子供が乗った自転車が歩行者と衝突、“9266万円の賠償事例”も…親が子に伝えたい「民法」

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民法改正により、2022年4月1日から「成年年齢は20歳から18歳に」に変わっている。 主だった変化でいえば、携帯電話の契約や各種ローン、クレジットカードを作るなど、親の同意なしに契約できることになり、大人としての権利と義務が発生する。
SNSに自分の写真をさらされた、通販サイトで年齢を偽って購入してしまったetc. ネット社会の今、未成年者が外の世界に触れる機会は増えている。それだけに、我々親世代が、子供に大人の世界、社会の仕組みを教えることの重要性は高まっているのは言わずもがなだ。実際、子供が乗った自転車が他人を傷つけてしまい、ウン千万円規模の莫大な慰謝料が発生した事例もある。
未成年者が社会の仕組みとルールを知るための道しるべとなる新刊『13歳からの民法』では、司法書士の著者・岡信太郎氏が、友人関係、学校や家、SNSで起こりがちなケースに当てはめて民法を解説している。高額賠償にもなる、子供の自転車事故にしぼって、本書から抜粋した。
◆自転車に乗っていたら車にぶつかり傷をつけてしまった……
塾に遅刻しそうになって大急ぎで自転車で向かっている途中に、停止している車に気づかず自転車をぶつけてしまいました。車に乗っていた人が驚いて出てきて、車体に傷がついているのを見つけました。そして、「元通りにしてください」と要求してきて……。やっぱり、私が傷を直さないといけないのでしょうか?
◆回答「車に乗っている側の人に事故の責任がなければ弁償しなければいけません」
自分の権利が守られているように、ほかの人の権利も守られています。ですから、他人の権利を損なったときは、ちゃんと弁償しないといけません。このケースでは、相手の方に非はなさそうですし、不注意によって車を傷つけてしまったので、弁償の対象になります。
ここで問題なのが、弁償の方法です。その方法としては、ーら修理して元に戻す、損害をお金に換算して支払う、Fいてお金を返すなど、いろいろな方法が考えられます。この点、民法では、「損害賠償」といって、お金で計算して支払うことが原則となっています。なので、このケースでは、車を自ら修理する責任を負うのではなく、損害をお金に換算して支払うことになります。
◆スマホを見ながら自転車に乗り、相手にケガをさせてしまった……
先生から、隣のクラスの生徒が自転車で塾に向かっていたときに、おばあさんにぶつかって大ケガをさせてしまったという報告がありました。おばあさんが歩道のゴミを拾っていたところに自転車で衝突したようです。
問題は、本人がスマートフォンを片手に爐覆ら運転瓩鬚靴討い徳阿鮓ていなかったこと。自分でもやってしまいそうなので気をつけなきゃと思いますが、このような事故を起こしてしまったら、どうなりますか?
◆回答「明らかな『不法行為』です。治療費などを払わなければいけません」
わざとでなくても、自分の不注意で他人にケガをさせてしまった場合は「不法行為」となり、これによって生じた損害に対してお金を支払わなければなりません。ここでいう「不注意」とは、被害が起こると予想でき、それを避けようと思えば避けることができたのに、それをしなかったことをいいます。
今回のケースは、明らかに「不注意」によって生じたことなので、おばあさんのケガの治療費などは支払わなければいけません。ほかに「慰謝料」といって、心の傷に対する支払い責任が発生することもあります。

交通ルールを守っていない危険な運転とみなされる可能性が非常に高く、民法上の責任だけでなく刑法上の責任を問われることもあります。相手の生命をおびやかす重大な事故につながる可能性があることを、忘れてはいけませんね。
◆自転車だからって軽く考えていませんか?
自転車は気軽に乗れるし、自動車と違って免許もいらないから、自転車という乗り物の位置づけを軽く考えてはいないでしょうか?
じつは、交通ルールを定めた「道路交通法」があり、そこで自転車は「軽車両」とされているのです。つまり、自転車は自動車の仲間なのです!
そのため、自転車についても、さまざまなルールが定められています。たとえば、2人乗りをすることは原則として禁止されています。
これに違反すると2万円以下の罰金または科料(罰金も科料も刑罰の一種)とされています。2人乗りをしたことがある人、いるんじゃないですか? それ、法律に違反するのです。
雨が降っているからといって傘を差して運転したり、スマートフォンを見ながら運転することも禁止されています。音楽を聴くためにイヤホンをして運転することも認められていません。
心当たりのある人はいないでしょうか? お年寄りや小さい子どもをはじめ、ほかの人にケガをさせてしまったら取り返しのつかないことになることを忘れてはいけません。
◆自転車の人身事故で9266万円の賠償金額
実際に、こんな事件が起きました。
2008年に、自転車で走行していた高校生が車道を斜めに横断し、会社員の自転車と衝突しました。これにより、会社員に重い後遺障害が出てしまいました。高校生が会社員に支払った賠償金額は9266万円と言われています。
また、2017年には、スマートフォンを操作しながら自転車を運転していた当時20歳の女子大生が、歩道を歩いていた77歳の女性に衝突して死亡させるという事故が発生しました。重過失致死罪(5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)が認定されています。
このように、近年、自転車事故が後を絶たず、2015年に道路交通法が改正され、自転車に乗るときのルールがさらに厳しくなっています。自転車を運転する際には、ルールを守り、周囲への安全に配慮する義務があることを覚えておきましょう。

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