議論呼んだ「深夜の飲み屋に子ども連れ」 少なくとも自治体の条例を確かめておく必要がある

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真夜中の繁華街で子どもの姿を見かけると、予想外のことに驚かされ。「親はどこにいるのだろう」と目で追ってしまう。もうすぐ、新型コロナウイルス対策を以前ほど気にしないでよい、久しぶりの夏休みが始まる。休みだからと親と一緒に夜の街へ出かける子どもも増えるのだろうか。条例などで店側に禁じていることが多い真夜中の子ども来店問題について、俳人で著作家の日野百草氏が、店側の対応についてレポートする。
【写真】ファミレス化する居酒屋 * * *「深夜は保護者同伴でも入店させませんが、それでも子どもを連れて来る親はいます」 都心の居酒屋チェーン従業員。歓楽街に近く朝まで営業しているため、深夜に子ども連れの親が来るケースはあると語る。「そんな親がいるのかと思うかもしれませんが、居酒屋に子どもを連れて来る親はコロナ以前からいました。ファミレス感覚なんでしょうね」コロナ禍の自粛とそれに伴う時短でそうした事例はほぼ消えた、はずだった。しかし5月8日に5類感染症に移行し、完全に国民の自主的な判断と行動に委ねられると街に活気は戻り、マスクをする人も都市部を中心に明らかに減った。同時に各商業施設、店舗も多くがコロナ禍前の通常営業に戻った。 しかし、それとともにコロナ禍以前からの問題も再び起き始めている。その中のひとつが子どもを連れた家族による居酒屋の来店、それも深夜だ。この問題はファミレス化を進めてきた居酒屋チェーンにとっての課題ともされた。普通は連れてこないはずが連れてくる。「年じゅう深夜に親子連れで来るわけではありませんが、いないわけではない。何か事情があるのかは知りませんが、夜中に子連れで来られると本当に困るのです。もちろんお断りしますが、『親が同伴ならいいだろ』という親もいます。預かる場所のない、深夜働く女性とかもいる場所というのもあるのでしょうけど、決まりですから断るしかないのです」 店の方針がどうこうでなく、この国では深夜に子どもは外出してはいけないことになっている。ほとんどの自治体では青少年保護育成条例が定められており、例えば東京都の場合は「深夜」を午後11時から翌日の午前4時と定め、特別の事情がない限り、その時間の深夜外出、深夜徘徊は禁じられている。「親が同伴でもだめなんです。でも小さな個人の店は店主の判断で入れてるようで、「あっちは入れた」と言われる場合もあります」 禁じられているが、保護者同伴の場合「保護者は青少年を外出させないように努めなければならない」(東京都)、「深夜外出は控えてください」(神奈川県)と、あくまで努力義務とされている。よく挙げられる「罰金30万円」などの罰則は他人が「保護者の同意なく、又は正当な理由なく、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、とどめる」、もしくは深夜に青少年を入店させた営業店舗側に対する罰則(地域による)である。 少し長いが、東京都の場合はこうだ。「青少年の健全な育成に関する条例」の該当箇所を引く。〈(深夜外出の制限)第十五条の四 保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後十一時から翌日午前四時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければならない。2 何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。3 何人も、深夜に外出している青少年に対しては、その保護及び善導に努めなければならない。ただし、青少年が保護者から深夜外出の承諾を得ていることが明らかである場合は、この限りでない。4 深夜に営業を営む事業者及びその代理人、使用人その他の従業者は、当該時間帯に、当該営業に係る施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すように努めなければならない。〉 神奈川県の場合、これを「特別の事情がある場合のほかは、深夜に青少年を外出させてはいけません」としている。 ちなみに「正当な理由」および「特別の事情」とは「夜学、夜勤、塾」で外出する場合や「保護者が仕事等で帰宅が遅くなった際に青少年を同伴して買い物をしなければならない場合」、「火災、急病」などの緊急事態、指導者や保護者の管理下に行われるスポーツ等の合宿や地域の祭礼、盆踊り、初詣などが挙げられている。