「日本の少子化対策」は「ほとんど効果がない」…過去数十年で世界中のデータで明らかになった「衝撃の事実」《必要な税金は毎年3.5兆円》

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「少子化対策」は本当に効果があるのか―? あるとしたらなぜ? ないとしたら、効果のある対策とは?
カネを配る、保育所を増やす、共働き夫婦を支援する―。政府は、そうすれば少子化を克服できると喧伝してきた。だが蓄積されたデータが示すのは、もはや万策尽きたという「不都合な真実」だ。少子化問題に関する「真実」を取材した。
授業参観の日、教室に入りきれない親が廊下から覗きこんでわが子を見守る。子供たちは壁際までぎっしりと並んだ机に座り、元気いっぱい「ハイ!」と手を挙げる―。
いま70代なかばにさしかかった「団塊の世代」が幼いころには、こんな風景を全国の小学校で見ることができた。第一次ベビーブームが最高潮に達した’49年の出生数は、およそ270万人。急ピッチで同じ地域に「第二」「第三」と学校を造り、さらに建て増しして教室を増やさなければ追いつかないほどだった。
いま、日本の新生児の数は当時の3分の1を下回るまで激減している。
6月2日に厚生労働省が発表した最新の統計では、’22年に生まれた赤ちゃんは約77万人。もちろん、戦後最少だ。コロナ禍の影響もあるとはいえ、あまりにも少ない。
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〈2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスです〉
「次元の異なる少子化対策」を目玉政策に掲げる岸田文雄総理は、6月13日の会見でこう語り、児童手当の所得制限をなくす、大学授業料の減免対象を拡大するなど「バラマキ型」の政策を次々に実行すると意気込んだ。
それには年間3兆5000億円もの巨費を要する。しかし、たとえば児童手当は、これまでも「年収1238万円」を下回る世帯は支給の対象になっていた。しかも、そもそも年収1200万円以上の割合は、国民全体の5%にも満たない。「高所得者に児童手当を支給すれば子供が増える」などとは、当の岸田総理さえ思っていないだろう。
「日本人の『少子化問題』に対する考え方は、根本的にズレています。子育て支援が出生率上昇に大きく貢献するかどうかは不明なのに、この20年間、まったく議論の前提が変わっていない」
岸田政権の「少子化対策」をこう評するのは、東京大学教授で社会学者の赤川学氏である。
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たしかに少子化は難問であり、一朝一夕には解決しないだろう。だが、「子育て支援に期待はできない」とは、いったいどういうことか。いささか不穏当ではないか―。そう思うかもしれない。
しかしいま、過去数十年にわたるデータと統計の蓄積が、これまでの定説をことごとく否定し、「少子化対策は、ほとんど効果がない」という結論を指し示しつつある。そして、さらにその先には「少子化はなぜ起きるのか」という長年の大きな謎の答えが、徐々に姿を現し始めているのだ。
岸田政権に限らず、日本政府が掲げてきた少子化対策の代表格が「親に経済的余裕ができれば、子供は増える」との考え方にもとづく政策だ。前述したような児童手当を支給する、あるいは出産・子育て費用の一部を公的に肩代わりするといったものがある。
だが、児童手当の制度が’72年に始まってから半世紀にわたり、日本の出生率はほぼ一貫して下がっており、その効果は皆無だったと言っていい。さらに、日本より手厚い児童手当を用意する諸外国でも、かつては「効果アリ」説が主流だったが、この10年は効き目に翳りが見えている。
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「日本が『少子化対策のお手本』と位置付けるスウェーデンでは、’90年代末に児童手当を含む家族関係社会支出が拡充されてから出生率が上がり始め、’10年には1・98に達しました。しかしそれ以降は右肩下がりで、’20年になると、特に何の手当もないアメリカと同等の1・66まで下がっています」(同前)
2つめの記事『「働く女性が増えれば子供が増える」というのは本当なのか…多くの人が誤解している少子化対策の「定説」』へ続く。
「週刊現代」2023年7月1・8日合併号より

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