新型コロナウイルス対策で検温に使われたサーマルカメラから顔画像が流出している問題で、大阪市内の学童クラブが転売したカメラから3737点の小学生らの顔画像が発見されたことがわかった。
ネットに流出した場合、つきまといなどの二次被害を招きかねず、学童クラブの責任者は「転売したのは軽率だった」と後悔を口にした。
カメラはフリーマーケットアプリ大手「メルカリ」に出品されたもので、札幌市の大学職員原田寛之さん(48)が5月上旬、約1万円で購入した。情報システム部門に勤務しており、顔画像の流出が問題視されていることを知り、調査目的で入手した。
カメラには、ランドセルを背負った子どもらの鮮明な顔画像が残されていた。データから2021年3月~今年3月に撮影されたものとみられ、撮影時刻や体温も記録されていた。原田さんは「悪意のある人が入手し、子どもたちが特定されてしまえば、つきまといなどの被害に遭うリスクがあると感じた」と語る。
カメラを使用していた大阪市内の学童クラブの男性理事によると、顔画像は施設に通っていた小学生やスタッフら約30人分のものだった。カメラは大阪市の新型コロナ対策の補助金を受けて約5万円で買ったもので、建物の入り口に設置していた。本体に汚れが目立ってきたため、別のカメラと交換し、今年4月頃にメルカリに出品したという。
カメラはインターネットで購入した製品で、取扱説明書には検温の際に顔画像を保存すると記載している。ただ消去方法は示されていない。理事は「しっかり説明書を読んでおらず、画像が残るとは思っていなかった。子どもや保護者に申し訳ない」とうなだれた。
カメラは6月下旬、原田さんから理事のもとに返却された。この問題を受けて大阪市は管内の計107の学童クラブに対し、サーマルカメラに顔画像が保存されている可能性があるとして、適切に取り扱うよう注意喚起する。
個人情報保護法では、顔画像は氏名や生年月日と同様に個人情報と位置づけられている。本人の同意を得ずに、顔画像を消去しないまま廃棄・転売すれば、同法に抵触する恐れがある。
◆サーマルカメラ=体の表面温度を測るカメラ。顔を写す機能も持っていることが多く、コロナ禍が収束に向かう中で、顔画像が保存されたまま転売されるケースが問題になっている。調査会社の富士経済によると、2020年の感染症対策用の国内市場は推定275億円に上る。