後者であっても遊興と飲食が目的の場合は「特別の事情」には該当しないことになっている。 ある著名人が小学生の娘さんを深夜の宴席に同伴させ、深夜0時過ぎまで「連れ回した」と報じられたことが子どもを持つ親を中心に賛否別れたが、東京都の場合はこの条例だけを見れば「努めなければならない」ということになる。ファミレス化した居酒屋でも深夜に子どもを店に入れるわけにいかない「いずれにしろ、他は知りませんがうちはだめです。ネットカフェとかゲームセンター、カラオケなんかはもっとだめなんですけど、昔の感覚なのでしょうか、意外と知らない親御さんもいます」(前出の居酒屋従業員) 20世紀の随分と古い話となるが、昔は親がいれば深夜のゲームセンターに入れた。カラオケもそうとうに古い時代の話で地域にもよるが、朝まで親子でカラオケボックスという時代もあった。もちろん、いまは各地とも厳しく条例で規制、店舗側も自主規制を設けているところが大半だ。 昔の話なら、大手ゲーム会社が経営するゲームセンターは18時で16歳未満は退去を求めるアナウンスと声掛けをしていたが、小規模な地場のゲームセンターは野放しだった(筆者の1990年代、千葉県柏市の場合)。1985年の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風適法)から年齢制限による規制はあったが、現在では逆に2016年以降、緩和されている。しかし条例はその限りではない場合もあり、ちぐはぐな状態の地域もある。大前提となる風営法はもちろんだが、この風適法と条例、そして店舗の決まりとで食い違う場合もあり、注意が必要である。もちろん親の「教育方針」によって違ってしまうことも。 限られた記事内で書き出すのが難しいほど、この「青少年保護育成条例」は都道府県により細かい点で異なる上に、対象となる業種にもよるのだが、16歳未満は保護者同伴で22時まで(地域、店によっては23時まで)は基本的に一緒である。もちろん店独自の基準でそれより早い時間で規制している場合もある。いずれにせよ、親がいようと決まりとしては22時および23時以降、子どもは「深夜営業施設」にいてはならない、ということになる。「先ほどファミレス感覚、と言いましたが居酒屋も以前からファミレスのような家族で食事を楽しめることを売りにしてました。『いざか族』って言葉もありました。その言葉は定着しなかったみたいですけど、居酒屋に子連れというのは珍しくありません」 コロナ禍以前から居酒屋チェーンはファミレス化を進めていた。改正健康増進法以前から店内全面禁煙、もしくは分煙を進め、キッズメニューも充実させた。「昼間に居酒屋は家庭の問題ですから店側がどうこういう筋合いはありません。でも深夜はだめです。それでも23時以降に平気で子どもを連れて来る親がいます。みなさん事情はあるのでしょうが、うちとしては入れるわけにはいかないのです」 断ると怒る親もいるか。「いますよ。親がいいって言ってるだろと、すごまれたこともあります。でも違反ですから」スナックのママ「11時以降の子連れが飲み屋はだめ」 それでも、飲み屋に子連れというのは「家庭の問題」、それが「教育方針」という親もある。しかし昼間であっても「子どもを連れて飲み屋に行くべきではない」という家庭もある。いわゆる「モラル」の問題となるが、これについても都内の私鉄沿線でスナックを経営する女性に話を聞いた。「うちはランチとかやってますからね、子連れのお母さんとか来ます。それは構わないけど、夕方からの通常営業でお子さん連れはお断りしています。他のお客さんがいい顔しませんから。夜7時とか、赤ちゃん連れて来る方もいましたが、申し訳ないですけど帰ってもらいました」 19時なら法的には問題ないが、この場合は店の判断、ということか。「お母さんだってお酒を楽しみたいって気持ちはわかりますけど、赤ちゃん連れはちょっとね。小学生とか連れてくる親もいますけど、狭い飲み屋ですから無理ですね」 しかしそれを許す飲み屋もあるという。「常連なら構わない、深夜でも店のソファーに寝かせたり、ゲームで遊ばせてる横で飲んでる親、なんてのも他の店にはいます。ええ、この商店街の店です。親しいからそれとなく言いますけど、店主も常連さんには強く言えないみたいですね」 その「深夜」が22時、23時であるなら、その「他の店」は違反ではないか。「違反ですよ。でも親がいれば警察は注意くらいでしょうね。まして店内ならわかりません。だってほら、外国人の観光客の方とか、小さなお子さんと深夜に繁華街にいるでしょう。