中高時代によくも悪くも目立つ存在で、言うなればスクールカーストの上位。そんなヤンキーから派生して生まれたギャルたちも、同じくスクールカースト上位の少女たちが中核をなして牽引していき、ギャルカルチャーが隆盛していきます。
クラス内でやんちゃをして目立っていた女の子がギャル化していき、そんな彼女たちの“陽”のポテンシャルが学校では収まりきらず、外(渋谷)にあふれ出て来たというようなイメージです。ギャルのなかにも学校で浮いてしまい、それがきっかけで渋谷に来ていたという子も少なくありませんでした。
けれど、それはどちらかというと学校という“器”が小さすぎて、ギャルの持つアグレッシブなパワーの受け皿として機能できなかったため、はみ出してしまっていたというケースが多かったと思います。要するに、渋谷ギャルは“陽の刹那主義”だったのです」(堺屋氏)
対してトー横キッズは、その真逆とも言える出自や精神性を持っているのだとか。
「取材班のインタビューに答えてくれた少女たちには、親との不仲や親からの虐待など、劣悪な家庭環境があったという共通点が見えてくるでしょう。もちろんトー横キッズの全員が家庭環境に問題があるわけではないでしょうが、各種の報道を見てもその割合は高いのだろうと推察できます。
ですがかつての渋谷ギャルたちは、意外と家庭環境はよく、特に母親と仲がいいという子が非常に多かったのです。なかには親が富裕層で、裕福な家庭で育ったというギャルもちらほらいたぐらいです。家庭環境が悪いギャルもいたでしょうが、どちらかというとただ親が放任主義というパターンが多かったと思います。
次にトー横キッズたちの学校でのポジションですが、あまり友達ができずつまらなかったと語る子が多く、学校でも居場所がなかったことをほのめかす少女が多い印象です。一般的な10代が属するコミュニティに馴染めなかった少女たちが、トー横に流れ着いているのではないでしょうか。
トー横では同じような境遇の子がたくさんいて共感でき、コミュニティにも馴染みやすいため、家でも学校でもなくトー横が一番居心地のいい場所になっていくのでしょう。つまりトー横キッズは“陰の刹那主義”と言えるかもしれません。実際、今回取材に答えてくれた少女からは、『今が辛いのにどうして先のこと考えなくちゃいけないのか』といった発言もあり、厭世観のようなものを色濃く感じました」(堺屋氏)
両者とも“今が楽しければいい!”という精神性は共通している。
だが、渋谷ギャルはあふれるポジティブパワーで、その瞬間瞬間を最大限に楽しもうとする“陽の刹那主義”。対して、トー横キッズはネガティブな辛い現実から逃げ出し、ようやく見つけた居場所で“今”を楽しもうとする“陰の刹那主義”というわけか。
――堺屋氏によると、「かつての渋谷ギャルたちは幸せな人生を歩んでいる人が多い」とのこと。トー横キッズたちの未来も、明るいものになってくれることを切に願うばかりである。
(取材・文=A4studio)

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