あれだって本当はだめでしょうし」 確かに都心の繁華街、歌舞伎町すら深夜に子ども連れがいて驚くが、たいていは外国人観光客だったりする。先の「正当な理由」および「特別の事情」ということか。単に「おめこぼし」というだけか。「教育方針だとしてもよくないと思います。私だってもっとめちゃくちゃな時代があったことは知ってますし、親が深夜まで店で酒を飲んでる間、店の外で街灯を頼りにチョークで道にお絵かきしてる子とかいましたよ。店内で宿題してるとか、でも昭和の話です」 それが「教育方針」だとしても、やはり条例違反となる可能性はある。そして、親がいれば問題ないと勘違いしている人はいる。 実際、夜の店で働く女性にこの件を聞いてみた。「私はしてませんが」という前提の話。「家に残しておくくらいなら一緒に食事、という感覚で飲み屋に行っちゃうママもいます。シンママ(シングルマザー)でシッターを雇うお金がないとか、託児所に預けられないとか、そういう夜の仕事のママはいますね。だから法律を破ってもいいとは思いませんけど」 育児が大変なのはわかる。事情はそれぞれかもしれないが、そうした行為が賛同を得るのは難しいようにも思う。下手すると条例違反どころか「不適切な養育」として児童福祉法違反に問われる可能性もある。 都下の商店街で古くから焼鳥屋を営む男性は「子どもを連れてくるな」とも。「昼だろうと夜だろうと飲み屋に子どもを連れてくること自体、私は反対だ。うちは絶対入れない。他の客の迷惑になる。家族連れで来ても帰ってもらう。大人の場所は大人の場所、です。それがわからない親も多い。」 これは店の方針、ということになるが、筆者が付け加えるなら、深夜に子連れで飲む行為は店で働く人たちに迷惑をかけることにもつながる。他の客がどう思うか、という問題はもちろん、22時、23時過ぎて小学生と飲み屋にいればそれは店側の責任にもなる。店によっては断りづらい場合もあるだろう。上得意であれば、著名人であればなおさら断りづらい店もあろう。条例は店の責任ともしている。上客、著名人、そうした立場の人だからこその配慮、あってしかるべきと思うのだが。 繰り返すが、深夜の保護者同伴の外出や店舗立ち寄りは先に記した通り、各都道府県の条例によって違う。また風営法、風適法や各店舗の自主判断によっても違う。なかなか読む機会はないかもしれないが、ネット上で各自治体とも条文を公開しているので、自身が住む場所の青少年保護育成条例は一読しておくことをお勧めする。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。
* * *「深夜は保護者同伴でも入店させませんが、それでも子どもを連れて来る親はいます」
都心の居酒屋チェーン従業員。歓楽街に近く朝まで営業しているため、深夜に子ども連れの親が来るケースはあると語る。
「そんな親がいるのかと思うかもしれませんが、居酒屋に子どもを連れて来る親はコロナ以前からいました。ファミレス感覚なんでしょうね」
コロナ禍の自粛とそれに伴う時短でそうした事例はほぼ消えた、はずだった。しかし5月8日に5類感染症に移行し、完全に国民の自主的な判断と行動に委ねられると街に活気は戻り、マスクをする人も都市部を中心に明らかに減った。同時に各商業施設、店舗も多くがコロナ禍前の通常営業に戻った。
しかし、それとともにコロナ禍以前からの問題も再び起き始めている。その中のひとつが子どもを連れた家族による居酒屋の来店、それも深夜だ。この問題はファミレス化を進めてきた居酒屋チェーンにとっての課題ともされた。普通は連れてこないはずが連れてくる。
「年じゅう深夜に親子連れで来るわけではありませんが、いないわけではない。何か事情があるのかは知りませんが、夜中に子連れで来られると本当に困るのです。もちろんお断りしますが、『親が同伴ならいいだろ』という親もいます。預かる場所のない、深夜働く女性とかもいる場所というのもあるのでしょうけど、決まりですから断るしかないのです」
店の方針がどうこうでなく、この国では深夜に子どもは外出してはいけないことになっている。ほとんどの自治体では青少年保護育成条例が定められており、例えば東京都の場合は「深夜」を午後11時から翌日の午前4時と定め、特別の事情がない限り、その時間の深夜外出、深夜徘徊は禁じられている。
「親が同伴でもだめなんです。でも小さな個人の店は店主の判断で入れてるようで、「あっちは入れた」と言われる場合もあります」
禁じられているが、保護者同伴の場合「保護者は青少年を外出させないように努めなければならない」(東京都)、「深夜外出は控えてください」(神奈川県)と、あくまで努力義務とされている。よく挙げられる「罰金30万円」などの罰則は他人が「保護者の同意なく、又は正当な理由なく、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、とどめる」、もしくは深夜に青少年を入店させた営業店舗側に対する罰則(地域による)である。
少し長いが、東京都の場合はこうだ。「青少年の健全な育成に関する条例」の該当箇所を引く。
〈(深夜外出の制限)第十五条の四 保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後十一時から翌日午前四時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければならない。2 何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。3 何人も、深夜に外出している青少年に対しては、その保護及び善導に努めなければならない。ただし、青少年が保護者から深夜外出の承諾を得ていることが明らかである場合は、この限りでない。4 深夜に営業を営む事業者及びその代理人、使用人その他の従業者は、当該時間帯に、当該営業に係る施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すように努めなければならない。〉
神奈川県の場合、これを「特別の事情がある場合のほかは、深夜に青少年を外出させてはいけません」としている。
ちなみに「正当な理由」および「特別の事情」とは「夜学、夜勤、塾」で外出する場合や「保護者が仕事等で帰宅が遅くなった際に青少年を同伴して買い物をしなければならない場合」、「火災、急病」などの緊急事態、指導者や保護者の管理下に行われるスポーツ等の合宿や地域の祭礼、盆踊り、初詣などが挙げられている。後者であっても遊興と飲食が目的の場合は「特別の事情」には該当しないことになっている。
ある著名人が小学生の娘さんを深夜の宴席に同伴させ、深夜0時過ぎまで「連れ回した」と報じられたことが子どもを持つ親を中心に賛否別れたが、東京都の場合はこの条例だけを見れば「努めなければならない」ということになる。
「いずれにしろ、他は知りませんがうちはだめです。ネットカフェとかゲームセンター、カラオケなんかはもっとだめなんですけど、昔の感覚なのでしょうか、意外と知らない親御さんもいます」(前出の居酒屋従業員)
20世紀の随分と古い話となるが、昔は親がいれば深夜のゲームセンターに入れた。カラオケもそうとうに古い時代の話で地域にもよるが、朝まで親子でカラオケボックスという時代もあった。もちろん、いまは各地とも厳しく条例で規制、店舗側も自主規制を設けているところが大半だ。
昔の話なら、大手ゲーム会社が経営するゲームセンターは18時で16歳未満は退去を求めるアナウンスと声掛けをしていたが、小規模な地場のゲームセンターは野放しだった(筆者の1990年代、千葉県柏市の場合)。1985年の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風適法)から年齢制限による規制はあったが、現在では逆に2016年以降、緩和されている。しかし条例はその限りではない場合もあり、ちぐはぐな状態の地域もある。大前提となる風営法はもちろんだが、この風適法と条例、そして店舗の決まりとで食い違う場合もあり、注意が必要である。もちろん親の「教育方針」によって違ってしまうことも。
限られた記事内で書き出すのが難しいほど、この「青少年保護育成条例」は都道府県により細かい点で異なる上に、対象となる業種にもよるのだが、16歳未満は保護者同伴で22時まで(地域、店によっては23時まで)は基本的に一緒である。もちろん店独自の基準でそれより早い時間で規制している場合もある。いずれにせよ、親がいようと決まりとしては22時および23時以降、子どもは「深夜営業施設」にいてはならない、ということになる。
「先ほどファミレス感覚、と言いましたが居酒屋も以前からファミレスのような家族で食事を楽しめることを売りにしてました。『いざか族』って言葉もありました。その言葉は定着しなかったみたいですけど、居酒屋に子連れというのは珍しくありません」
コロナ禍以前から居酒屋チェーンはファミレス化を進めていた。改正健康増進法以前から店内全面禁煙、もしくは分煙を進め、キッズメニューも充実させた。
「昼間に居酒屋は家庭の問題ですから店側がどうこういう筋合いはありません。でも深夜はだめです。それでも23時以降に平気で子どもを連れて来る親がいます。みなさん事情はあるのでしょうが、うちとしては入れるわけにはいかないのです」
断ると怒る親もいるか。
「いますよ。親がいいって言ってるだろと、すごまれたこともあります。でも違反ですから」
それでも、飲み屋に子連れというのは「家庭の問題」、それが「教育方針」という親もある。しかし昼間であっても「子どもを連れて飲み屋に行くべきではない」という家庭もある。いわゆる「モラル」の問題となるが、これについても都内の私鉄沿線でスナックを経営する女性に話を聞いた。
「うちはランチとかやってますからね、子連れのお母さんとか来ます。それは構わないけど、夕方からの通常営業でお子さん連れはお断りしています。他のお客さんがいい顔しませんから。夜7時とか、赤ちゃん連れて来る方もいましたが、申し訳ないですけど帰ってもらいました」
19時なら法的には問題ないが、この場合は店の判断、ということか。
「お母さんだってお酒を楽しみたいって気持ちはわかりますけど、赤ちゃん連れはちょっとね。小学生とか連れてくる親もいますけど、狭い飲み屋ですから無理ですね」
しかしそれを許す飲み屋もあるという。
「常連なら構わない、深夜でも店のソファーに寝かせたり、ゲームで遊ばせてる横で飲んでる親、なんてのも他の店にはいます。ええ、この商店街の店です。親しいからそれとなく言いますけど、店主も常連さんには強く言えないみたいですね」
その「深夜」が22時、23時であるなら、その「他の店」は違反ではないか。
「違反ですよ。でも親がいれば警察は注意くらいでしょうね。まして店内ならわかりません。だってほら、外国人の観光客の方とか、小さなお子さんと深夜に繁華街にいるでしょう。あれだって本当はだめでしょうし」
確かに都心の繁華街、歌舞伎町すら深夜に子ども連れがいて驚くが、たいていは外国人観光客だったりする。先の「正当な理由」および「特別の事情」ということか。単に「おめこぼし」というだけか。
「教育方針だとしてもよくないと思います。私だってもっとめちゃくちゃな時代があったことは知ってますし、親が深夜まで店で酒を飲んでる間、店の外で街灯を頼りにチョークで道にお絵かきしてる子とかいましたよ。店内で宿題してるとか、でも昭和の話です」
それが「教育方針」だとしても、やはり条例違反となる可能性はある。そして、親がいれば問題ないと勘違いしている人はいる。
実際、夜の店で働く女性にこの件を聞いてみた。「私はしてませんが」という前提の話。
「家に残しておくくらいなら一緒に食事、という感覚で飲み屋に行っちゃうママもいます。シンママ(シングルマザー)でシッターを雇うお金がないとか、託児所に預けられないとか、そういう夜の仕事のママはいますね。だから法律を破ってもいいとは思いませんけど」
育児が大変なのはわかる。事情はそれぞれかもしれないが、そうした行為が賛同を得るのは難しいようにも思う。下手すると条例違反どころか「不適切な養育」として児童福祉法違反に問われる可能性もある。
都下の商店街で古くから焼鳥屋を営む男性は「子どもを連れてくるな」とも。
「昼だろうと夜だろうと飲み屋に子どもを連れてくること自体、私は反対だ。うちは絶対入れない。他の客の迷惑になる。家族連れで来ても帰ってもらう。大人の場所は大人の場所、です。それがわからない親も多い。」
これは店の方針、ということになるが、筆者が付け加えるなら、深夜に子連れで飲む行為は店で働く人たちに迷惑をかけることにもつながる。他の客がどう思うか、という問題はもちろん、22時、23時過ぎて小学生と飲み屋にいればそれは店側の責任にもなる。店によっては断りづらい場合もあるだろう。上得意であれば、著名人であればなおさら断りづらい店もあろう。条例は店の責任ともしている。上客、著名人、そうした立場の人だからこその配慮、あってしかるべきと思うのだが。
繰り返すが、深夜の保護者同伴の外出や店舗立ち寄りは先に記した通り、各都道府県の条例によって違う。また風営法、風適法や各店舗の自主判断によっても違う。なかなか読む機会はないかもしれないが、ネット上で各自治体とも条文を公開しているので、自身が住む場所の青少年保護育成条例は一読しておくことをお勧めする。
【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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